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食物繊維で腸から“げんきだもん!” その① 食物繊維のスゴイパワー!?

最近、“腸活”という言葉をよく聞きますよね。腸活とは、腸内環境をよくするための活動のこと。なんでも、腸をよい状態に保つといろいろな“健康にいい効果”が期待できるのだとか。特に、食べ物にふくまれる食物繊維は腸内環境と深い関わりがあるのだそう…!

そこで今回は、①食物繊維にはどのような健康効果があるのか? ②腸内細菌はどのように私たちの健康に関わっているのか? ③腸内環境をよくするにはどんな食生活を心がければよいのか? について、食物繊維研究の第一人者である大妻女子大学教授の青江誠一郎先生に教えていただきました!

そもそも「食物繊維」とは、どういうものなのですか?

日本では、食べ物に含まれる成分のうち人間が消化・吸収できない成分のことをすべて「食物繊維」とよんでいます。食べ物に含まれる食物繊維の量を測定する時も、食べ物をヒトの消化酵素と似たもので処理して、分解されずに残ったものの量を測定するんですよ。

図1

消化できない成分=食物繊維なんですね…!?
「繊維」という言葉がつくということは、やはり糸のような形をしているんですか?

もちろん糸状のものもありますが、消化されないものはすべて食物繊維なので、中には溶けた状態で存在しているものもあるんですよ。

“消化できない成分”というと、からだにとって必要なさそうなものに思えるのですが…、食物繊維はどのようにからだに役立つのですか?

実は、消化吸収されないからこそのメリットがあるんです。

1つ目は、胃の中で消化されずに水を吸って膨らんだりねばねばしたりするので、腹持ちがよくなります。つまり、食べ過ぎをおさえる働きがあるということです。よく「野菜から先に食べましょう」と言われますが、その1つの理由がそれですね。

2つ目に、胃を通過した食物繊維は、小腸へ行きます。しかし小腸でも消化されず、逆に糖質や脂質など消化されるものの吸収を邪魔するんです。つまり、血糖値を上がりにくくしたり、脂肪の吸収を穏やかにしたり、太りにくくしたりという効果が期待できるんです。

3つ目。小腸を通過した食物繊維は、次に大腸に行きます。大腸には腸内細菌がたくさんいるのですが、消化されずに残ったものは、ヒトにとってよい働きをする腸内細菌の格好のエサになるんですね。それらの腸内細菌は酸を出して、悪い働きをする菌が増えるのを抑えてくれます。

つまり、消化・吸収されないからこそ、すべての臓器で働いてくれる……食物繊維にはそのようなメリットがあるということです。

図2

ところで、食物繊維をたくさんとると便通がよくなると聞きますが、食物繊維はなぜ便秘に効くんですか?

食物繊維には水にとけてねばねばするタイプのもの(水溶性食物繊維)と、水に溶けずに水を吸ってふくらむタイプのもの(不溶性食物繊維)があります。水溶性食物繊維は腸内細菌がエサとして利用するため、よい菌が増えることによって酸が産生され、腸を刺激して便通がよくなります。また、不溶性食物繊維は水を吸ってふくらみ、かさが増します。それが刺激となって腸が活発に動くので、便通がよくなるんです。
この2つの理由から便通が改善するというわけですね。

胃・小腸・大腸と3段階で働き、便通改善にWの効果……、食物繊維ってスゴイんですね!具体的に「何かの病気を予防する」とか、そういう効果は分かっているのですか?

先ほどもお話ししましたが、食物繊維は糖の吸収をじゃますることで急激な血糖値の上昇を防いでくれるので、血糖値を正常に保つのに役立ちます。また、脂質の吸収も抑えられるので、肥満の防止にもつながります。
さらに、脂質の吸収に必要な消化酵素を助ける働きをする「胆汁酸」という成分があります。胆汁酸というのはコレステロールから作られるのですが、食物繊維にはこの胆汁酸を外に出す働きもあるので、コレステロールを減らすことにもつながるんです。
つまり、大きな作用としては、肥満や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病の予防や改善にも効果があるということですね。

監修

大妻女子大学 家政学部 教授/日本食物繊維学会 理事長
青江 誠一郎(あおえ せいいちろう) 先生

腸内細菌叢の改善を介した生活習慣病予防などについて研究。
日本栄養・食糧学会 評議員、日本栄養改善学会 評議員 など。
2007年 日本栄養改善学会学会賞受賞
2008年 日本酪農科学会学会賞受賞
2010年 日本食物繊維学会学会賞受賞
2022年 日本栄養・食糧学会学会賞受賞