特別企画

よりよく“いきる、たべる、くらす”ために大切な口の中のお話 その②青年期の歯のお悩みについて

食べること、そして話すこと。生きていく上で必要なことであり、また精神的に豊かに暮らしていくためにも大切なことです。今回は、食べる・話すという機能を支えている“お口”の健康のお話しです。

歯の全くない状態から乳歯が生え、永久歯へと生え変わる乳幼児期、受験・就職など生活が不規則になりがちな青年期、お口の悩みも増え始める壮年期、そしてお口の機能が低下してくる高齢期。それぞれのライフステージにおけるお口のケアのポイントについて、大阪大学教授の天野敦雄先生に教えていただきました!

天野 敦雄(あまの あつお) 先生

それでは、次に青年期(10代後半~20代)の口腔ケアについてお尋ねします。

早速ですが、 “親知らず”は、いつから生えてきますか?

18歳・・・高校卒業するくらいやね。昔は、そのくらいの年齢になると親が亡くなっていることが多かったんですよ。だから、“親知らず”と言うのです。

なるほど~。
“親知らず”は、抜く人が多いと思うのですが、抜かなくても問題ないですか?

綺麗に生えている“親知らず”は、置いておく方が良いです。なぜかと言うと、「スペアタイヤ」みたいなものだからです。

今の技術では、ダメになった歯のところに、”親知らず”を抜いて植えることができます。

ただ、ちゃんと真っすぐ生えている人は少ないです。半分埋まっていたり、斜めに生えていたりする人が多く、そうするとそこに汚れが溜まりやすいので、むし歯になります。その場合は、とっとと抜いておいた方が良いです。

ちなみに、私の場合、ちょっとしみるかな~と感じていた斜めの”親知らず”をほったらかしにしていたら、”親知らず”もろともその隣りの歯もむし歯が酷くなり、2本抜く羽目になりました(泣)

先生も、身をもって体験しているのですね。
また、10代20代は、人間関係のストレス、受験などで不規則な生活になりがちですが、気をつけた方が良いことはありますか?

まず、この年代は親の監視がなくなるので、規則正しい口腔ケアが失われる時期です。
基本的に、歯磨きが好きな子はいません(笑)ちゃんと歯を磨かなあかんなと思っても、
眠いし、まぁええやん♪と思ったり、食習慣が乱れて、夜食を食べてそのまま寝たり と小さいときにやっていた規則正しい習慣が失われます。

また、ストレスによる“歯ぎしり”や“食いしばり”により歯に余分な負担がかかると歯並びも悪くなります。歯の負担を減らすには、マウスピースを使うと良いですよ!

中高生くらいから、ひとりで歯医者に通院する機会が増えると思うのですが、かかりつけ医をつくるのは大事ですか?

中高生はシャイで無口な子が多く、ひとりで行くのが恥ずかしいものです。望ましいのは、小学生の頃から、親を介してかかりつけの歯医者をつくっておくと良いですね。
医者と患者さんはお互いの信頼関係はもちろん、気やすく話せて心の距離が縮まる、 これが一番大事です!

家族ぐるみでかかりつけ医を見つけるのが大事なのですね。
また、「えづき症で、歯医者に行くのが苦手」という方もいるようですが・・・・

なぜえづくかというと、緊張しているからです。えづき症は、緊張しやすい真面目な子 に多いです。この前なったからどうしようと、えづく方へ自分を追い詰めてしまうのです。今日はここまでと徐々に治療してもらい、回数でカバーすると良いですよ。「大丈夫やった!出来た!」と思えば、回数も減っていきますよ。

それから、歯医者さんに「口を開けっ放しにしておいてね~」と言われると、唾を飲み込むゴックンのタイミングが分からなくて・・・・

唾は、「ゴックン」しても良いんですよ。
好きなだけ飲み込んでください(笑)

口内炎や口の中を噛んだ時は、歯医者で診てもらった方が良いですか?

口内炎や口の中を噛むことはよくあります。口内炎は、放っておいても自然に治ります。ただ、よく出来る場合は理由があって、免疫力が落ちているからです。栄養が取れていない、睡眠不足、ストレス、口の中が汚いと免疫力が落ち、口内炎ができます。

また、ほっぺたを噛むのは、太って分厚くなってきたか、老化により筋肉が弱り、たる んできたからです。よく患者さんに「先生に口の中掃除してもらってから、ほっぺた噛むようになったんやけど」と言う人がいるのですが、それは、残念やけど、ほっぺたがたるんできたからです。私のせいではないですよ(笑)

天野 敦雄(あまの あつお) 先生

監修

大阪大学大学院歯学研究科 予防歯科学講座 教授
天野 敦雄(あまの あつお) 先生

1984年 大阪大学歯学部 卒業
1987年 大阪大学歯学部予防歯科学講座 助手
1990年 歯学博士(大阪大学)
1992年 ニューヨーク州立大学歯学部 ポスドク
1997年 大阪大学歯学部 障害者歯科治療部 講師
2000年 大阪大学大学院歯学研究科 先端機器情報学 教授
2011年 大阪大学大学院歯学研究科 予防歯科学 教授
2015年 大阪大学大学院歯学研究科 研究科長・学部長
2021年 日本口腔衛生学会理事長