スポーツ栄養学
「運動時の上手なウォーターローディング」
今月の話題:“意識”することを続けると“無意識”にできる!
東京地方では4月に夏日が9日という観測史上最多を記録したとか、寒かった冬からは想像がつかないほどの気温です。町の緑も色鮮やかで気持ちの良い季節ですが、そんな時こそ“熱中症”への配慮が必要になってきます。
正しく知っていれば防げるはずの熱中症ですが、残念なことに毎年悲しいニュースが伝えられます。とはいえここ数年は朝のニュースで、「今日は夏日の予想です。のどが渇く前のこまめな水分補給を心掛けて下さい!」と『熱中症予防への最も大事で、基本的な対策』の声かけがされているのは嬉しいところです。そこで、今年は『こまめな水分補給』+『ウォーターローディング』を目標にしてみましょう。
”ウォーターローディング”とは・・・“水分を体の中にため込んでおくこと”です。
ただ、飲んだ水分は胃を通過して小腸・大腸で吸収されるため、一度に大量の水を摂ることは、胃に大量の水がたまることになり、逆に吸収に時間がかかってしまいます。有効な『ウォーターローディング』のためには、水分はこまめに、少しずつ摂る事が大事になります。
そのほかに無視できないものが、『食事からも水分補給は出来る!』です。
もともと食品は多くの水分(野菜類や果物は85~90%前後、肉や魚類は65%前後)を含んでいます。
普通の朝食(ごはん・みそ汁・おかず・野菜・乳製品など)1食でも約500ml(ペットボトル1本分)の水分が摂れます。
しかも食事からの水分摂取は、液体で摂取するより胃への負担(胃の中のチャポチャポ感)が軽減されます。
起床時、体の中は水分不足の状態で、さらに朝食欠食し一日の行動を開始すれば、体の中の水分がマイナスの状態でスタートすることになるので、熱中症のリスクはさらに増すことになります。
”朝食”をしっかり食べることで、エネルギーがチャージされるだけでなく、実は水分もチャージされるのです。
結論
体の中の水分が不足の状態で一日をスタートすると、これからの暑い時季、熱中症の危険度は高くなります。
せめて、就寝中に失った体内の水分を戻してから一日が始められるようにしましょう。
朝食の大事さは『早寝・早起き・朝ごはん』のコーナーでもお伝えしていますが、『朝食で水分補給も出来る!』という新しい朝食の力にも改めて注目したいですね。
“意識”することを続けると“無意識”にできる!
先日、昨シーズンを持って引退されたFC東京の石川直宏元選手(現FC東京クラブコミュニケーター)とお話した際に『育成年代の選手にとって“食育“で大事なことは、食事のとり方を意識することではないか』とおっしゃられていました。楽しい食事の時間に意識しながら摂ることは、最初はちょっと面倒かもしれませんが、食事を摂ることも練習と考えましょう。
食事回数は、1日に3回、1年365日で考えると年間1,095回も食事の回数があります。つまり、それは意識して食べることを少しの期間続けていれば、『無意識でもふさわしいものを選んで、食事する力』を十分習慣化することができる数ではないかと思います。そして、食事に関する環境が整っている育成年代にこそ、『意識して食事を摂ること』を練習して、“無意識”のうちに『目的に合わせた食事を摂ること』が出来る術を身につけるチャンスと言えます。それが身につけば、“初めて自分の意志で選ぶ食事”になる可能性の高いコンビニエンスストアでのお弁当選びや練習帰りに立ち寄るかもしれないファストフード店でのふさわしい補食選びにもつながるかもしれません。
栄養学担当者プロフィール
久保田 尚子 先生
順天堂大学等の非常勤講師などを歴任しつつ、スポーツ栄養を中心とした栄養関連業務に従事。
<主な栄養サポート歴>JリーグFC東京((トップから育成年代)栄養アドバイザー、女子ソフトボール日本代表(2004年アテネオリンピック支援帯同)など
<主な雑誌連載>月刊誌『サッカークリニック』《勝つための栄養セミナー》等多数
食育セミナー実施中!
ダノン健康栄養財団では、子どもから大人まで、幅広い年齢層に正しい食生活、生活習慣の知識を身につけてもらえるよう、小・中学校などの教育現場で「食育出前授業」やスポーツチーム向けの「スポーツ栄養学講座」を行っています。
講座のお問い合わせ、お申し込み受付はこちらの「ダノン健康栄養財団」ホームページよりご確認ください。