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レジスタントスターチについての詳しい解説
ごはんやパン、めん類に多く含まれている「でんぷん」。
今まで、でんぷんは小腸で完全に消化され、エネルギーになると考えられていました。しかし、近年の研究で、でんぷんの一部は消化されずに大腸に運ばれることがわかってきました。この“消化されないでんぷん”のことを「レジスタントスターチ」といいます。
レジスタント=(消化酵素に対して)抵抗する
スターチ=でんぷん
という意味をもっていることから、「難消化性でんぷん」とも呼ばれます。
現在は「健康なヒトの小腸内で消化吸収されない澱粉および澱粉分解物の総称」と定義されています。
レジスタントスターチにはどんな働きがあるの?
小腸では消化されずに、大腸へと運ばれるレジスタントスターチ。
一体どのような働きがあるのでしょう。
レジスタントスターチにもいくつか種類はありますが、今回取り上げる働きは以下の3つ。
1)腸内環境を整える
腸には私たちの健康にとって有用な菌と有害な菌が存在します。有用な菌が元気に働いている(=腸内環境が良い)時は、便の状態も良くなります。逆に、有害な菌が有用な菌よりも元気に働くと、便やおならが臭い、ガスがたまりやすい、便秘になるなど、私たちの健康にとってマイナスな状態になります。
レジスタントスターチは大腸で有用な菌のエサとなります。そのため、有用な菌が元気に働ける環境づくりに役立ち、腸内環境を整えることにつながるといわれています。
「有用な菌のエサになる」という点においては食物繊維と同様の働きですが、レジスタントスターチには腸内細菌によって発酵されやすいという性質があり、「発酵性食物繊維」とも呼ばれています。「発酵」というのは腸内細菌が食物繊維を分解して、短鎖脂肪酸など私たちの健康にとって良い働きをするものを作り出す過程のことです。
2)血糖値の急上昇を抑える
血糖値は、食事によって体に入ってきたでんぷんなどの糖質が消化され、グルコース(ぶどう糖)となり吸収されることで上がります。しかし、レジスタントスターチには消化されないという特徴があるため、食後の血糖値の上昇も緩やかになると考えられています。
3)脂質の代謝改善
レジスタントスターチは、血液中のコレステロールや中性脂肪の低下にも役立つとの報告があります。
レジスタントスターチは何に含まれる?
こんなにも魅力的な働きを持つレジスタントスターチ。
すぐにでもとり入れたい!と思われている方も多いのではないでしょうか。
レジスタントスターチは普段からよく口にするものにも多く含まれているため、特別な食品を買う必要はありません。
レジスタントスターチが含まれる
代表的な食品
- 穀類
- 全粒穀物、精製度の低い穀物、パスタなど
- 豆類
- グリンピース、そら豆、小豆など
- いも類
- さつまいも、じゃがいも、長いも
- 加工品
- コーンフレークなど
いも類やごはんはホカホカの温かいものを食べるイメージが強いですが、実は調理後に一度冷やすことでレジスタントスターチが増えるということがわかっています(冷やさないと摂れない、というわけではありません)。また、長いもはすり下ろしてしまうとレジスタントスターチの量が減ってしまうこともわかっています。
レジスタントスターチは日ごろから良く食卓にも出てくる食材に含まれていることを知ると、毎日の食事もより楽しくなりますね。
次回は普段の生活で効率よくレジスタントスターチを取り入れるためにちょっとしたコツを交えたレシピをご紹介します。
- 参考
- 「レジスタントスターチの栄養・生理機能」(日本調理科学会誌Vol.47,No.1,49~52(2014))
- でんぷん?食物繊維?大注目の「レジスタントスターチ」とは(日清製粉グループ)
- 食物繊維のパラダイムシフト“発酵性”食物繊維で、日本人の腸をもっと健康に(発酵性食物繊維コンソーシアム)
- 「長いもの調理形態と加熱処理温度によるレジスタントスターチ量の変化」
- 「さつまいもの加熱調理方法の違いによるレジスタントスターチ量と不溶性食物繊維量について」
担当者プロフィール
管理栄養士 磯村 優貴恵(いそむら ゆきえ)
管理栄養士としてダイエット専門のサロンにて食事指導を行う。その際に具体的なメニュー提案や調理方法の伝承の必要性を感じ、3年間の料理経験を積む。その後特定保健指導を経て独立。
「栄養士をもっと身近に!」をモットーとして、子供から大人まで一緒に食べられるおいしいレシピの提供や食事の大切さを紙面やWEBにて発信中。