スポーツ食育インタビュー

今回はBMXフラットランド競技でご活躍中のYUYA選手にお話をうかがいました。子どものときの食生活や夢、BMXを始めたきっかけなどについて教えていただきました。

「有名人になって、見返してやろう!」が頑張る原動力

「子どもの時は、どんなお子さんでしたか。」

「難病などもあり病気がちで入退院を繰り返していた為遊びたくても遊べず、病室で毎日ひたすら絵ばかり描いていて、絵画コンクールで金賞をいただく事も多いほどでした。普通の子ども達はカラフルな絵で描いているところ、黒一色で濃淡をつけて子どもらしくない絵を描いていて独創性が評価されたようです。幼稚園から小6まで6年間サッカーを習っていて、あとスケボーも少し。X(エックス)スポーツ※はその頃からすごく好きで、小6でBMXに出会いましたが、身体が弱く病院通いばかりでBMXを本格的にやり始めたのは中学3年生からです。」
※Xスポーツ(extreme sportsの略)…速さや高さ、危険さや華麗さなどの『過激な (extreme)』要素を持った、離れ業を売りとするスポーツの総称。アクションスポーツ (action sports) とも呼ばれ、主にBMX、スノーボード、マウンテンバイク、フリースタイルモトクロス、ボルダリング、スカイダイビング、サーフィン、ウェイクボード等の競技のこと。

「その頃の夢は何でしたか。」

「小学生の頃から有名人になりたいって思っていましたね。中学生の頃に、イジメという程ではなかったのですが、クラスメイトに相手にされない時期などもあり、いつか見返してやろうといった気持ちが結構ありました。負けず嫌いでしたね。」

「トップアスリートの方はそういうタイプの方が多いですね。その負けん気が並外れた能力を発揮することにつながるのでしょうか。」

「結局は自分がライバルなんですよね。」

「一番は自分との戦いですね。」

「子どもの頃は少し病気がちであったと聞きましたが、運動はできたのですか。」

「1週間のうち6日間は必ず通院する感じでしたが、通院後には外に遊びに行ったりしていました。
体育の時間がめちゃくちゃ大好き、一番好きでした。でも小6の時に身長150cmで体重が80kgあり、その頃はマラソンは最下位、50m走のタイムも遅かったりで体力テストはあまり得意ではなく、どちらかというと跳び箱やサッカーなどの運動が好きでした。」

「それだけ大きな体格だったのですね。よく食べられたのですか?」

「たくさん食べてました。その頃は、正直に言うと脂っこいものばっかり食べたり、下校後帰宅してお菓子をいっぱい食べたり…おやつとか間食を食べすぎというくらい食べてました。」

「『寝る子は育つ』と言いますが、寝るのはお好きでしたか。」

「寝るの好きですね。僕は昔から、普通の人よりかなり寝る方だとと思います。今でも多い日で10時間ぐらい。寝すぎた日は、逆に1日中眠たかったりするので、ちょっとしか寝ない日のほうが体は元気ですね。」

お肉が好きな子ども時代。大人になって食の好みが正反対に変化した

「朝ごはんは主に何を食べていましたか。」

「小学生の頃は朝はあまり食べられなくて、食パンとかお茶漬けとか小食で、昼と夜をいっぱい食べる派でした。
運動した後はすごくお腹が空くのですが、動いてる時はまったくお腹空かないので食欲がまったく起きないんです。それは今もなんですけど。」

「運動中は一般的に交感神経が働いている状況で空腹感を感じにくい状況ですが、運動後は逆に副交感神経が働き腸の活動も活発になるため、急に空腹感を感じると言われています。つまり、YUYA選手が感じる感覚はその通りと言うことですね。」

「好きな食べ物は何でしたか?」

「お肉が本当に大好きでした。お肉、揚げ物。子どもの頃はお魚や野菜は苦手でした。野菜は大体苦手でしたが、かき揚げとか揚げ物にすると好きでした。今は、真逆の好みになりましたが。」

「いつから好みが変わられたのですか。」

「徐々に食べれるようになったんですけど、一気に変わったのは去年です。去年(2018年)に事故で入院したのですが、それを機に、本当にびっくりするくらい、嫌いなものが全部好きになりました。入院する前までは遠征が多く、ひどい日は朝昼晩ファストフードでハンバーガーばっかりの時もありました。しかし、入院先のレストランで色々食べるうちに、今まで食べず嫌いだった、あまり食べる機会がなかったものをとりあえず食べてみようと思ったんです。それがきっかけで、苦手だった食べものをおいしく感じて、魚も全部好きになり、野菜も今は色々食べられるようになり、ほうれん草も大嫌いだったのが好きになりました。」

「味覚が変わることもあると思いますが、食べず嫌いだったものが入院先で食べなきゃいけないような環境になったこともあるのかもしれないですね。」

お酢を飲むようになって寝覚めが良くなった!

「食べられなかった野菜を食べるようになって、何か自覚的に体調がいいとかありますか?」

「とても変わりました。病院では、毎朝リンゴ酢を飲んでいました。それが原因かどうかわかりませんが、以前は寝起きが悪かったのに、朝の目覚めが良かったり、運動した後の疲れが前とは違うと感じています。体のだるさとか、そういうのが変わりましたね。」

「数あるお酢の中で、リンゴ酢を選んだ理由やきっかけはありますか?」

「飲んでみたらめちゃくちゃおいしくて。何かのために飲むというより、ただ好きで今飲んでますね。入院がきっかけで今も毎日リンゴ酢を飲んでいて、今では一切ジュースを飲まないようになり、基本は水かお茶かお酢しか飲んでいません。」

「お肉が中心だった生活から、入院がきっかけで魚も野菜も食べるようになったと言うことは栄養のバランスが良くなったと言えます。またリンゴ酢を飲むことで、ビタミンやミネラルのほか、クエン酸とも摂取なさるようになったことで、当然代謝などにも変化が出てきたと思います。」

「あと肌荒れもしなくなり、とても変わりました。食生活が変わってから、結構良いように変わりましたね。」

「これを食べたからケガしないとか、ケガの回復が早くなるというのはなくても、コンディションと食事はとても関係があると思います。」

BMX競技に必要なのは、脳のエネルギーを増やす「主食」

「BMXの競技に適した身体づくりのために、食べたら良いものはありますか。」

「何の競技でも言えることですが、基本はバランスのとれた食事、その中で、たとえば柔道で体重を調整しなきゃいけないとか、目的によってちょっとずつ調整する形です。BMXで必要なのは、どういう身体能力ですか?」

「筋力も要りますが、それよりも持久力や体力ですね。BMXの競技大会は、演技時間が3分間なんです。3分間の中で一つの技をどれだけ長く続けて、なおかつすごい技をいっぱい出せるかなので、その間いかに長く耐えられるか。力というよりも、持久性ですね。肺活量もとても大事です。足から指先まで全身を使い、ほとんど息を止めて演技しています。」

「見かけの筋肉を大きくするということではなく、エネルギーの素は筋肉にためるわけですから、そういう意味での体作りっていうのが必要になってくると思いますし、あとバランス感覚とか敏捷性、集中力も必要なのかな、というイメージですね。」

「それはすごい必要です。バランス感覚が基本なので。」

「そうなると筋肉を大きくするだけでなく、その時に脳のエネルギーがなきゃいけない。そういう意味では、主食のご飯やパスタなど、体や脳を働かせるエネルギーの素になるものを特に試合の前などはしっかり食べることが大事だと思います。」

「ご飯は大好きです。炊飯器の半分くらい食べるほど。」

「脳のエネルギーになるご飯やパン、パスタなどの主食が足りないと、一瞬集中力がなくなって頭が真っ白になっちゃうような事ってありませんか。BMXのような競技では一瞬集中力が切れてしまう時にケガが起こりやすいので、そう考えると主食の大事さが分かっていただけるかと思います。ご飯が大好きだという事は、そのためにもすごく良い事だと思います。」

「僕は体質的にリバウンドしやすくて、気を抜くと一瞬で太っちゃうんで、今はご飯を控えめに食べているんです。太ってきたかもと思ったらご飯を抜いたりしていますが、集中力にご飯が関わるのであれば、それはあまり良くないんですね。」

「アスリートがシーズン中にご飯を控えることは、良くないと思います。子どもの頃が150cmで80kgだったと言われましたが、その時の食事の様子を聞いていると、脂肪細胞※の数が増えたように思うんですよね。今は脂質を抑えた食生活をされているから体型を保たれているようですが、気を抜くと太るというのは元々ある脂肪細胞が大きくなったということかもしれませんね。主食の摂り過ぎが体脂肪につながると言いますが、運動時は体を動かすことに匹敵するくらいのエネルギーを摂ってないとケガにつながりやすくなります。体重を抑えたいときにはおかずの食材や調理法、種類を少し変えて油を控えめにして、練習やトレーニング、大会の前にはエネルギー源はしっかり摂っておくようにしましょう。」
※脂肪細胞…細胞質に脂肪滴をもつ細胞で、白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞の種類があります。白色脂肪細胞の方が圧倒的に多く、白色脂肪細胞自体には大きな脂肪滴がひとつあって、脂肪をたくわえる役割をしています。つまり、白色脂肪細胞は肥満に伴って大型化し、脂肪細胞の機能不全や善玉のアディポネクチンの分泌低下など、生活習慣病の発症につながると言われています。

「ご飯を食べなければ太らないと思いがちですが、ご飯も大事なんですね。」

「体を動かしたり、脳を働かせるうえでは、とても大事です。ただ、動かない時期にご飯を食べ過ぎると、エネルギーが使われず、肥満につながる可能性もありますが。」

「意外ですね。おかずをちゃんと食べていたら大丈夫なのかなと思っていたので。」

「体づくりを考えているアスリートほど、そう思いますよね。ご飯よりもお肉を中心にしたおかずをと思いがちなんですけど、体を動かしたり頭を働かすエネルギーになるご飯やお餅などは筋肉になるたんぱく質源のおかずと同じくらい大事です。」

「そうなんですね、ありがとうございます。」

中3から本格的に練習を開始し、ひと夏で20kgやせた!

「 BMXとの出会いの前に、自転車に乗れるようになったのは早かったですか?」

「多分5歳くらい、幼稚園の時には乗ってましたね。乗り物が好きなので、最初乗れたときはすごく楽しかったです。」

「 BMXをはじめたきっかけはなんでしたか。」

「小6のときに、普通の小学生が乗るような自転車で階段をバーッと降りたり、ジャンプしたりしていたら、母に『ちゃんとした競技をやったら』と言われたのがきっかけでした。」

「その当時は、すでにほかの人よりも上手だな、という感覚はありましたか。」

「ありました。他の人が出来なさそうなことをやるのが好きなので、『絶対そんなの無理だろう』って言われるようなことをやれたらすごいなっていう気持ちで、色々やっていました。」

「中学では、BMXの他に部活に入っていましたか。」

「中学ではテニス部に入っていて、BMXを本格的に始めたのが中学3年生なんです。なので中学3年生までは、体重が80kgありました。中3のときにBMXをにドはまりして夢中になっていたら、夏休みだけで20kgやせました。毎日すごく楽しくて、朝から夜まで毎日乗ってるような感じで、気づいたら時間が経っていて。」

「相当エネルギーを使う、強度の高いスポーツなんですね。」

「自転車競技は、他の競技と比べても高い強度です。」

「その頃はまだ上手くなかったので、どんな技をやっても転んだり飛んで行ってたりしていて、それですごく体力を消耗していました。今は技も簡単に出来るようになったので、上手くなった方がそこまで体力を使わずに済んでいます。」

「80kgの時から、いきなり乗れたんですか?」

「漕ぐのは出来ていました。重さを利用した技では、体重のおかげでスピンが早くなったり。重たい方が遠心力はつくのですが、すぐ疲れてしまいました。勝手にやせていって、技が出来るようになっていきました。もし体重がそのままだったら、今のような技は出来なかったですね。」

「ご自身的に20kgやせたくらいの今が、一番バランスが取りやすいベスト体重ということですか。」

「ベストですね。身長174‐5cmで60kgでキープしてます。ちょっと軽いのかもしれませんが、入院する前は70kgくらいでしたが、入院して寝たきりだったので一気に10kgくらいやせて脂肪も結構落ちて、今は体重59~60で体脂肪率も5~8%をキープしてます。練習以外に夜はジムにも行き、基礎的な運動はしています。」

取材日:2019年9月3日

選手&チームのご紹介

BMX Performer YUYA 志賀勇也 選手

1998年2月27日生まれ。大阪府出身/在住。エクストリームスポーツ『BMXフリースタイル』種目フラットランドのBMXライダー。競技用小型自転車BMXプロパフォーマーとしても活躍。15歳から本格的にBMXフラットランドに取り組む。現役のBMXライダーとして大会に出場しながらプロパフォーマーの道へと進む。

プロバスケットボール『B.LEAGUE』でのハーフタイムショー、幕張メッセで開催の人気スマホゲームイベントや海外の有名フェスティバルからも公式に招聘されグローバルに活躍中。

BMXを多くの人に知ってもらうため、様々な場所で幅広くパフォーマンス活動を行い、競技者としても世界大会に出場し続けている数少ないパフォーマー。​子ども達にBMXを指導し、育成にも力を注いでいる。