スポーツ食育インタビュー

選手だけでなく、BMXプロパフォーマーとしてもご活躍中のYUYA選手に、BMX競技の魅力や、試合前日の食生活についてお話をうかがいました。

BMXでは、オリジナルの技で競技者の性格がわかる!

「BMXの面白さ、BMXに夢中になった理由を教えてください。」

「BMXって、無限大に技があるんです。たとえばフィギュアスケートはある程度技が定まってきていて、点数も決まっているけれど、BMXは、僕オリジナルの名前がついた技などもたくさんある。そんな風に、技がまだ定まらない、未知の領域が多いところが面白いと思います。」

「3分間の中で、どういう技をいくつ入れなければならない等、ルールはあるのですか。」

「ないです。オリジナリティと難易度で評価される競技で、自分が考え出した誰も出来ないような技をやった方が点数は高く、BMXの競技者は技でその人の性格がわかるとよく言われるほどです。」

「競技中はBMXに乗っていないといけないのですか?降りたら失格ですか。」

「失格にはなりません。技に入らなければ足をついても良いのですが、技の途中で少しでも足がついたら減点されます。足をつかずにその技が最初から最後まで出来たら、技の得点が入ります。」

「技を決めるごとに、その都度足をつくのは良いのですね。」

「技を行う前後に足をつくのは大丈夫ですが、技の中で何回足がついたかで減点になるルールがあります。3分間の中でいくつの技が出来るか、技の難易度を競い合います。」

「選手になるには、何か資格が必要ですか。」

「特にないです。競技者というよりも好きでやってた感じで、大会で優勝したいなっていう気持ちだけでした。今は世界一になりたいとか、お仕事としてやっていますが、やり始めたころは全くそういう考えはなかったですね。」

「上手い人を超えたい」思いで世界一を目指す

「いつからBMXでプロになりたいという気持ちが芽生えたのですか。」

「プロになりたいというよりも、上手い人がいっぱいいたので、あの人を超えたいっていう気持ちがありました。そこから色々やってると大会でもちょっとずつ優勝するようになった。そこから、『このまま世界一になりたい』と思い、世界チャンピオンを目指しはじめました。その頃はスクールも全くなかったので、Youtubeを見ながら独学で習得しました。」

「BMXの技を行うコツなどは、どうやって訓練したのですか。」

「やってる人のところに行って聞いたり、やり方を教えてもらったり、やってる人たちの中に入り込んで一緒に練習していました。」

「インターネットでそういう情報を調べないと、まだ誰も誰も教えてくれない世界ですよね。」

「BMXのショップで、競技をやっている場所を聞いて行ったりすることもありました。BMXを置いてるお店はいっぱいあるのですが、専門店は大阪だと現在2店舗しかない状況ですね。」

「まだまだ少ないですね。BMX自体も高額ですよね。」

「普通の自転車よりは高いです。僕が乗ってる自転車は30万円くらいですが、完成車っていうもともと自転車が出来上がってる状態で5万円くらい。そのレベルでも、結構色々な技はできます。」

「自分でカスタマイズや修理もされるのですか?」

「自分で自転車のスポークも1本1本組んで、全部やります。お店でもやってもらえますが、ちょっとしたセッティングとかは自分でやった方が調節できるので。これまで10台以上は組んでいます。
学校の授業でも美術や工作が好きでした。プラモデルを作ったり、バラバラなものを組み立てるのが好きです。自転車も形がないところから形にする作業が、すごく楽しいですよ。」

高校卒業後、プロのパフォーマーの道へ。BMXと出会って人生が変わった

「現在はフリーですが、決まった時間に練習しているのですか? 」

「練習時間は特に決めていませんが、大体1日5時間ぐらいは練習してます。自分のやろうと思っている技を何回ちゃんと決めたら終わり、など自分でルールを決め、それが達成出来たら今日は終わり、みたいに。でも新しい技の練習の場合は、朝からやっていて、ふと気づいたら夜になっている事もあります。」

「周囲にプレイする人もいない中、自力で全部やって、高校卒業後はプロの道を目指したのですね。」

「高校3年の時にパフォーマーという職業を知って、そこから目指しだしました。BMXはプロでも他の仕事をしながらの人が多いので、僕も当初はスーパーで働きながらパフォーマンスをしていました。大会やパフォーマンスがある日はスーパーを休ませてもらいました。BMXをやりながら別の仕事もする予定でしたが、パフォーマンスをされている人から、『BMXでパフォーマンスをする人はいないからやってみたら?』と言われたのがきっかけで、始めたらすごく楽しくて。今はBMXだけを仕事にして生活できる人は数名程しかいませんが、BMXの先輩方やそれに関わる様々な方が、野球やサッカーのようにメジャースポーツにするため尽力して下さっています。BMXの未来はとても明るいと信じています。」

「パフォーマーでやっていけそうだという確信があったのですね。」

「ありましたね。当初BMXをやっている人たちから『絶対やっていけるわけない』など賛否ありましたが、出来る気がしたのと、そう言われるとやってやりたい気にもなりました。それからずっとやっていたらようやく職業として成り立つようになり、無理だと言ってた人たちも今は認めてくれるようになりました。
色々としんどい事もありましたが、怖くなるくらいここまで良い軌道に乗ってこれた、というか、上手くいきすぎました。」

「どういうことが大変でしたか。」

「BMXのパフォーマンスは誰もやっていなかったので、やり方が全くわからず、最初のうちは上手くいかなかったことがたくさんありました。何回もやっていくうちにBMXの見せ方が上手くなっていき、お客さんにも楽しんでもらえるようになって、今の形になっていきました。
最初はBMXの他にけん玉や手品のパフォーマンスで人寄せし、BMXは最後のパフォーマンスとしてやっていましたが、違うなと。BMXだけで勝負したいという気持ちがあり、そこからはBMX一本で出来る形にしました。」

「ステージでは、トークテクニックなども必要になりますよね。」

「最初は人前でしゃべったことがなかったので、人見知りがすごかったんです。飲食店で注文できないくらい、病院の先生に聞かれてもしゃべれないくらい人見知りでした。それがパフォーマンスをやり始めてから人としゃべれるようになれて、その点も良かったです。昔の僕を知ってる人はびっくりしてます(笑)。」

「BMXとの出会いは、良い事ばかりですね。」

「BMXと出会ってなかったら、今頃体重100kgぐらいになってたかもしれない。人生が全然変わっていたでしょうね。」

「海外の選手とも交流されていますが、何か違いは感じますか?」

「海外の選手の技は発想がぶっ飛んでいるというか、パワー系ですごくダイナミック。力業や大技は外国人の方が多いのですが、日本人の方が正確に決まる。海外の選手はすごすぎるんですが、その分失敗も多い。日本人の方が繊細さと技の難易度は上だと思いますが、海外の選手の方が技的にすごいという人も多いです。」

「YUYA選手の、他の選手と違う点はどこですか。」

「繊細な技と、想像力で技を考えるのが得意です。誰もやってないようなオリジナリティのある技を考え、それを大会で完璧に披露するところ。技を生み出すのが得意です。」

ひさこ先生からのポイント!試合前夜の油ものはNG

「試合の時の食事で、気をつかっていることはありますか。」

「大会の日は、食欲が全くないんです。自分では緊張していないつもりなのですが、もしかしたらしてるかもしれないですね。朝は食べられないのですが、無理やり食べています。大会は予選、準決勝、決勝とあり、予選は大体朝です。朝は簡単に食べられるサンドウィッチやバナナを食べたりしています。」

「試合前日は、何か決まったものを食べたりしますか。」

「ただ好きなだけですが、とんかつをたまに食べていす。でも『絶対にこれを食べる』ものはないです。」

「競技のときは緊張していないと言われていましたが、多分アドレナリンなども出るので、それで空腹感を感じにくかったりすることもあると思います。そういうときには消化能力も落ちているので、脂っこいものは消化に時間がかかったり、内臓に負担がかかることがあるので、そういうものは避けた方がいいんですね。
朝食をしっかり食べる事はとても大事なことですが、練習開始時刻までに消化しきれないようなものを食べてしまうと胃の中で長い時間停滞します。その状態で練習や競技を始めると食べたものがまだ消化されずに残っているので、気持ち悪くなったり胃が重くなったり、あるいは横腹が痛くなったりそういう症状が起こりやすいです。翌日午前中に大事な試合がある前日の夕食は、なるべく消化が良く脂っこくないものを食べた方が理論的には良いと思います。
また、お腹は空かなくても、食べていなければエネルギー不足になります。エネルギー不足になると、競技中に足をつく時間が長くなったり、一瞬集中力が切れたり、といったことも起こりやすくなると思うので、前日の夜くらいから食事には気を付けた方が、今までに練習したパフォーマンスが発揮しやすくはなるのではないでしょうか。
どうしても前日にカツを食べたい、今までカツを食べて調子よかったと思う場合でも、せめて前日の夕食ではなく昼食に食べるなど、食べるタイミングをちょっとずらしてみる、出来ればとんかつをしょうが焼きにする、どうしてもカツならヒレカツにするなど食べるものの種類に工夫することも必要かなと思いました。
また、夜寝ることはとても大事ですが、夕食後すぐ就寝せず3時間くらいは起きているようにしたいです。
夜寝ることはとても大事で、睡眠中には浅い眠りと深い眠りを繰り返しています。深い眠りの時に成長ホルモンは分泌され、体作りが促進され、浅い眠りは新しく習得した技などが定着する大事な時間になります。試合の時はもちろんのこと、睡眠をしっかり確保するためにも、(しつこいですが)夕飯には油物は避けた方がいいと思います。」

「そうなんですね。全くそういう事は知りませんでした。」

「今は若さで問題なく出来ちゃうかもしれないけれど、30代以降も息の長いパフォーマー目指すのであれば、長い目で見て食事方法を身に着けた方が得だと思います。」

あきらめずに続けたら夢はかなう!夢は世界チャンピオン

「今は子どもに指導されているということですが、子どもたちに伝えたい事はありますか。」

「スポーツ選手だけではなく、俳優、ミュージシャン、アーティストなど、『あんな風になりたいけど自分には無理だ』ってあきらめちゃう子どもがいっぱいいると思います。でも、どんな人でも最初はみんな初心者からスタートしているので、あきらめずに信じてずっとやっていたら、絶対に夢はかなうと思う。僕は子どものときに太っていたけれど、BMXの選手になれた。最初のスタートのとき、太っていた分普通の一より大変だったと思うけど、それでもあきらめずにやっていたら、夢がかなった。
事故で入院した時も、当初は医師から右目の回復は見込めないと言われました。医師に治らないと言われたらあきらめちゃう人が多いと思いますが、あきらめずにリハビリしたから今がある。医学ではまだ解明できていない、治癒力や奇跡みたいなものも絶対あると思うんです。あきらめずに信じて、少しずつでも前を向いてやってたら治ることだってあるという事を伝えていきたいです。」

「今まで多くの方に支えられてこられたと思いますが、どんな支えがありましたか。」

「今回のケガで入院中に、教え子や色々な方から折り鶴などをいただいたり、心配してくれる人、応援してくれる人がたくさんいました。僕は、その人たちの期待に応えたい、優勝して世界一になって恩返しがしたい。応援してくれる多くの人たちの支えに、感謝しています。」

「今後の夢や目標を教えてください。」

「BMXが2024パリ・オリンピックの競技種目になるかどうかはまだ分かりませんが、もしなったとすればそこで優勝したい。オリンピックでなくても、世界チャンピオンは僕の目標です。」

取材日:2019年9月3日

選手&チームのご紹介

BMX Performer YUYA 志賀勇也 選手

1998年2月27日生まれ。大阪府出身/在住。エクストリームスポーツ『BMXフリースタイル』種目フラットランドのBMXライダー。競技用小型自転車BMXプロパフォーマーとしても活躍。15歳から本格的にBMXフラットランドに取り組む。現役のBMXライダーとして大会に出場しながらプロパフォーマーの道へと進む。

プロバスケットボール『B.LEAGUE』でのハーフタイムショー、幕張メッセで開催の人気スマホゲームイベントや海外の有名フェスティバルからも公式に招聘されグローバルに活躍中。

BMXを多くの人に知ってもらうため、様々な場所で幅広くパフォーマンス活動を行い、競技者としても世界大会に出場し続けている数少ないパフォーマー。​子ども達にBMXを指導し、育成にも力を注いでいる。