スポーツ食育インタビュー

今回ご登場いただくのは、ソフトボールチーム「ルネサスエレクトロニクス高崎」でピッチャーとして活やく中の上野由岐子(うえのゆきこ)選手。2004年アテネオリンピックでは銅メダル、そして2008年の北京オリンピックでは金メダルにかがやいた活やくを、おぼえている人も多いのではないでしょうか。 アテネオリンピックに出場したとき、本サイト『ごはんだもん!げんきだもん!』の人気コーナー「食べ物パワーを味方につけろ!」でおなじみの久保田ひさこ先生が栄養サポートチームとして、上野選手たちの栄養指導をされていた、というご縁があり、今回、ひさしぶりの対面となりました。 今も超一流の選手としてプレイを続ける上野選手に、子どものときのお話や、食事についての考え方などを、たっぷりうかがいました!

母のしつけがきびしかったので、苦手なものもがんばって食べてました!

「まずは子どもの時の食生活からおうかがいしたいのですが、好ききらいはありましたか?」

「けっこう苦手な食べ物は多かったですね。魚、すの物、マヨネーズ、牛乳、あとは甘いものが苦手でした。好物は、お肉と白いごはん(笑)。
ただ、母が食事にきびしく、残すと怒られるんですよ。一口でも口をつけると『口をつけたものは食べなさい』と言われるし、食べないと『せっかく作ったんだから食べなさい』と言われ、結局食べることになるんです。」

「お母さまの食事に対する姿勢が、今の上野選手の基本になっているんですね! マヨネーズや甘いものが苦手で、白いご飯が大好きだというのは、アスリートとしては好ましいくらいだと思いますよ。」

「母は看護師(かんごし)をしていて、体のこと、食事と栄養についてくわしかったので、『母の言うことを聞いていれば大丈夫』いう信頼がありました。イヤなんだけど、母が『体にいいから』と言うなら食べよう、と。」

朝が苦手な私に、おにぎりを作ってくれた母

「子どものときの朝食で、印象に残っていることはありますか?」

「朝が苦手で時間ギリギリまでねていたので、母にたのんでカンタンに食べられるおにぎりを朝食にしていました。あとはおみそ汁。おにぎりをほおばりながら、毎日着がえてましたね。」

「毎朝、食事の時間がない上野選手に、おにぎりとおみそ汁を用意していたお母さまは、とても立派ですね。そのおにぎりをほおばりながら、登校の準びをしていた上野選手もすごいです!」

「毎日のお弁当も、メインのおかずのほかに野菜の副菜が色々入っていて、バランスがとれた食生活でした。
母親が、私自身以上に私の体のことを考えてくれていて、健康や栄養に関しては、本当にいい環境に恵まれたと思っています。
ただ、当時はそこまで母の考えがわかっていなくて、『食べるのイヤだな~』なんて思っていたことも、あったんですけど(笑)。」

母の口ぐせは、「ちゃんと食べなさい!」

「食べざかりの高校生のときは、間食などをしましたか?」

「そうですね、朝は家でおにぎりを食べても、学校に着くころにはお腹が空いて、売店で高菜のおにぎりを買って毎朝食べていました。部活の後は、時々コンビニで買い食いをしていたんですけど、おこづかいがなかったのもありますが、そんなには食べていませんでしたね。間食をすると夜ご飯が食べられなくなっちゃって、そうするとまた母に怒られるので。」

母の口ぐせは、「ちゃんと食べなさい!」

「たしかに、間食は時には大切だけれど、それによって食事がとれなくなってしまうのは、一番の問題よね。」

「つかれすぎていて、食べる気力がなかったというのもあるかもしれません。夜ご飯も、『ご飯を食べるより休みたい』と思うときもあったんですが、それは母がゆるさないので、無理やり食べていた感じ。
でも今思い返してみると、ちゃんと食事をした方が体のためになる。当時の母はそういうことを理解して、私たちに食べさせていたんだな~と気付きました。」

ひさこ先生

「保護者の方からよく、『食べさせるより休ませてあげたい』という意見をうかがいますが、成長期は“食べたものが成長の材料”になりますし、“食べたものが動くエネルギーやつかれをとる材料”になります。お母さまは上野選手がつかれていると十分わかっているからこそ、食べることにこだわられたのでは…。そのためにおやつを制限していた上野選手! お二人ともえらいです! 」

『母からは、口ぐせのように「食べなさい、食べなさい」と言われて育ちました(笑)。』

「社会人になってからの食生活はいかがでしたか?」

「高校を卒業して、現在の『ルネサスエレクトロニクス高崎』に入ってからは、ずっと寮(りょう)生活です。朝晩は寮で、昼は会社の食堂で食事をしています。アスリート寮だから、1日のカロリー計算がされていて、バランスの良い食生活ですよ。
毎週土曜日の夜はカレーと決まっていて、日曜日の朝は残りのカレーを温めてパンにつけて食べたりしています(笑)。」

取材日:2013年2月13日

選手&チームのご紹介

上野由岐子選手

1982年7月22日、福岡県生まれ。九州女子高校(現福岡大学付属若葉高等学校)に世界ジュニア選手権で優勝。
'01年日立高崎(現ルネサスエレクトロニクス高崎)入社。'04年アテネ五輪でチーム銅メダル、'08年北京五輪ではエースとして金メダル。'12年7月の世界選手権で米国を破り、42年ぶりに優勝。173cm、72kg。【ルネサスエレクトロニクス高崎 女子ソフトボール部】
日本ソフトボールリーグ女子1部所属。1981年に旧日立高崎工場創立10周年記念事業として創部され、2010年にルネサス テクノロジとNECエレクトロニクスとの合併により、ルネサスエレクトロニクス高崎 女子ソフトボール部にチーム名を変更。 群馬県高崎市を拠点とし、過去の優勝回数は、リーグ8回、全日本総合15回、全日本実業団2回、国体11回の計36回の全国最多を誇る。

編集部より

意外!?にも、苦手な食べ物が多いという上野選手。しかし、お母さまの食事のしつけのおかげで、今の上野選手の体ができているのかもしれないですね。 後編では、海外遠せいでの食事のエピソードや、上野選手の考える「プロのアスリートとしての食生活」について、たっぷりとお伝えいたします。 どうぞお楽しみに!