特別企画

しっかり噛んでからだの内側と外側から健康に!

口(くち)は、話しをする、笑う、食べるなど、私たちの毎日の生活の中でとても重要な役割を担っています。今回は、そんなお口の健康を保つために欠かせない“噛むこと”についてお話します。

よく噛むことで得られる、嬉しい効果

その1味がよくわかる

私たちの舌には味を感じるセンサーの役割をする「味蕾(みらい)」が多く存在しています。口に入れた食べ物がよく噛むことで細かくなり、舌の上で唾液と混ざりあうことで「甘味、酸味、塩味、苦味、うま味」をしっかりと感じることができます。また、味以外にも香り、歯ざわり、舌触り、色、温度などの五感が加わることで総合的に食べ物を“味わう”ことができます。
味を十分に感じられるようになると、濃い味付けがなくとも食材本来の味や風味を楽しむことができるため、減塩にもつながります。

味がよくわかる

その2唾液がしっかり出る

口に入ってきた食べ物を噛むことが刺激となり、唾液がしっかり出るようになります。食べ物が口の中で細かく砕かれて唾液と混ざると、スムーズな嚥下(飲み込むこと)の助けとなります。
このほかにも、唾液には虫歯や口臭の予防など、口の中をきれいに保つ上でも重要な役割をはたしています。

その3消化を助ける

唾液の中には「唾液アミラーゼ」というでんぷんの消化酵素が含まれています。つまり、食べたものの消化は口の中から始まっているということです。しっかりとよく噛んで唾液と混ぜ合わせることで、ごはんなどのでんぷんを多く含む食材の消化を促します。
また、よく噛むと食べ物が細かく砕かれた状態で胃へ送り込むことができるので、胃にかかる負担を減らすことにもつながります。

その4口回りの筋力アップ

噛むことは口回りの筋肉をしっかりと動かすことにもつながります。二の腕や腹筋、背筋などの筋肉は筋力トレーニングを行うことで鍛えた部位の筋力がアップしますが、逆に使わなくなった筋肉は衰えます。
口回りの筋肉も同じです。噛む回数(口を動かす回数)が少なくなることは、口回りの筋力が低下する原因のひとつとなります。ここ数年はマスク生活が続いたこともあり、口を小さく動かすクセがついてしまっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。口回りの筋肉が衰えると、口角が下がったり、口元がたるんだりとネガティブな印象にも見えがちですし、口の可動域が狭くなることで話をするときに声がこもってしまったり、相手にとって聞き取りづらかったりすることにもつながります。“噛むこと”を意識することは口元の筋トレにもつながると考え、素敵な笑顔ときれいな発音をキープしていきましょう!
さらに、乳歯から永久歯へと生え変わる時期にある子どもにとっては、よく噛むことが歯並びに関わるあご周りの骨や筋肉の発達にも役立ちます。きれいな歯並びや正しい嚙み合わせは、ゆがみの少ない体作りに役立つだけでなく、ぐっとふんばる時の力の入り方にも関係するため、全身の筋力にもつながってきます。なお、既に永久歯が生えそろっている成人の場合、よく噛んで口回りの筋肉を維持することは、歯を支える土台となる歯茎も含め口腔内の健康維持に役立ちます。

口回りの筋力アップ

その5食べ過ぎ予防

よく噛んで食べると、脳の満腹中枢が刺激されるため、食べ過ぎの予防につながります。また、脳内物質の働きとして内臓脂肪の分解を促進することも知られており、早食いの習慣のある人はそうでない人と比べて肥満度が高かったという研究報告もあります。
食事もパソコンで仕事をしながら、テレビをみながら、スマホを片手に……と慌ただしく過ごすことの多い現代人ですが、食事はゆっくりよく噛んで、誰かと一緒に楽しく過ごすリラックス・リフレッシュタイムになるように心がけましょう!

よく噛むためにできることとは?

早食いの習慣がついてしまっていると、よく噛むこともなかなか難しいものです。よく噛むことを意識をすることはもちろんですが、食材を「柔らかいもの」から「噛み応えのあるもの」に変えたり、切り方を工夫したりすることもひとつの方法です。

白米
玄米や雑穀米、もち麦や豆などを混ぜる
ひき肉を使った料理
かたまり肉や骨付き肉を使った料理にする
薄切り
乱切りにして大きさをだす など

その他にも、食べる際の環境も重要です。

  • 一口食べたらお箸を置く(次から次へと食べ物を口に運ばない)
  • テレビやスマホを見ながらの食事など、“ながら食べ”をしない
  • 一緒にいる人と食事を楽しむ

このようなちょっとした工夫でも食事に集中することができ、噛むことを意識しやすくなります。特に朝食や昼食はパパっと済ませてしまうことも多いのではないでしょうか。食事が早く終わるということは、噛む回数も少なくなっているかもしれません。逆に、よく噛むと食事の時間も長くなるので、一度食事にどのくらいの時間をかけているのかを測ってみるのもよいでしょう。

定期的なプロケアを!

お口の健康を保つために食後の歯磨きが重要であることはみなさんご存じかと思いますが、やはり細かい部分まで完璧にケアするのは難しいところ。そのため、かかりつけの歯医者さんに定期的に診てもらい、クリーニングを行いましょう。
健康な状態からのケアを続けることで、お口のコンディションが良い状態を長くキープしていきましょうね!

定期的なプロケアを!

【レシピ編】
しっかり噛んでからだの
内側と外側から健康に!

担当者プロフィール

管理栄養士 磯村 優貴恵(いそむら ゆきえ)

管理栄養士としてダイエット専門のサロンにて食事指導を行う。その際に具体的なメニュー提案や調理方法の伝承の必要性を感じ、3年間の料理経験を積む。その後特定保健指導を経て独立。
「栄養士をもっと身近に!」をモットーとして、子供から大人まで一緒に食べられるおいしいレシピの提供や食事の大切さを紙面やWEBにて発信中。