スポーツ栄養学

「女性アスリートにおけるやせの問題について」
今月の話題:就寝前のキウィフルーツはおすすめ?!

イメージ 女性アスリート

今年7月に開催されるパリオリンピック。出場権をかけた戦いは、男女とも様々な種目ですでに始まっています。オリンピックを例にとっても、女子選手の活躍は目を見張るものがあります。そこで、今回は女子選手に特に多く見られる問題とも言える「減量」について考えていきたいと思います。

「東京2020大会」では、女子選手が占める割合は47.5%、さらにメダル獲得数のうち混合を除く女性種目の割合はなんと51.7%でした。

選手の女性の数

引用:
「東京2020大会の分析 競技力強化のための施策に関する評価検討会用資料」
(公財)日本オリンピック委員会
https://www.mext.go.jp/sports/content/20210929_spt_kyosport_000018179_3.pdf

とは言え、監督やコーチの女性の割合はまだまだといった感じですが、女子選手の活躍が目立ってきているからこそ、女子選手には特有の注意も必要になってきます。特に、技力向上と体重制限が密接に結び付く“審美系競技(体操、新体操、チアリーディングなど)”の選手には、摂食障害の発生率が高いという発表があることから、これからは選手はもとより指導者や保護者も“必要以上の減量はしない”ということを意識することが必要になってきます。

最近は耳にすることが多くなってきた「女子アスリートの三主徴」という言葉があります。“主徴”というのはあまり聞きなれないかもしれませんが、“症状”とも言い換えられるものです。どんな3つの症状を言っているのかというと

  1. ①アスリートは運動量が多いことから“消費エネルギー”が多くなるにもかかわらず“摂取エネルギー”が少ない(≒利用できるエネルギーが少ない)
  2. ②(①に関連しますが)利用できるエネルギーの不足から“体脂肪”が極端に少なくなって“運動性無月経”になってしまう
  3. ③ “運動性無月経”では、骨代謝に関係する女性ホルモンの低下が起こり“骨粗しょう症”になってしまう。特に成長期に骨粗しょう症になると、疲労骨折を含めた骨折しやすい体質になってしまう

などが挙げられます。

そしてこれら3つの主徴の共通した原因は食事量の少なさ(利用可能エネルギーの不足)と言われています。成長期に成長材料が不足してくると正常な成長が出来ないことになります。さらに、バランスのととのった適正量の食事を摂らないと将来的に“妊娠できる力(妊孕性)”にも大きく影響することが言われています。

女性アスリートが陥りやすい3つの傷害
(Female Atlete Traid)女性アスリートが陥りやすい3つの傷害(Female Atlete Traid)

引用 『Health Management for Female Athletes Ver.2』
(平成28年度 スポーツ庁委託事業 女性アスリートの育成・支援プロジェクト
「女性アスリートの戦略的強化に向けた研究」で作成)
https://w-health.jp/femaleathletes/about/diagnosis.html

結論

アスリートに限らず減量(ダイエット)を考えた時に、食品の重量やエネルギー量だけに目が行ってしまうこともありますが、大事なことはバランスです。

脂質や炭水化物(糖質)も大事な栄養素ですから、それだけを避けることなく、バランスを考えましょう。そして、まず最初に“本当に必要な減量か?”を考えて、そのうえで正しい目標と期間の設定をしたうえで、出来れば管理栄養士の指導の下に実施することも重要だと言えます。

就寝前のキウィフルーツはおすすめ?!

最近、「寝る前にキウィフルーツを食べると良いって、本当ですか?」という質問を受けました。確かに、「就寝1時間前にキウィフルーツを2個食べると良い睡眠が得られる」という噂も耳にしました。調べていくと、キウィフルーツを分析した結果の裏付けもありました。

キウィフルーツが良い眠りを誘うと言われている理由は①キウィフルーツは、良い眠りに誘う働きの“セロトニン”を体内で合成する際に欠かせないアミノ酸の一種の“トリプトファン”を多く含んでいる ②ストレスの軽減も良い睡眠につながる要素と考えた時に、ストレスの軽減に関わる抗ストレスホルモンの生成にはビタミンCが欠かせない。キウィフルーツ(特に黄肉種)は、果物の中でも特にビタミンCを多く含んでいます。

ただ、「就寝1時間前にキウィフルーツを2つ食べると良い睡眠が…」には、注意点もあります。まず一つ目は、就寝前に果物を摂ることで体脂肪を貯める可能性もあること。

二つ目は“アレルギー”に関してです。キウィフルーツは、表示が推奨される21品目にも入るアレルギー発症頻度の高い食品ですので、食べる際には注意が必要です。

良い睡眠に関係するトリプトファンはキウィフルーツに限らず、牛乳やヨーグルトにも含まれています。また、ビタミンCはキウィフルーツだけでなく、緑黄色野菜や他の果物にも豊富に含まれています

つまり、何にでも言えることですが、“○○だけ”と固執した考えにならないことも大事です。

イメージ キウィフルーツ

栄養学担当者プロフィール

久保田 尚子 先生

順天堂大学等の非常勤講師などを歴任しつつ、スポーツ栄養を中心とした栄養関連業務に従事。
<主な栄養サポート歴>JリーグFC東京((トップから育成年代)栄養アドバイザー、女子ソフトボール日本代表(2004年アテネオリンピック支援帯同)など
<主な雑誌連載>月刊誌『サッカークリニック』《勝つための栄養セミナー》等多数

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