スポーツ栄養学
夏に備えた健康管理(熱中症対策)
今月の話題:練習後、おなかが空いて食事時間まで待てないジュニア選手にこそ “分食” がおすすめ!
GWの始まる頃くらいから、『熱中症対策グッズ』の紹介がされたり、朝のニュースや天気予報でも『今日は夏日の予報が出ています。こまめな水分補給で、熱中症を予防して下さい』と警鐘を鳴らされたりする「夏に備える」時期になってきました。
数年前からスポーツ庁はじめ様々な団体が熱中症予防のキャッチコピーとして使っているのが『知って防ごう熱中症』です。『知って…』とはどんな意味でしょうか? 対象者によって何を最も訴えたいかは違ってくるかもしれませんし、それをいろいろな角度から伝えているのだと思いますが、私は
①熱中症は命を落とす可能性のある怖いものだということ
②自分の体と向き合って、正しく水分補給をすれば十分防ぐことは出来るものだということ
の2点が最も伝えたいポイントだと思っています。
年齢・性別などにもよりますが、私たち人間の体の水分量は体重の約60%といわれています。
”体中に栄養素や酸素を運ぶ血液”、”体温調節のための汗”、”体内で不要になったものを体外に排泄する尿”・・・これらはみんな水分が素になっています。
暑くなる≒体温も上がりやすいと考えると、『気温が高くなることが予想される日には、特にこまめな水分補給が大事』になります。
私たちは発汗することで体温の上昇を防いでいるのですが、水分補給がしっかり出来ていないと発汗そのものがうまくいかなくなって、熱中症の症状が出始めてきます。
『体温の上昇を抑えるための発汗』には、『こまめな水分補給』はもちろん不可欠ですが、もう一つ意識していただきたいのが『汁物付きの朝食』です。
年齢・性別・就寝時の環境などにもよりますが「寝ている間には400~500mlの水分が失われる」と言われています。
しかし、汁物付きの一般的な朝食で、それに匹敵する水分と塩分を摂取出来ます。
気温や湿度など外的な条件も大きく影響する熱中症ですから、重症度や要因を必ずしも一律に言い当てることは出来ませんが、真夏日の予報が出ている日には、『こまめな水分補給+汁物付きの朝食喫食』をセットで心掛けましょう!
そうすることで、さらに熱中症予防効果が出ると思います。
結論
熱中症は真夏に限ったことではありません。冬場でも熱中症の発症例は見られますが、暑さ慣れしていない突然の真夏日や梅雨明け直後には特に注意が必要です。
そんな時こそ“汗の素確保”のための『こまめな水分補給+汁物付きの朝食』を心掛けて下さい。
練習後、おなかが空いて食事時間まで待てないジュニア選手にこそ “分食” がおすすめ!
お子さんがジュニア選手として頑張っているお母様から、こんな質問を受けました。
『夕方からの練習が終わって帰宅するともうすぐ夕食だというのに、空腹が我慢できずにお菓子を食べてしまう。その結果(予想通り)夕食では食事量が少なくなってしまって困っている』というものでした。夕方に練習があるジュニア選手では、よくあることのようです。
そこで、おすすめなのが“分食”です!
“分食”とは、本来の“夕食”を2回に分けて食べることを意味します。練習(塾などのお稽古も)前に“エネルギー補給”の意味で食べるものを“夕食ⅰ”、練習等から帰宅して食べるものを“夕食ⅱ”とします。(※夕食ⅱは、就寝中に分泌される成長ホルモンを有効に使うための体づくりの材料になるもので、就寝までの時間を考えると脂質控え目の方がおすすめです)
夕食ⅰも夕食ⅱもおやつではなく、必要な栄養素をしっかり摂る“夕食を分けたものの一部”と考えて下さい。
ジュニア選手の年齢によっては最初は保護者の負担が大きくなるかもしれませんが、習慣化させるまでの“道づくり”を一緒にしていただくことで、一生の宝となる“食事の摂り方~分食の仕方編~”を身につけることが出来ます。
おなかが空いていると、大人でもとにかく何でもよいから食べたくなるものです。その時に家庭(≒保護者)ならではのちょっとした働きかけで、“何を食べるとコンディションがよくなるのか?”、“何を食べるとパフォーマンスに良い影響がでるのか?”に気付けるようになると思っています。
とは言え、“おやつ”も大事な心の栄養になると思うので、おやつと補食の違いを実感するためにもタイミングと量をお子さんと一緒に考えながら選んでみるのはいかがでしょうか?
栄養学担当者プロフィール
久保田 尚子 先生
順天堂大学等の非常勤講師などを歴任しつつ、スポーツ栄養を中心とした栄養関連業務に従事。
<主な栄養サポート歴>JリーグFC東京((トップから育成年代)栄養アドバイザー、女子ソフトボール日本代表(2004年アテネオリンピック支援帯同)など
<主な雑誌連載>月刊誌『サッカークリニック』《勝つための栄養セミナー》等多数
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