スポーツ栄養学

「栄養素の吸収率をUPさせる食べ合わせとは?」
今月の話題:小学生でもノンオイルドレッシングを使った方がよい?

前回に引き続き、少年サッカーチームでスポーツ栄養学講座を行った際にいただいた質問にお答えします。

今回は「栄養素の吸収率をアップさせる食べ合わせや、よくない食べ合わせがあれば教えてください」というご質問です。

栄養素の中には、他の栄養素と一緒にとることで体内での吸収率が高まるものがあります。

カルシウム×ビタミンD(クエン酸)
特に成長期にはしっかり摂りたいカルシウムですが、吸収率が高くないのが問題です。そこで、カルシウムが比較的多い豆腐にはビタミンDの多いかつお節をかけて食べたり、高野豆腐ときのこを一緒に煮たりすると、カルシウムの吸収をアップさせることができます。また、レモンなどに含まれるクエン酸もカルシウムの吸収を助けることが知られています。カルシウムの多いシシャモやしらす干しなど(小魚)にレモン汁をかけて食べるのもおすすめです。

鉄×ビタミンC(たんぱく質)
鉄の中でも、特にほうれん草や大豆製品などに含まれる“非ヘム鉄”という種類の鉄は吸収率が低いのですが、ほうれん草をたんぱく質を多く含む豚肉といためたり、食後のデザートにビタミンCを多く含むキウィフルーツなどを食べるようにすると鉄の吸収率がアップします。

ビタミンA×脂質
ビタミンAは“脂溶性ビタミン”といって、あぶらに溶ける性質があります。緑黄色野菜に多く含まれるビタミンA(β-カロテン)は、油で炒めて食べる、サラダに亜麻仁油やえごま油をかける、マヨネーズを使うなどの工夫で吸収率をアップさせることができます。

また、吸収率を高めるのとは違う観点で組み合わせのよい食品(成分)もあります。例えば、豚肉(ビタミンB1)×ニラ、ネギ(アリシン)の組み合わせです。エネルギーづくりに欠かせないビタミンB1には水に溶ける性質があるため、尿などから失われやすいという特徴があります。しかし、ニラやネギと一緒に食べることで、におい成分のアリシンがビタミンB1と結合して、血液中に長くとどまる成分になります。

結論

一方で、一緒にとるのを避けたい組み合わせもあります。

鉄×コーヒー・紅茶・緑茶
コーヒーや紅茶、緑茶に含まれるタンニンには、鉄の吸収を妨げる性質があります。食後のお茶は麦茶がベターです。

ニンジン・キュウリ×ビタミンCを多く含む食品
ニンジンやキュウリにはアスコルビナーゼというビタミンCを壊してしまう酵素が含まれています。ただし、アスコルビナーゼは熱や酸に弱いため、加熱するかレモン汁や酢で調理すれば心配ありません。例えば、大根とにんじんのなますであれば酢で調理するので大丈夫ですし、きゅうりの入ったサラダであればドレッシング(レモンや酢が入っている)をかければ大丈夫です。

ほうれん草(非ヘム鉄)×ゆで卵
卵は生の状態では鉄の吸収を妨げることはありませんが、ゆで卵(特に固ゆで卵)にすると硫黄分がホウレンソウに含まれる鉄(非ヘム鉄)とくっつくことで、その吸収を妨げます。ホウレンソウと卵を食べ合わせる場合はスクランブルエッグやオムレツなどにする方が安心です。

小学生でもノンオイルドレッシングを使った方がよい?

“ノンオイル”のドレッシングは、脂質が入っていないドレッシングです(既製品のドレッシングの場合は表示を見ればわかります)。特別の場合を除き、油を無理に避ける必要もありませんが、例えば油を使った料理が多い食事ではノンオイルタイプを使うようにしたり、食事から就寝までの時間が短いときに少しでも消化時間を短くするためにノンオイルタイプを使うようにするのもよいと思います。
マヨネーズや油の入ったドレッシングが絶対よくないという訳ではありませんし、脂質も大事な栄養素ですので、上手に使い分けて頂ければと思います。

栄養学担当者プロフィール

久保田 尚子 先生

順天堂大学等の非常勤講師などを歴任しつつ、スポーツ栄養を中心とした栄養関連業務に従事。
<主な栄養サポート歴>JリーグFC東京((トップから育成年代)栄養アドバイザー、女子ソフトボール日本代表(2004年アテネオリンピック支援帯同)など
<主な雑誌連載>月刊誌『サッカークリニック』《勝つための栄養セミナー》等多数

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