スポーツ栄養学

「“三角食べ”と“ばっかり食べ”どちらがよい?」
今月の話題:運動後の補食は何分以内?

先日、少年サッカーチームでスポーツ栄養学講座を行った際、保護者の方から次のような質問をいただきました。

「食事を食べる順番について、一般的にはおかずとご飯を交互に食べることが勧められているかと思います。ところが、最近、一品ずつ食べることで酵素を効率よく使えるという話を聞きました。どちらの食べ方がよいのか教えてください」

おかずとご飯を交互に食べる“三角食べ”と、一品ずつ食べていく“ばっかり食べ”のどちらにもメリット・デメリットがあり、一概に「どちらがよい」とは言えません。
例えば、“三角食べ”には、万が一食べきれなかった場合にも栄養のバランスがとりやすいことや、口中調味(口の中でご飯とおかずを混ぜ合わせて味わう)ができることなどのメリットがあります。一方で、この“口中調味”によって様々な味が口の中で混ざり合うため味覚が悪くなるという考え方もあります。また、汁物などで流し込むように食べることで噛む回数が減るのではないかという指摘もあります。
また、“ばっかり食べ”では、一品ずつ食べることで食品そのものの味がしっかり分かることや、よく噛むことで消化・吸収がよくなることなどのメリットが挙げられますが、嫌いなものや苦手なものを後回しにしてしまい、結果的に残してしまうことにもなりかねないというデメリットも考えられます。

ご質問の“酵素”とは“消化酵素”のことだと思いますが、消化酵素を十分に分泌するためには“食べる順番”よりも“よく噛むこと”が重要です。どちらの食べ方にしても、“しっかり噛む”習慣を心がけたいものです。
また、食べ方を組み合わせるのもよいと思います。例えば、血糖値の急上昇を防ぐために最初にサラダなどの野菜料理を食べて、その後は三角食べを取り入れて食事をするのもありだと思います。

結論

両方の食べ方の特徴を知って、おいしく、楽しく、そして食べたものが体にうまく取り入れられるような環境で食事ができるとよいですね。
なお、最近では“噛むこと”で“咀嚼筋(口の周りの筋肉)”が発達すること、そして咀嚼筋とパフォーマンスの関係も研究されてきています。“噛むこと”で、競技的にもパフォーマンスアップが言われていますし、脳の働きにも良い影響があるようです。消化酵素の分泌促進のみならず、様々な良い影響がある“噛む力”を意識してみましょう。

運動後の補食は何分以内?

練習や試合後の補食のタイミング(何分以内にとればよいのか?)についても、よく質問されることがあります。
一般的には30分以内と言われていますが、「35分後になら食事ができる」「コロナ禍で外での食事は避ける約束になっている」など、人によって様々な条件があると思うので、あくまでも“一般的には”と考えてください。許される条件の中で、『使ったエネルギーをいち早く補給する』ためにできることを見つけてみることが、特に成長のためにも、疲労回復のためにも大事だと思います(例えば、エネルギーゼリーならOKなど)。
ひとつ問題なのは、補食をしっかりとり過ぎたことで、適度な疲労と満腹感で本来の食事が食べられなくなることです。補食の内容や量には注意するようにしましょう。

栄養学担当者プロフィール

久保田 尚子 先生

順天堂大学等の非常勤講師などを歴任しつつ、スポーツ栄養を中心とした栄養関連業務に従事。
<主な栄養サポート歴>JリーグFC東京((トップから育成年代)栄養アドバイザー、女子ソフトボール日本代表(2004年アテネオリンピック支援帯同)など
<主な雑誌連載>月刊誌『サッカークリニック』《勝つための栄養セミナー》等多数

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