スポーツ栄養学

「成長期の体重コントロール」
今月の話題:『栄養ドリンク』が“医薬部外品”って知っていましたか?

体重コントロールと言えば、ダイエット(減量)のイメージですが、実は“増量”も体重コントロールに含まれます。“増量”は、“減量”より楽なのでは?と思っている方も多いかもしれませんが、実は、体の中身を考えた“増量”も、“減量”同様に気を付けることがあります。

成長期の体重コントロールには、大人の場合とは違う部分もあります。まず、“減量”についてです。競技をしている成長期の子どもの“減量”は、指導者から”戦略的”に行うことを勧められる場合があります。具体的には、体重別階級制の競技で「どの階級で試合に臨めば“勝てる”につながりやすいか」ということです。例えば、ボクシング、柔道、レスリング、空手などは、体重で階級が分けられます。成長期の子どもの場合、体重の現状維持でも“消極的減量”になる、と私は思っているので、『成功(勝ち)体験』と同じくらい、成長期の子どもの“減量”の重大さも大人には意識して欲しいと思っています。成長期の減量は、“骨の成長”に影響が出るなど一生の問題になることもあります。せっかく練習をしてきているのだから、試合で勝たせたい(勝ちたい)という気持ちももちろん分かります。ただ、大人でも共通していることですが、『体重が減るときは筋肉が落ち、体重が戻るときは体脂肪で増える』ことになりやすいので注意が必要です。だからこそ、本当に必要な減量のみを、正しい方法で行うことを心がけるようにして下さい。

一方、増量については「“体重を増やす”のが目標だから、好きなものを食べたいだけ食べればよい」と思われているかもしれませんが、そうではありません。いわゆる思春期の場合は、〔体重が増える≒体脂肪量が増える≒脂肪細胞が増える〕につながることがあります。いったん増えた脂肪細胞の数は、減らすことはなかなか難しく、大人になってからの食生活にもよりますが、生活習慣病になりやすくなる可能性もあります。

結論

減量も増量も目先の体重だけで一喜一憂したり、短期間に結果を求めたりすることは問題です。『減らすのは体脂肪(脂肪細胞の数)、増やすのは筋肉』というのを大原則に考えていくことが大事です。そのために最も大事なことは、食品中の脂質の量や調理法に気を付けることです。例えば、同じ肉でも部位によって脂質の量に大きな違いがあります。また、“パン”でもどのパンを選ぶかで「知らないうちに油(=脂質)を摂っていた」ということもあります。何を食べるかで脂質の量にも大きな違いが出てきます。さらに、同じ食材でも調理法によって脂質の摂取量に大きく関係します。ということで、体重コントロールを視野に入れたら、ご本人でも、ご家族でも、ぜひ『食品成分表』を“座右の書”になさって下さい。そのことで、量を減らすことなく、エネルギー量(≒カロリー)を減らすことが出来、空腹感を感じない減量につながります。そして、成分表を見ることで、噂ではなく”真実を見る目”を養うことにもつながります。

『栄養ドリンク』が“医薬部外品”って知っていましたか?

『栄養ドリンク』について、「ちょっと風邪気味だから、ひどくなる前に飲んでおこうかな?」とか「私たち大人が飲んで効果を感じるから、疲れ気味の子どもにも飲ませてみようかな?」というように、何気なく飲んでいる(飲ませている)方を見かけることがあります。特に、風邪がはやる冬場は多いような気がします。また、『栄養ドリンク』と『エナジードリンク』の区別を付けずに、どちらも『なんとなく、飲むと元気になるもの』というイメージでとらえている方も多いように思います。
しかし、『栄養ドリンク』は“医薬部外品”であり、薬機法(旧薬事法)により厚生労働省が許可した効果・効能に有効な成分が、一定の濃度で配合されているものです。そのため、用法用量や年齢制限もあるので注意が必要です。ドラッグストアやコンビニでも手軽に手に入るものなので、その辺りを家族全員でしっかり確認しておく必要を感じています。

スポーツ栄養学 Q&A

全国の中学校で開催した「スポーツ栄養学講座」にて寄せられた質問と、
その回答の一部をご紹介します。

塾から21時頃に帰宅します。夕食や入浴、勉強、趣味などでどうしても寝る時間が0時前後になり、睡眠に費やせる時間が少なくなってしまうのですが、どうしたらいいでしょうか。

時間を有効に使うのは難しいことですが、“優先順位”を考えて、生活のリズムを立てましょう。例えば、夜寝る前の趣味の時間は、土日の時間に余裕がある時に少し多めにとるようにして、塾のある日は我慢する…これが優先順位を考えた行動です。成長期の中学生にとって、成長のためにしっかり寝る時間を確保することと、翌日気持ちよく起床してしっかり朝ごはんを食べることは、一生のことを考えても一番優先することだと思います。

牛乳はどのような栄養がありますか。

牛乳には良質なたんぱく質と吸収の良いカルシウムのほか、様々な栄養成分も含まれています。ビタミンC以外の栄養素が含まれていることから『完全食品』という言い方もあるくらいですが、思っている以上に脂質も含まれているので、“水代わり”に飲むことはお勧めできません。

栄養学担当者プロフィール

久保田 尚子 先生

順天堂大学等の非常勤講師などを歴任しつつ、スポーツ栄養を中心とした栄養関連業務に従事。
<主な栄養サポート歴>JリーグFC東京((トップから育成年代)栄養アドバイザー、女子ソフトボール日本代表(2004年アテネオリンピック支援帯同)など
<主な雑誌連載>月刊誌『サッカークリニック』《勝つための栄養セミナー》等多数

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