スポーツ栄養学
「残さず食べよう ~食事もトレーニングの一環?~」
今月の話題:“いつ”、“何を”食べるか?を考える力が大事です!
最近は“食トレ”や“食育”ということばを耳にすることも多くなってきました。そのくらい、成長期の子どもたちに“食べる”ことがとても大事だという認識が広まってきているのだと思います。特に、ジュニアアスリートの場合には『食べたものがエネルギーの素』、『食べたもので体は作られる』となるわけですから、まさに“食べる”ことは、“練習”と同じくらい大事な“トレーニング”ということです。
選手と関わっていると『食べること』に意識の高い選手に出会うことが多くなってきていると感じることがあります。そのくらい『食事は、練習や睡眠と同じくらい大事なこと』という考えが定着してきているのだと思います。そして、その時に『家庭で受けてきただろう“食育”』を垣間見ることがよくあります。
もちろん、プロとして様々なことを理解して“頭で食べることが大事”ということが分かっている選手もたくさんいます。ただ、そんな時も選手との会話のなかに小さいときの食事風景が目に浮かぶような時もあります。選手に限らず、最近は小中学生や保護者の方とのお話していても『成長期だからたんぱく質をしっかり食べる(食べさせる)!』とか『背が大きくなるようにカルシウムをしっかり摂る(摂らせる)!』、逆に『スナック菓子は食べない(食べさせない)!』ということを実践している方も見受けられます。
もちろん、そのような食習慣を身につけることも大事ですが、“食トレ”の最終目標は、 “バランスのとれた食事”をふつうに無理なく、自分で準備できて(選べて)とれるようになることだと思います。そして、その時に役に立つのが今まで何度かお話しした《食事バランスガイド》です。
《食事バランスガイド》はちょっと気を付けていると、私たちの生活の中のあちこちで目にすることが出来ます。また、市販されている食品にも『必要な栄養素は食事から』と書いてあるのを見かけることがあります。『“残さず食べる”こと』は『バランスのとれたものをふつうに食べること』につながる大事な“食トレ”だと思います。
結論
スポーツ選手にとって、食事は『スポーツをするエネルギーの素』、だから食事をしなければ練習効果を表現することはできません。また、食事は『練習の効果を表現したり、練習に耐える体の素』です。だから『食事が大事!』なのですが、これはスポーツをする人にとってだけのことではありませんし、特別のことでもありません。このことは、スポーツをしていても、そうでなくても、また年齢や性別にも関係なく、誰にでも当てはまることです。そして、小さいときの“食トレ”で、『“残さず食べる”こと』と『バランスのとれたものをふつうに食べること』が身につけば、それは“一生の宝物”になると思います。
“いつ”、“何を”食べるか?を考える力が大事です!
今までとは異なる環境でのオリンピック・パラリンピックの開催でしたが、いざ始まってみるとやはり選手の活躍は胸が躍るものでした。57年前の東京五輪の記憶がある人は少ないですが、当時に比べて現在は情報が豊富です。選手村の食事についても画像を含め、たくさん紹介されていました。バイキングのレストランのようにおいしそうなものがたくさん並んでいたとの報道もありました。ただ、私が一番感動したのは、選手たちが選手村で提供されるメニューを、“いつ”“何を”食べるか?を考えていることでした。
食事は選手にとって『練習効果を発揮するのに役立つもの』であると同時に、大きな“楽しみ”でもあります。だからこそ、“いつ”、“何を”選んで食べるかが大事ということです。食事(栄養)と練習は“車の両輪”と言われ始めたのは、前回の東京五輪(1964年)の頃からで、既に60年近く経つわけなので、今回の2020東京をきっかけに、「運動するなら食事に気を付けることは当たり前」、出来れば運動の有無に関係なく「食事は意識するのが当たり前」となれたら、それも大きなレガシーとなるのではないでしょうか?
スポーツ栄養学 Q&A
全国の中学校で開催した「スポーツ栄養学講座」にて寄せられた質問と、
その回答の一部をご紹介します。
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ごはんをよく噛めば太らないのは本当ですか
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ごはんを急いで食べると、脳が「お腹がいっぱい」と感じる前にたくさん食べてしまいます。しっかり食べることは大事ですが、必要以上に食べすぎると太ってしまうので、よく噛んで、ゆっくり食べることは大事です。
また、少し難しい話ですが、よく噛んで、ゆっくり食べる方が“消費エネルギーが多い”というのが、最近の実験では言われているので、そのことからもゆっくり食べる方が太りにくいということは本当だと思います。 -
普段、『たくあん』を朝ごはんで副菜として食べていますが、朝ごはんの副菜として大丈夫ですか。それとも、夕ごはんで食べるほうがいいですか
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たくあんはダイコンから作る漬物ですが、生の大根とは違います。つまり、出来ればたくあんは副菜(野菜のおかず)とは考えずに、野菜のおかずは別途食べるようにして下さい。
また、たくあんを食べることでごはんがすすむと思うので、どちらかと言えば食欲がまだわかない朝の方が良いかもしれません(食塩の摂り過ぎにならないように量には注意しましょう)。一般的には、朝ごはんより夕ごはんの方がおかずも多いと思うので、夕ごはんでは漬物がなくてもごはんは食べられると思います。
栄養学担当者プロフィール
久保田 尚子 先生
順天堂大学等の非常勤講師などを歴任しつつ、スポーツ栄養を中心とした栄養関連業務に従事。
<主な栄養サポート歴>JリーグFC東京((トップから育成年代)栄養アドバイザー、女子ソフトボール日本代表(2004年アテネオリンピック支援帯同)など
<主な雑誌連載>月刊誌『サッカークリニック』《勝つための栄養セミナー》等多数
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