スポーツ栄養学

「アスリートの食事の量と質」
今月の話題:“朝食”はおいしく食べられていますか?

食事は誰にとっても大事なものです。運動量の多いアスリート、特に成長期にあたるジュニアアスリートにとっては、なおさら『量と質』を考えた食事が大事になります。

食事の役割を復習してみましょう。まず、食べたものが“エネルギーの素”になることから、“運動で使ったエネルギーの量”と“食べるエネルギーの量”が一致している必要があります。さらに、成長期のジュニアアスリートの場合は“成長のためのエネルギー”も含めてしっかり食べることが大事です。つまり、運動量が多ければ多いほど、成長期であればあるほど、食事量は増えてくるということです。ただ、食事量さえ増やせばよいかというと、そうでもありません。“食べるタイミング”“一回の量”を考えた食事にする必要があるからです。

同じ食事でも、“食べるタイミング”が”食べる量”に大きく影響します。そのため、食べたものが最も効果的に働くタイミングと量を考えることが大事です。年齢や体格にもよりますが、体が食べたものを利用できる量には限界があります。例えば、体づくりの材料になるたんぱく質(肉や魚、卵や大豆製品のおかずなど)は、一度にたくさんの量をとっても、すべてが体づくりに利用されるわけではありません。また、エネルギーの素になる炭水化物(ごはんやパン、めん類など)も、食べてからエネルギーとして使われるまでの時間を考えると、「これから使うエネルギーを補給するのか」、「すでに使ったエネルギーを補給するのか」によって、“タイミング”も変わってきます

※食べたものに含まれる栄養素がからだで使われるまでの道のり:食べる⇒噛む(食べたものを細かくして胃での負担を少なくする、噛むことで消化酵素を含むだ液がたくさん出てくる)⇒消化する(胃や小腸で消化酵素の分泌により各栄養素が消化される)⇒吸収する(小腸で栄養素がからだに取りこまれる)⇒使われる

運動で消費するエネルギーの計算方法はこちら

結論

食べたものがエネルギーの素になったり、食べたものがからだを作ったり…と食べることにはとても大事な役割があります。ただ、食事の量は、多すぎても、少なすぎても問題があるので、目的(成長期、大事な試合の前、就寝前に時間がない時など)に合わせて、ふさわしい量を、ふさわしいタイミングでとるようにしましょう。基本的には〔使ったエネルギー量≒食べたエネルギー量〕になることが望ましいですが、成長期や減量が必要な競技では、必ずしもこの公式は成り立ちません。

“朝食”はおいしく食べられていますか?

新年度が始まって1か月が経ちました。コロナ禍で普通の生活が難しいこともありますが、皆さんの新年度はどのようなスタートをきりましたか? 小学校から中学校へ、中学校から高等学校へと環境が新しくなられた方々にとっては、大型連休後あたりがそろそろ疲れも出てくる頃ではないでしょうか? 一日を有意義に過ごすために大事なのは『規則正しく、毎日3食を食べること』です。つい、休みの日には朝寝坊して、朝食を抜いたり、遅く食べたりということもあるでしょう。でも、毎日同じようなパターンで生活することが体には良いそうです。
以前にお話ししたことですが、朝食は一日のスタートをきるための大事なエネルギー補給であると同時に、これからの季節は水分補給をするタイミングでもあります。先日、中学生から『朝ごはんが大事なことは、よく分かっているのだけど、眠くてなかなか起きられない。コーンフレークだけでも良いですか?』とか『朝ごはん、何を食べるのが理想的ですか?』と朝食に関心を持ってくれているのが分かる質問を受けました。朝食を意識すること、とても立派です。『おなかが空いて目が覚める!』だから『朝ごはんももちろんおいしい!』と言えることを目標に、一日の生活リズムを作れると良いですね。

スポーツ栄養学 Q&A

全国の中学校で開催した「スポーツ栄養学講座」にて寄せられた質問と、
その回答の一部をご紹介します。

中学1年生ですが、何時に寝れば良いですか?

1年生(12~13歳)ですから、8~9時間の睡眠時間が理想です。だとすれば、起床時刻から逆算して就寝時刻を決めてみましょう。起床時刻は、ゆとりをもって朝食がとることができ、トイレも済ませられるような時間にすると良いでしょう。

バレーボール部でたくさん汗をかくので、夏の練習は2リットルの麦茶と、600mlのスポーツドリンクでやっと足りるくらいなのですが、麦茶とスポーツドリンクのどちらを多くとった方がよいのでしょうか?

水分補給用に準備する量はバレーボール部の練習時間にもよります。15~20分で150~200mlを基本として、それに練習前用と練習後用、予備用を準備するようにしましょう。また、しっかり朝ごはんを食べていること、お昼の給食もしっかり食べていることが前提条件ですが、最初は麦茶だけ、その後は麦茶とスポーツドリンクと両方で水分補給と考えれば、麦茶が多めで良いと思います。

栄養学担当者プロフィール

久保田 尚子 先生

順天堂大学等の非常勤講師などを歴任しつつ、スポーツ栄養を中心とした栄養関連業務に従事。
<主な栄養サポート歴>JリーグFC東京((トップから育成年代)栄養アドバイザー、女子ソフトボール日本代表(2004年アテネオリンピック支援帯同)など
<主な雑誌連載>月刊誌『サッカークリニック』《勝つための栄養セミナー》等多数

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