スポーツ栄養学
「“噛むこと”とパフォーマンスの関係」
今月の話題:コロナ禍での食事も意識次第で。。。
最近は歯の矯正をしているアスリートのことが話題になっていますが、矯正をしている多くのアスリートは“歯並びを良くする”=“噛む力を強くする”ことの重要性を意識しているためと言われています。
“噛む”ことがもたらす良いことは、何と言っても『消化吸収』の促進です。この理由として、しっかり噛むことで①だ液など消化液が分泌されること ②食べたものが細かくなるため、飲み込みやすく、胃や腸への負担も軽くなることなどが挙げられます。
しっかり噛むことは誰にとってもとても大事なことですが、特にアスリートにとっては、食いしばる力が強くなるとパワーが出しやすくなる(例:陸上競技で良いタイムが出る、サッカーのキックで強い力が出る、野球で安定したスイングができる)などの研究結果も報告されています。また、噛むことは脳への刺激にもつながるとも言われており、噛むこととパフォーマンスは大いに関係ありと言えます。
歯の矯正が噛む力に良い影響を与えることが知られるようになり、『スポーツで結果を求めるような時になったら矯正すれば良いか?』と思われる方も多いようですが、できれば矯正の必要がないことが一番です。
最近、成長期にしっかり噛むことであごの骨が発達し、歯並びにも良い影響が出ることが分かってきました。つまり、やわらかくて食べやすい食事に偏らず、“しっかり噛むことが必要な食事”を組み合わせることが大事ということです。日常の食事を見直し、“噛みごたえのあるもの”を意識することも家庭での食育と考えてみましょう。例えば『和食の見直し』です。ユネスコの無形文化遺産に登録された和食は、やわらかい食材が使われることの多い洋風料理(ハンバーグ、シチュー、グラタン、コロッケなど)に比べ、歯ごたえのある食材(根菜類、こんにゃく、きのこ類など)を大きく切った料理が多いのも特徴です。これらの和食を日常の食事に上手に取り入れ、自然に“噛むトレーニング”をするのも良いかもしれません。
結論
“噛む力”を 強くするためには、(筋トレのようですが)噛むのに使う筋肉(そしゃく筋)を日頃からよく働かせると良いと言われています。いきなり噛みごたえのあるメニューにするのではなく、噛んで食べるメニューを少しずつ加え、【よく噛むこと⇒ゆっくり食べること⇒消化吸収が良くなる⇒楽しい食事】という良いローテーションで、日常の食事をランクアップしていきましょう。
コロナ禍での食事も意識次第で。。。
COVID-19の長期にわたる影響は、食事にも出ているような気がします。給食がなくなったり、外食が出来なかったりと、“3食自宅で…”という状況に、心身ともに疲れている方も多いのではないでしょうか?
先日、「テイクアウトやデリバリーで栄養バランスを整えることは可能か」という質問を受けました。料理が得意ではなく、〔外出自粛≒外食無し〕⇒〔外食無し≒栄養バランスは大丈夫?〕という不安が出てきたとのことで、テイクアウトなどを上手に利用するには、自分で“+α”を準備することが大事であることを伝えました。その“+α”は、手作りなら一番かもしれませんが、冷蔵庫やキッチンに常備するものを工夫するだけでも良いのです。例えば、冷蔵庫には卵、牛乳、野菜ジュース、100%ジュース、納豆、充填豆腐、しらす干しなど、キッチンの棚には乾燥わかめ、インスタントみそ汁、レトルトごはん、レトルトカレー、ツナ缶などを置いておきます。それらをテイクアウトなどの食事のバランスアップをしたい時や、デリバリーすらしたくない時の“非常用”に使えば、何とかなるはずです。そして、「この食事で大丈夫かな?」と関心(不安だと強すぎます)を持っていれば、きっと打開策はあると思うのですが。。。これを実践していくと保存食のローリングストック※にもつながると思います。
※ローリングストック:缶詰などの食品を災害用にたくわえつつ普段の食事にも使い、使った分は新たに買い足して常に一定の量の食品を備えるようにする方法
スポーツ栄養学 Q&A
全国の中学校で開催した「スポーツ栄養学講座」にて寄せられた質問と、
その回答の一部をご紹介します。
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なかなか成長しないのですが、なぜでしょうか?
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成長の速度は、人によって異なります。また、全員が同じような成長をするわけではありません。例えば、身長もいつ伸びるかは人によって違いますし、ご両親からの遺伝も関係しています。大事なことは、いつ成長のピークが来ても良いように、日頃からバランスのとれた食事をしっかりとっておくことです。
また、成長のために必要な『成長ホルモン』は就寝中に分泌されるので、しっかり寝ることも成長には欠かせません。 -
朝練のため家族といっしょに朝ごはんを食べられません。どうすればよいでしょうか?
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朝練のある日の朝食は一人になってしまうかもしれませんが、土曜日や日曜日、あるいは朝練のない日には、家族そろって食べられるようにしてみてはいかがでしょうか。
栄養学担当者プロフィール
久保田 尚子 先生
順天堂大学等の非常勤講師などを歴任しつつ、スポーツ栄養を中心とした栄養関連業務に従事。
<主な栄養サポート歴>JリーグFC東京((トップから育成年代)栄養アドバイザー、女子ソフトボール日本代表(2004年アテネオリンピック支援帯同)など
<主な雑誌連載>月刊誌『サッカークリニック』《勝つための栄養セミナー》等多数
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ダノン健康栄養財団では、子どもから大人まで、幅広い年齢層に正しい食生活、生活習慣の知識を身につけてもらえるよう、小・中学校などの教育現場で「食育出前授業」やスポーツチーム向けの「スポーツ栄養学講座」を行っています。
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