スポーツ栄養学
好き嫌いと向き合って上手に乗り切るために
今月の話題:嫌いなものとの向き合い方は?
独立行政法人日本スポーツ振興センターの〔平成22年度 児童生徒の食生活実態調査【食生活実態調査編】〕で、『嫌いな食べ物調査』によると、小学生・中学生を問わず、嫌いな食べ物に、ゴーヤ、なす、レバー、ピーマン、セロリ、トマト、グリーンピースなど野菜が多く上がっていました。
『嫌いな食べ物』では、やや苦みが感じられる野菜や、においや触感が嫌で大人でも苦手な方の多いレバーが、あがっていたのはなんとなく納得できます。とは言え、栄養学的に考えて、大好きにならなくても良いから、出来れば食べられるようになって欲しいものもあります。例えば“トマト”。私は、バランスのとれた食事の話をする際に、《副菜》の代表例として、トマトを挙げることがあります。どうしても野菜のおかずは、下処理・調理などの準備がたいへんなために不足がちになってしまいますが、ミニトマトだったら、洗うだけで切ることすら必要ありません。その上、β-カロテンやビタミンC,食物繊維も含まれる優れものですので、朝食などでは特におススメです。
また、レバーは誰でも知っている鉄の宝庫です。鉄と言えば“貧血”とすぐにつながります。そして、貧血と言えば、“女子特有”と思われがちですが、実は運動量が多い、発汗量の多い男子にも貧血はみられます。貧血だと持久力が下がったりするので、ある意味“努力が報われないこと”にもなると思っています。鉄の働きを考えれば分かることですが、私たちの体の中で酸素を全身に運ぶ働きのあるヘモグロビンを構成しているものは鉄とたんぱく質です。その大事な鉄は吸収されにくいものですから、『高たんぱく質・低脂質』で、吸収の良い鉄も多く含まれているレバーは、ぜひ食べられるようになって欲しい代表的な食品です。
結論
では、嫌いな食品とどのように向き合っていけばよいのでしょうか? 一つは『役割』を知ることです。特に、目標がはっきりしている場合は、役割を知ることで、好きにならなくても食べる努力をした選手が何人もいます。私たちの体は、食べたもので作られます。そして、何を食べたかでどんな体になるかも分かっています。これらのことを頭に入れたうえで、ご家族の協力で、少しでも“くせ”をなくした食べやすい調理法で挑戦することです。入っていることが分からないくらいに小さくして、知らないうちに食べる、あるいは食べさせるよりも、ある程度の年齢になったら、食品の持つ意味と自分の好きな競技との関係を知って、“頭で食べられるようになる”ことが大事だと思っています。季節は『食欲の秋』、野菜も、魚も美味しいものがたくさんある季節です。新しい挑戦をしてみると、今まで苦手だったものも美味しく感じられるかもしれませんよ~♪
嫌いなものとの向き合い方は?
『好き嫌い』というとある選手のことを思い出します。「ぼくは、小さいときからにんじんが嫌いだった。そこで、にんじんに似ているものを探してみました。そこで、気が付いたのが、かぼちゃ!『かぼちゃなら大好きで食べられる!』、そして『でも、サッカー選手として好き嫌いをなくしたいから、とにかくにんじんを食べられるように頑張る!』」
その選手は、最終的ににんじんもしっかり食べるようになったという話を聞いたことがありました。嫌いな食品に多く含まれている栄養素を知って、働きを理解したからと言って、もちろんすぐに嫌いなものが食べられるわけではないと思います。ただ、苦手な食品に含まれる栄養素の働きを知っていれば、“代替品”を探して、ゆとりをもって“嫌いな食品退治”が出来るかもしれません。そしてそれは、まさに“頭で食べる”ことの大事さを本人が理解していることの表れだと思いました。周りの大人も『好き嫌いに向き合える力』を育ててみませんか? ちなみに、その選手のお母さまは、本人に頼まれて毎月1~2回違った種類のにんじんメニューを食べなくても作ってあげていたそうです。
スポーツ栄養学 Q&A
全国の中学校で開催した「スポーツ栄養学講座」にて寄せられた質問と、
その回答の一部をご紹介します。
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腸の流れを良くする食事や生活習慣はありますか?
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『腸の流れを良くする』というのが「便秘にならない(腸内環境が整う)」ということなら、乳酸菌などの発酵食品や食物繊維などを含むバランスの良い食事を、ある程度量もしっかり摂ることです。乳酸菌はヨーグルトやチーズのほか、納豆などにも含まれています。
また、生活習慣としては、朝食をしっかり食べることです。朝食をしっかり食べて、トイレを済ませて登校することで、排便のリズムが整います。学校や外のトイレでは落ち着かないと思うので、朝食後にトイレに行く時間を見越して、時間にゆとりを持つことも大事です。 -
宿題が長引いてあまり睡眠時間が取れません。どうしたらもっと寝ることができますか?
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中学生になると科目も増え、勉強の量も増えるので、宿題も大変かと思います。でも、できれば、帰宅してから夕食までの間を宿題に取り組む時間として自分のルールを作ることも大事だと思います。中学生の年代は一生のうちでも大事な成長期ですから、なるべく早く寝ることが重要です。
“いつ”、“何を”するのが有効か、無駄な時間の過ごし方はしていないか?これらをぜひ見直してみて下さい。
栄養学担当者プロフィール
久保田 尚子 先生
順天堂大学等の非常勤講師などを歴任しつつ、スポーツ栄養を中心とした栄養関連業務に従事。
<主な栄養サポート歴>JリーグFC東京((トップから育成年代)栄養アドバイザー、女子ソフトボール日本代表(2004年アテネオリンピック支援帯同)など
<主な雑誌連載>月刊誌『サッカークリニック』《勝つための栄養セミナー》等多数
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