スポーツ栄養学

「脂質は悪者?」
今月の話題:種類も量も、“バランス”と“適量”が大事です

よく『脂質控えめ』とか『無脂肪』というキャッチコピーを目にするように、脂質にはネガティブなイメージが付いてきます。もちろん、減量(ダイエット)が必要な場合は脂質に注目することも大事ですが、脂質は本当に“目の敵”のようにしなくてはならないのでしょうか?

まず、脂質について、簡単に復習してみましょう。
≪資質の主な働き≫
三大栄養素の一つで、1g当たりのエネルギー量は、糖質やたんぱく質の約2倍ある効率的なエネルギー源
②細胞膜やホルモンの材料として欠かせない
③脂溶性ビタミンの吸収や貯蔵に欠かせない
④子どもの場合、成長にも関わる働きのある”必須脂肪酸”は、体内で作ることの出来ないため食品から摂る必要がある

以上のように大事な働きがある脂質がなぜ“悪者扱い”されるようになったのでしょう?
背景には『日本人の食生活の変化⇒脂質摂取量の増加⇒日本人の体質変化』の問題があげられます。

“体質の変化”とは、生活習慣病の一つ『脂質異常症』増加が挙げられます。ただ、最近は脂質の中にも注目されたり関心が寄せられているものもあります。一番身近には、DHA、IPA(EPA)と言われるサバやイワシなどの青魚や鮭に多く含まれている脂肪酸です。
これらの脂肪酸は心疾患のリスクを下げることで注目されたものですが、脳神経に関係する働きもあり成長期の子どもにもとても大事なものです。
これらの脂肪酸は私たちの体内では作れないため、“必須脂肪酸”と呼ばれ、食品から摂らなくてはならないものです。

※DHAのサプリメントやえごま油や亜麻仁油などが注目されていますが、《主菜》のバランスをとるためにも“肉”に偏らず“魚”もしっかり食べる習慣を付けることも大事です。サバ缶の利用などでハードルを下げることにつながります。

結論

脂質と言っても特徴も様々で、脂質は決して悪者ではなく、大事な働きをしっかり意識することが大事です。ただし、脂質は1gあたり9kcalのエネルギー量があるので、摂り過ぎには注意が必要です。
また、脂肪酸の種類によって働きも様々なので、脂質については必要以上に傾倒することも毛嫌いすることもなく、良いと言われるものにだけ偏ることもなくバランスよく摂ることが大事です。

種類も量も、“バランス”と“適量”が大事です

ある高校生の保護者の方から『魚が苦手な息子が、CMなどで魚油のすごさが分かったからと魚の代わりになるサプリメントを買ってきて、薬ではないからと基準量よりかなり多く摂っているけど大丈夫だろうか?』と相談されたことがありました。
結論から言うと、
①必要な栄養素は、原則食事から摂ること ②アレルギーなどの事情で、サプリメントから摂る場合でも、推奨量は守ること ③どんな効果があると言われているものでも、摂ったら摂っただけ効果が増すものはない とお話ししました。
今までもお伝えしたことですが、脂肪酸についても同様で、それぞれの脂肪酸を偏ることなくバランスよく摂ることが大事です。

最近の研究では、サプリメントで摂取したDHAが魚から摂ったDHAと同様の働きをするかは分からない部分もあるという発表もありました。箸の使い方も含め“魚”を食べる習慣も身に付けたいですね。

栄養学担当者プロフィール

久保田 尚子 先生

順天堂大学等の非常勤講師などを歴任しつつ、スポーツ栄養を中心とした栄養関連業務に従事。
<主な栄養サポート歴>JリーグFC東京((トップから育成年代)栄養アドバイザー、女子ソフトボール日本代表(2004年アテネオリンピック支援帯同)など
<主な雑誌連載>月刊誌『サッカークリニック』《勝つための栄養セミナー》等多数

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