スポーツ栄養学
糖質摂取の利点と問題点について
今月の話題:『ごはんは残しても、おかずはしっかり食べる!』は有りですか?!
“糖質”と聞くと『太るのでは?』と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実は糖質は大事なエネルギー源です。
ここでは、皆さまに“糖質”のものすごいパワーを知っていただければ…と思っています。そして、“糖質”と“砂糖”は違うということもお伝えできればと思っています。
少し面倒な話ですが、まずエネルギー源になる3つの栄養素”糖質・たんぱく質・脂質”を『エネルギー産生栄養素』(少し前までは“三大栄養素”と言われていました)と言います。今回はそのなかの“糖質”についてお伝えします。
3つの栄養素のなかでも、最も効果的にエネルギーを産生することが出来るのが、“糖質”です。まず〔炭水化物=糖質+食物繊維〕ということを理解してください。以前は、食物繊維の役割や働きがあまり認知されていなかったので、〔炭水化物≒糖質〕と考えられていた時期もありましたが、現在は食物繊維の働きもしっかり分かってきているので、“エネルギー源として有効なもの”を炭水化物と区別して“糖質”と言います。
もし糖質摂取が少なく、たんぱく質ばかり食べていると、たんぱく質は『からだづくりの材料』という本来の働きではなく、効率の悪いエネルギー源として使われてしまいます。最悪は筋肉の分解すら起こることがあります。また、脂質は1gあたりのエネルギー量は糖質の2倍近くあるのですが、脂質をエネルギー源として利用するためには、その前に“スターターのような役割”をする糖質が欠かせません。つまり、糖質をしっかり摂ることが、たんぱく質や脂質それぞれの働きを助けることにつながります。
一つ注意点ですが、“糖質”と聞いて“甘いもの”と思わないでください。“甘み”を呈するものは、下の表の単糖類と少糖類で、多糖類(ごはんに含まれるでんぷんなど)には、甘味はありません。
また、糖質は消化・吸収されて初めてエネルギーとして働くわけですが、多糖類の場合は消化吸収に時間がかかります。即ち、ゆっくり血糖値が上昇するので、エネルギー源としても長時間働くことができます。
※ごはん糖質で(多糖類のでんぷん)をよく噛むことで最初の消化が始まり、でんぷんが一部麦芽糖に変わり甘みを感じるようになります。つまり、エネルギーとして糖質を摂るためには、“甘い単糖類”ではなく、“甘みを呈しない多糖類”の方が向いていると言えます。ただ、“即効性のエネルギー”としては、ブドウ糖などの単糖類の利用が有効な時もあります。
結論
〔糖質の摂取不足=エネルギー不足〕となるので、糖質の摂取不足は、動けないだけでなく疲労感や集中力の減少につながります。
また、過度の不足では脳のエネルギー不足から意識障害を起こす可能性があるとすら言われています。逆に、摂り過ぎももちろん問題です。運動量が少ない場合や一度に多くの糖質を摂り過ぎた場合などは、エネルギーとして消費しきなかった分が中性脂肪として蓄積され、肥満や生活習慣病の原因となるので注意が必要です。
『ごはんは残しても、おかずはしっかり食べる!』は有りですか?!
『ご飯は残しても、おかずはしっかり食べてね!』とか『おかずの肉がしっかりあれば、ご飯はなくても十分!』と言う声を聞くことがよくあります。また、『成長期には、成長に欠かせない肉をしっかり食べることが大事!』と思っている方も多いと思います。
『糖質は大事なエネルギー源』とお伝えしたように、ごはんやパンなどの《主食》をしっかり摂っていないと、実は成長のためにと思って食べたたんぱく質(肉や魚の主菜)が“からだづくり”に使われず、効率の悪いエネルギー源として使われてしまいます。それほど“糖質はエネルギー源として大事”と言うことです。
私たちは、体を動かすだけでなく、頭を働かせるのにもエネルギーが欠かせないので、改めて《食事バランスガイド》をイメージして食べることを心掛けるようになさって下さい。
※《食事バランスガイド》では、上からしっかり食べたい順番〔主食⇒副菜⇒主菜〕になっており、その体積は食べたい量に比例して描かれているので、“糖質”をいかに多く必要とするかが見てわかるようになっています。
栄養学担当者プロフィール
久保田 尚子 先生
順天堂大学等の非常勤講師などを歴任しつつ、スポーツ栄養を中心とした栄養関連業務に従事。
<主な栄養サポート歴>JリーグFC東京((トップから育成年代)栄養アドバイザー、女子ソフトボール日本代表(2004年アテネオリンピック支援帯同)など
<主な雑誌連載>月刊誌『サッカークリニック』《勝つための栄養セミナー》等多数
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