スポーツ栄養学
「食堂やビュッフェスタイルで何を取る?」
今月の話題:鮭はフライ? それともグリル?
好きなものが好きなだけ選べるビュッフェスタイルの食事は、誰でも大好きですよね。トップ選手の食事もビュッフェスタイルで準備されることが多いです。選手は、ビュッフェスタイルの食事でも “その時の目的”に合わせて、食事の“選び方”を考えているのです。
まず、ビュッフェスタイルの食事会場に行った際に一番守って欲しいことは、美味しそうなものがたくさん並んでいても、“目”ではなく、“頭”で選んで食べて欲しいということです。
そのためには、はじから順番に食べたいものをどんどんお皿にのせていく(⇐“目で選ぶ”)のではなく、
① 何が並んでいるかを一通り見て、
② 出来れば《食事バランスガイド》のコマ※のイメージを浮かべながら、『何を食べようかな?』と考えてからお皿に載せる(⇐“頭で選ぶ”)ようにしましょう。
『ビュッフェでも目的に合わせて食べること』が出来れば、選手としても、大人になっても役に立ちますよ。
※ 食事バランスガイド画像を参照
『たまになら好きなものを、好きなだけ食べてもいいかな?』と思ってしまいがちなほど魅力的なビュッフェスタイル。もちろん『食事は楽しいもの』ですが、いつも何のための食事かを考えておくことは大事なことです。
パーティなど特別な場合のビュッフェなら、美味しいものや好きなものへの片寄りが多少あったとしても、2~3日で調節すればよいことかもしれませんが、合宿や遠征ではそうはいきません。
『食事は練習の総仕上げ!』と考えて、海外遠征なども含めたどんな状況でも、目的を意識した食事が摂れるようにしていきましょう。
『共食(ビュッフェ』の利点とは?
ビュッフェ形式での食事は“選ぶ力”が身についていれば、好きなものを選ぶことが出来るので、『食べることは楽しいこと』にもつながります。食べることが楽しければ、自然と“会話力”も付いてくるのではと思いますし、選手のポジションや年齢などに関係なく話も弾んできます。
外国人選手を見ていると、食事中も食事後もゆったりとチームメイトとおしゃべりをしていることが多く『外国人の食事に対する姿勢』がとても勉強になることがあります。
選手にとって『食べることも練習と同じくらい大事』ですが、ビュッフェ形式では“(量も中身も)食事を選べる力”がついていれば、『チームメイト皆同じようにしっかり食べること(残せない)が課せられている環境』でも“楽しく食べること”につながるのではないかと思います。
結論
ビュッフェスタイルの食事でも、『食べたものがエネルギーの素』『食べたもので身体は作られる』ことは基本中の基本です。
楽しいビュッフェスタイルで食事をとる時も、頭の中で《食事バランスガイド》が浮かべられると良いですね。
鮭はフライ? それともグリル?
鮭は、良質のたんぱく質源であるだけでなく、ビタミンB群、良質の脂質(DHAやEPA)、アスタキサンチン(鮭特有の赤色成分で強力な抗酸化作用があります)も含まれている食品で、アスリートには特におすすめの魚類です。
以前、こんな場面に出くわしたことがありました。あるチームの食事会場に冷凍食品の鮭フライが用意されていたことがありました。それは、鮭がアスリートにとって優れた食品だからこその作り手の気遣いだったのですが、選手からは『このフライだったら、そのままグリルしただけの鮭を食べたかった』という声が聞こえてきました。
鮭をフライにすると(冷凍食品の鮭フライだと)見た目に比べて鮭の正味量はかなり少なめになります。それらを理解したうえで、『鮭は、そのまま焼いて食べたい』という感想がその選手の意識の高さを表しているととても嬉しく思いました。
今月のテーマの『ビュッフェでの食事の選び方』でお伝えしたことと重なりますが、『自分にとって何を食べるのが一番良いのか?』をいつも考えていられる“ビュッフェでも頭で選べる大人(選手)”になって欲しいと改めて思いました。
栄養学担当者プロフィール
久保田 尚子 先生
順天堂大学等の非常勤講師などを歴任しつつ、スポーツ栄養を中心とした栄養関連業務に従事。
<主な栄養サポート歴>JリーグFC東京((トップから育成年代)栄養アドバイザー、女子ソフトボール日本代表(2004年アテネオリンピック支援帯同)など
<主な雑誌連載>月刊誌『サッカークリニック』《勝つための栄養セミナー》等多数
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