スポーツ栄養学

「発酵食品のパワーを借りて」
今月の話題:やはり『練習の総仕上げは食事です!?』

“発酵食品”ということばが、ここ数年かなり注目されています。確かに“発酵食品”は腸内環境を整えたり…とアスリートに限らず健康な生活のためには誰にでも良いものです。では、改めて“発酵食品”って何なのか?を考えてみましょう。

発酵食品とは、微生物の働きによってつくられる食べ物のことです。
“発酵”のキーワードになるび生物ですが、実は2つに大別出来ます。
①悪玉菌腐敗(ふはい)菌(食べ物を腐らせる)、ウェルシュ菌大腸菌など】…腸内で増えることにより有害物質が増え、免疫力が下がったり、便秘になったり、生活習慣病の要素が増えたりすると言われ、人間にとって悪い影響を与えることが多い。
②善玉菌乳酸菌ビフィズス菌など】…消化・吸収を助けたり、便秘や下痢を防ぐ効果があり、悪玉菌と反対で免疫力を高めたり、病原菌の活動を抑えたりして、人間にとって役に立つことが多い

出来れば悪玉菌を取り除いて善玉菌が多い体内環境を整えたいと思うのですが、残念なことに悪玉菌だけを体内から取り除くことは難しいと言われています。ただ、体の中の善玉菌をより多くするために腸内環境を整えることは、少しの心がけで出来るようです。日頃、どんなものを食べているか?のほか、トイレ習慣やストレスなど様々な生活習慣が腸内環境に大きくかかわっていると言われています。

出典元:ダノン健康栄養財団食育冊子「ごはんだもん!げんきだもん!」より

腸内環境を整えたい=善玉菌を増やしたい ⇒ そんなときに大きな役割を果たすのが“発酵食品”です。
幸い日本では、日本独自の発酵食品の他に世界中の“発酵食品”が手に入りやすいので、意識して“発酵食品”を食べるようにしたいものですね。
ちなみに私たちが日頃口にする“発酵食品”は、ヨーグルトチーズ納豆味噌・しょうゆがすぐ頭に浮かびますが、ぬか漬けや今はやりの塩麹甘酒お酢なども発酵食品の仲間です。
また、乳酸菌のえさになるオリゴ糖※、善玉菌を増やすと言われている食物繊維などを摂ることも大事です。
(※オリゴ糖…単糖(ブドウ糖や果糖)が3から10個程度結合したもので、低消化性、低う蝕性、整腸作用、ミネラルの吸収促進などの特徴が言われています。また、オリゴ糖にも種類がありますが、多くのオリゴ糖はビフィズス菌の増殖に係わる働きが言われています。)

結論

選手は“ドーピング”などの心配から、薬は極力控える傾向があります。そこで、いろいろな発酵食品を日常的に食べることは、腸内環境を整え健康につながるので、おススメな食習慣だと言えます。
ただ何にでも言えることですが、一度にたくさんの“発酵食品”を食べたから、その後数日は意識しないでも健康!という訳ではありません。私たちの身体の”長い目で見た健康”のための一つの手段として、“発酵食品”も意識して摂るようにしたいですね。

やはり『練習の総仕上げは食事です!?』

まだ記憶に新しい平昌五輪ですが、メダルとともに様々な感動を多くの方が共有されたのではないでしょうか?
オリンピック中継やニュースを見ていると、その背景に“食事”がかかわっていたことがいくつもありました。
男子フィギュアスケートで金メダルに輝いた羽生結弦選手が、ショートプログラムを終え翌日にフリーを控えた取材で『今日できることは、これからご飯をいっぱい食べて、しっかり寝て、明日につなげる』と話していました。
また、女子カーリングでは、第5エンド終了時のハーフタイムに、“もぐもぐタイム”と称してミーティングをしながら“補食”を摂っている様子が放映され話題になっていました。その“もぐもぐタイム”について、競技団体の方が「何でもよいわけではなく、消化吸収時間を考え、チームの栄養士と相談して選んでいる」とコメントされていたことも印象的でした。
『食べたものがエネルギーの素、食べたものが体の材料』とよくお伝えしていますが、今回もまさに“食べたものがエネルギー源”、“食事が練習の総仕上げ”を実感する平昌五輪となりました。
今回の五輪中継などから知ることが出来たオリンピアンやメダリストの食事に対する考え方は、決してトップアスリートだけに当てはまることではなく、だれにでも当てはまることだということを再認識し、ご自身にも少しでも利用できそうなことを取り入れていただけると良いと思います。

栄養学担当者プロフィール

久保田 尚子 先生

順天堂大学等の非常勤講師などを歴任しつつ、スポーツ栄養を中心とした栄養関連業務に従事。
<主な栄養サポート歴>JリーグFC東京((トップから育成年代)栄養アドバイザー、女子ソフトボール日本代表(2004年アテネオリンピック支援帯同)など
<主な雑誌連載>月刊誌『サッカークリニック』《勝つための栄養セミナー》等多数

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