スポーツ栄養学
「アスリートのからだ作りに成長ホルモンを上手く活用する」
今月の話題:必要な栄養素は食事から
アスリート⇒からだ作り⇒筋トレ+プロテイン…という流れを想像される方もいらっしゃるかと思いますが、もちろん“アスリート”にとってはそれもあります。ただ、ここではあくまでも“ジュニアアスリート”限定で考えていきたいと思います。
アスリートにとって、身体づくりの目的は何だと思われますか?
もちろんトレーニング効果で『6パック(割れた腹筋)』も大きな魅力かもしれませんが、からだ作りの目的は、
① けが予防
② エネルギーをたくさん蓄えて、タフに戦えるようになること です。
そう考えると、成長期のアスリートにとっても、“からだ作り”はとても大事なことです。
また、からだ作りと切っても切れないものに“成長ホルモン”があります。
成長ホルモンは成長に欠かせないものですが、その分泌に実は“生活習慣”が大きく関わります。
成長ホルモンの分泌タイミングは、以下の2つと言われています。
① 筋肉トレーニングのような強度の高い運動直後
② 就寝中
そのなかで、ジュニアアスリートにとって大事な二つ目のタイミングの“就寝中”について考えていきたいと思います。
就寝時の成長ホルモンの分泌に一番大事なこと = 『熟睡している』こと
そのためには、出来れば夕食後2~3時間くらいは空けて、消化が終了してから就寝することです。
とはいえ、練習や塾などで帰宅が遅くなれば、夕食後2~3時間を空けての就寝は難しくなることもあります。
そんな時には以下の方法など”食”に注意を払いましょう
☆夕食を2回に分けて食べる『分食』※
※『分食』…夕食を2回に分けて食べること。最初の夕食は、練習前に“エネルギー源になるもの”を中心に食べ、練習後は就寝中に分泌される成長ホルモンの分泌に合わせて、血中アミノ酸濃度を高めるためにたんぱく資源になる“おかず”を食べます。ただ、“おかず”はとかく脂質が多くなりがちなので、就寝までの時間を考えて、脂質控えめで消化に時間のかからない材料や調理法を選びましょう。
☆夕食メニューを消化時間が比較的短い『脂質控えめメニュー』にする
そうすることで、 早く寝る≒熟睡しやすい≒成長ホルモンの分泌促進 につながります。
また、夕食後から就寝するまでの時間が空けば、食べたものも消化でき、翌朝の起床時の食欲にも良い影響があります。
結論
『からだ作り』は年齢を問わず、アスリートの関心ごとです。とは言え、特にジュニアアスリートの場合は『からだ作り』のみに注目するのではなく、“一生の宝になる正しい生活習慣・食習慣”を身につけることを意識することが大事です。
必要な栄養素は食事から
筋トレということで、今回は最初に“プロテイン”という言葉が出ていましたし、最近は小中学生用のプロテインとか、背が伸びることをうたったサプリメントなども見かけます。何かの事情(アレルギーや海外遠征など)で、食品からだけでは必要な栄養素が摂れない場合はさておき、『必要な栄養素は食事から』というのが基本的な考え方です。
大人の競技者の場合は、“タイミング”などを考えてサプリメントを利用することもありますが、食習慣が身に付く大事な成長期には食品の選び方も含めて、『食事の自己管理・食の自立』が出来るようになることを目標に心がけたいですね。ちなみに、IOCスポーツ栄養コンセンサス(2010)でも『若いアスリートにはサプリメントはすすめないようにし、健康な体組成を維持しながら成長できるように栄養素の豊富な食品をよく考えて選ぶことを意識させるようにする』とあります。
栄養学担当者プロフィール
久保田 尚子 先生
順天堂大学等の非常勤講師などを歴任しつつ、スポーツ栄養を中心とした栄養関連業務に従事。
<主な栄養サポート歴>JリーグFC東京((トップから育成年代)栄養アドバイザー、女子ソフトボール日本代表(2004年アテネオリンピック支援帯同)など
<主な雑誌連載>月刊誌『サッカークリニック』《勝つための栄養セミナー》等多数
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