スポーツ食育インタビュー
卓球 JOCエリートアカデミー所属
長崎 美柚 選手
託された「希望」。そのために私は頑張る!
「卓球漬けの毎日ですが、どのようにリラックスしていますか?」
「ほとんど味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)の施設内にいるので、外の空気を吸ってリフレッシュしています。」
「落ち込んだり、スランプになったりしたとき、どのように気持ちを切りかえていますか?」
「外に出ることです。意外とあとに引きずるタイプなので、練習場にずっといるときつい時は外に出て気をまぎらわせることもあります。ゆっくりと時間をかけて元の調子にもどしていきます。」
「小学校時代は、各世代のカテゴリ(バンビ:小2以下、カブ:小4以下、ホープ:小6以下)で優勝し、福原愛さんが達成して以来15年ぶりの快挙でしたが、相当努力された結果ですね。」
「周りの多くの方々に協力していただいたお陰です。」
「『チーム美柚』ですね。」
「はい。小さいころから練習の毎日で一日も休みがありませんでした。それでも、コーチが飽きないように遊びを加えたり練習メニューを工夫してくれたり、集中できる環境を常に考えくれました。友達といるよりコーチといる時間の方が長いですね。でも、そのお陰でこれまで続けてこられましたし、結果が出たのだと思っています。結果が出ると『卓球をやっていて良かったな』と実感しますね。」
「長崎選手は周りの方々に恵まれましたね。」
「本当にそう思います。特に、小学校時代のコーチ(村守ひとみ氏)には大変お世話になりました。今は離れてしまっているんですが、たまに合うと『試合見たよ』『頑張っているね』と声をかけていただいて、とても励みになります。生活面でも練習面でも叱ってもらえましたし、厳しく指導していただきました。なかなか叱ってくれる方もいないので有難いです。すべての希望を託(たく)されているので、もっと頑張らなければいけません。」
「まだ16歳ですよね!?とても立派な考え方ですね。長崎選手の人柄がよく分かります。村守コーチは練習の送り迎えもされたとか。お子さんが卓球選手だそうで、教える側と教えられる側の気持ちが理解できたから、長崎選手にとって、とてもいい指導になったんでしょうね。」
「村守コーチの指導があったので、今の自分があると思っています。強くなっても変わらず、ありがとうとごめんなさいをちゃんと言えるように、など、小さいころからしつけの面でも教わってきました。
あと、祖父と祖母は卓球を始めるきっかけを与えてくれたので、今はとても感謝しています。始めた当時はバレーボールがしたかったので本当にイヤで言うことも聞かなかったのですが(笑)、離れた今になって分かることもありますね。母も小さい自分を独りで外に出すのは心配な思いもあったのではと思いますが、行かせてくれてありがたく思っています。直接言葉とかかけないタイプですが、背中を押してもらって気持ちは伝わっています。」
パワーを活かした「チキータ」が私の武器
「長崎選手にとって『これだけは絶対に負けない!』という点、自信があるところはどこでしょうか?」
「技術の面だと、チキータ※と言う技が得意です。威力のあるバックハンドは女子にできる選手が少ないので、それを武器にしています。人がやらないことをやるのが好きで、小さいころから人の真似や人と同じことをするのが好きではなく、逆に人ができないことをやってやろうという気持ちが強かったです。人と同じようにひたすら卓球の練習をするだけじゃなく、遊びながらとか、例えば1球ごとにラケットの角度を変えて打ってみたり、思いついた打ち方をしてみたり、試行錯誤をしてきました。できた時はそれがすごいこととは思っていなくて、周りの方に言われて『これは自分の武器になるかもしれない』って気づかされた感じです。」
※チキータ・・・手首の反動を利用してバックハンドで強く回転をかけて返球する技のこと。ボールを打つ際に強烈なサイドスピンがかかるため相手が返球しにくくなる。
「本当は右利きなのに左でも打てるようにされたんですよね」
「はい、やっぱり卓球は左利きの方が選手の数も少なく有利なので。小さい時に意識して左利きにしたら、無意識に全部左でやるようになりました。最近は両方使えるように箸を右で持ったり使い分けるようにして、両方できるようになりました。
「体格(164cm)にも恵まれていますね。」
「小さいころから背は大きくて、背の順ではいつも一番後ろでした。」
「背が大きいことで試合に有利に働くことを教えてください。」
「リーチの点で少しは有利かもしれません。ただ、小さい方が素早く動けて楽なのかなとも思います。自分は女子選手には少ないパワー型で、回転とかのテクニック、打球の速さ、強烈な球のスピンなどで勝負しています。」
「パワーを生かすためにどんなトレーニングをしていますか?」
「卓球を始めた時から『速い球を打ちたい』という意識でやっていたので、もともとパワーはあったと思います。もっと速い球を打ちたくてウェイトトレーニングや基礎トレーニングをトレーナーに教わってやっているので、少しは良くなっているかなと思っています。」
「上半身だけでなく、下半身の強さも強化しなければいけませんね。」
「トレーニングは結構好きなんですが、しんどいのがわかっているからトレーニング室に行くまでの足取りは重いですね。やり始めればトコトンやるので、モチベーションを高めるまで時間はかかります。」
「パワー型が多い海外の選手と比べて、どの点が優れていると思いますか?」
「球の質(回転)では負けていないと思います。反対に、技術や読みはまだまだ。海外の選手の良いところを吸収していきたいですね。自分で意識して、きちんと理解して練習をしていけば、技術の向上に結びつくと考えています」
「周囲の選手は皆ライバルですが、普段はどんな雰囲気なんですか?」
「練習中や試合・大会では一切話さないのですが、それが終われば普通に仲良く、卓球以外の流行のことやくだらない話など色々しています。一緒に世界を目指す仲間、友達として頑張ろうって言って、同じ年代が多いので良い意味で励みになっています。先輩からも気さくにしてもらって、厳しい中でも良い雰囲気でやっています。」
2020年東京五輪、狭き門への挑戦
「ここ数年で卓球の人気がとても高まってきて、注目をあびることも多くなっていますが、環境の変化を感じられますか?」
「そうですね。日本人選手が世界大会でもメダルが取れるようになってきました。将来私の活躍を見て自分も頑張ろうと思ってもらったり、卓球をする人が増えてくれたら嬉しいです。みなさんに『勇気』を与えられるような選手になれるように頑張ります!」
「2020年東京五輪まであと2年を切りました。当然、出場を狙っていると思いますが、思いを聞かせてください。」
「10代女子選手の層はとても厚いですし、代表枠も3つしかありません。出場するにはこれからのワールドツアーの一戦一戦が大切になってきますので、1試合でも多く勝ちたいです。そして出場できたら最高ですし、もし出場できたら金メダルを取りたいですね。今は努力を続けて少しずつ上に上がっていければと思っています。」
「まだお若いですが、たくさん努力をして将来の卓球界を背負って立つ注目選手の一人になりました。背中を見て卓球をする選手も増えてきます。最後に、これからの選手に対してメッセージをお願いします。」
「何より楽しむことが大事。楽しむことができれば、しんどいことも耐えられて長く続けられると思います。続けていくとどんどん強くなりたいという気持ちも出てくると思います。」
「ありがとうございました。これからの活躍に期待しています。」
取材日:2018年7月30日
選手&チームのご紹介
長崎 美柚(みゆう)選手
JOCエリートアカデミー所属。左シェーク攻撃型。神奈川県海老名市出身。2010年(小2)全日本卓球選手権大会バンビ女子シングルス優勝。2012年(小4)カブ女子シングルス、2014年(小6)ホープス女子シングルスも制覇。女子ホープス・カブ・バンビの三冠を制覇したのは潮崎由香(1993年)、福原愛(1999年)に次いで3人目。長崎選手の翌年に達成した木原美悠選手を含め大会史上4人のみ。
2014年第24回東アジアホープス卓球選手権日本代表として女子シングルスで優勝。2015年イタリアジュニア&カデットオープン大会カデット女子シングルスで優勝。
2015年4月JOCエリートアカデミーへ入校。2016年(中学2年)全国中学校卓球大会女子シングルスで優勝。2018年(中学3年)1月全日本卓球選手権大会ジュニア女子シングルスで優勝。
2018年第54回世界卓球選手権団体戦(スウェーデン・ハルムスタッド)日本代表に選出(高校1年)。
世界ランキング37位(2018.12現在)。身長160cmを超える恵まれた体格と、長いリーチを活かした両ハンド攻撃で順調に好成績を重ねている。