スポーツ食育インタビュー

今回は、女子卓球の長崎美柚(ながさきみゆう)選手をおむかえし、幼少期から現在にいたるまでのお話をうかがいました。長崎選手は、恵まれた体格と長いリーチを活かした両ハンド攻撃で、攻撃的なチキータなどボールの威力・技術共にNO.1と期待されている活躍中の高校1年生。選手としての身体づくり、強さの秘訣はどこにあるのでしょうか?

5歳で始めた卓球。負けず嫌いで勝つことへの執着が強かった

「小さいころはどんなお子さんでしたか?」

「何事にも負けずぎらいで、気が強くて、何でも1番になりたいと思っていました。練習は嫌いなんですが、試合では負けたくないと思っていました。それは今でも変わりません。」

「5歳のころから卓球を始めたそうですね。きっかけは何だったんですか?」

「(神奈川大学卓球部元監督の)祖父の影響で始めました。最初はバレーボールをやっていたのですが、毎日“無理やり”卓球の練習をさせられていました(笑)。当初はあまり楽しくありませんでしたが、的(まと)にサーブを当てるとお菓子がもらえたので、それにつられてやっていました。それでいて試合では優勝したいから、優勝するために練習をしていたようなもので、負けると泣いていました。勝つことへの執着は昔から強かったんです(笑)。」

「勝ちたいがために卓球を続けていたのだから、当時からすでにアスリート魂のようなものが宿っていた感じですね。」

厳しい食卓マナー、バランスの良い食事が逸材を作り上げた!?

「小さいころの食生活を教えてください。どんな物が好きでしたか?」

「わが家では主菜、副菜などもきちんと出てきて、バランスのいい食事がとれていたと思います。」

「お母様もスポーツ(バレーボール)をやっていらしたそうですね。卓球を頑張る長崎選手に対して、自然とアスリートに必要な食事を作っていらしたのでしょう。」

「食卓でのルールはありましたか?」

「必ず正座をするように言われました。あと、食器を持って食べたり、テーブルにヒジを付いてはいけないなど、食事のマナーやルールはとにかく厳しかったです。その習慣は今も続いています。」

「食事のルールやマナーについて、最近は昔ほど言われなくなってきましたが、長崎選手はご家庭でしっかりと教えられたのですね。」

「食べ物の好き嫌いはありますか?」

「セロリとかモロヘイヤとか、クセのある食べ物が苦手です。他の野菜は食べられます。好きなものは白飯で、ごはんが大好きです!」

「白飯が好きで、たくさん食べられるということは、アスリートの理想なんですよ。ごはんに含まれる炭水化物は、体を動かしたり、脳を働かせる大事なエネルギー源です。もちろん、ごはんでなくても、パンでもパスタでも構わないのですが、私はご飯がおススメです。」

ひさこ先生の栄養アドバイス

ごはんの優れた点
➀どんなおかずにも合う⇒これは例えば試合前などで“脂質控えめ”のときなどに助かります。その時の目的に合わせて最適なおかずが選べます。
②“ごはん=米+水”⇒これは当たり前のように見えますが、実はすごいことです。ごはんは“米”だけを食べますが、パンの場合は、小麦粉だけではなく、目に見えないもの(パンの種類にもよりますが、バター・卵・牛乳・砂糖など)を含めて食べることになります。もちろん、牛乳も卵もバターも大事な食品ですが、自分で意識して摂るのと知らないうちに摂ってしまうことは違います。
③ごはんは“粒状”なのでよく噛む必要が出てきます。そのため、必然的に噛む力を高めることにつながります。『噛む力≒かみしめる力』はアスリートにとってパフォーマンスに大きな差が出ます。また、消化時間が長く腹もちが良いため、間食の予防、肥満の予防にも効果があると言われています。

「白飯だけで何杯でも食べられます。何かふりかけたりしなくても、お米って甘みがある感じがして、ごはんをそのまま食べるのが一番好きです。」

「ごはんが甘いと感じるのは、しっかり噛(か)んで食べている証拠。すごいと思います。“噛むこと”は誰にでも大切です。」

ひさこ先生の栄養アドバイス

“噛むことの大切さ”について
公益財団法人8020推進財団(現在の厚生労働省と日本歯科医師会)が平成12年(2000年)から※『ひみこの歯がいーぜ』という標語を使って“噛むこと”の大事さを伝えていることからも分かります。“一口で30回噛む”など普段の生活でも“やわららかいもの”ばかりにかたよらずに、噛むことも意識しましょう。
※出典『ひみこの歯がいーぜ』…https://www.8020zaidan.or.jp/himiko/index.html

「ごはんが進むおかずはなんですか?」

「餃子(ぎょうざ)です!(笑)」

「餃子はご飯もすすみますし、餃子の皮も炭水化物です。また、豚肉は肉の中でもビタミンB1が多いので、炭水化物からのエネルギーづくりにも効果があります。」

「卓球の技術が上がってきて海外遠征も多くなってきていますが、現地の食事で困ることなどありますか?」

「海外で食べづらい野菜が出ても食べられるように、日本からいつもドレッシングを持参しています。鮮度の悪いフルーツや、滅多にはありませんが全然食べられないものしかないことも想定して食べ物も準備していくので、荷物が多くなっちゃうんです。」

「小学校から段々練習時間が増えていったと思いますが、どのような生活サイクルでしたか?」

「学校から練習場まで結構距離があったので、下校時にコーチに車でむかえに来てもらい、そのまま練習場へ連れて行ってもらっていました。小学校のころから一日も休むことなく練習をしてきましたが、帰宅するとすぐに温かい食事が出てきました。だいたい学校が15時半に終わって、それから21時半くらいまで練習しますので、腹ごしらえのために持参したものを食べたり、補食をとったりしていました。」

「学校との両立が大変ですね。」

「大変で、何回もやめたいと思いましたが、やっぱり周りの人のことを思うとやめられなかったですね。」

取材日:2018年7月30日

選手&チームのご紹介

長崎 美柚(みゆう)選手

JOCエリートアカデミー所属。左シェーク攻撃型。神奈川県海老名市出身。
2010年(小2)全日本卓球選手権大会バンビ女子シングルス優勝。2012年(小4)カブ女子シングルス、2014年(小6)ホープス女子シングルスも制覇。女子ホープス・カブ・バンビの三冠を制覇したのは潮崎由香(1993年)、福原愛(2000年)に次いで3人目。長崎選手の翌年に達成した木原美悠選手を含め大会史上4人のみ。
2014年第24回東アジアホープス卓球選手権日本代表として女子シングルスで優勝。2015年イタリアジュニア&カデットオープン大会カデット女子シングルスで優勝。
2015年4月JOCエリートアカデミーへ入校。2016年(中学2年)全国中学校卓球大会女子シングルスで優勝。2018年(中学3年)1月全日本卓球選手権大会ジュニア女子シングルスで優勝。
2018年第54回世界卓球選手権団体戦(スウェーデン・ハルムスタッド)日本代表に選出(高校1年)。
世界ランキング39位(2018.10現在)。身長160cmを超える恵まれた体格と、長いリーチを活かした両ハンド攻撃で順調に好成績を重ねている。