スポーツ食育インタビュー

2014年には日本代表に選出されるなど、活躍を続ける小林選手の秘密は、食への高い意識と、自分に合ったトレーニングでした。小林選手の食とサッカーにかける思いをお届けします!

オフの日だって、朝食はしっかり食べます!

「お肉類はお好きですか?」

「お肉も好きですが、高いお肉は苦手なんです(笑)。脂の多い、霜(しも)降りとか、かんで溶けちゃうようなのは、本当にダメで。以前、中村憲剛さんに美味しい焼肉屋さんに連れて行ってもらったんですけど、僕があんまり肉を食べずにチャプチェとかを食べてたら、『なんだよそれ! お前、連れてき甲斐(がい)が無いな~』って言われました。上ハラミとか上カルビとかを頼もうとすると、『僕は安いのでいいんで、普通のカルビお願いします』って言ったり。脂が多いのはちょっと苦手です。胃もたれするし、気持ち悪くなっちゃう。味もかみ応えある方が、美味しいと思いますね。」

「お魚は食べますか?」

「お魚、大好きです。毎日夕食には、肉と魚が絶対出るんです。朝も食べてます。焼き鮭、ごはん、お味噌汁、卵焼きとか、そしてフルーツヨーグルト。オフの日だからといって、朝食を食べないのは、考えられない。お腹が空いて起きちゃうくらいです。結構、健康的。みんなには、おじいちゃんみたいとか言われるんですけど(笑)。」

「お肉も霜降りよりも赤身の方が好き!と言われるのは、価格の問題ではなく、お肉そのもののおいしさを知っていらっしゃるからとも言えますし、それはアスリートにとってはとても“良い嗜好”(≒良い食習慣)です。“良い習慣”は何にでも大事なことですが、朝食についても言えます。
例えば、最初は朝食を食べないとおなかがすいて気持ちが悪くなってしまっていたような人が、だんだん朝食欠食になれて、そのうちに朝食を食べた時の方が体調が良くないとか、食べるくらいなら寝ていた方が良いとか・・・習慣が変わってきます。自分の身体を大事に考えるアスリートには朝食欠食なんて、あり得ないですよね?!」

「絶対、ありえないです。みんなオフの日は昼まで寝ていたりするらしいけど、僕は絶対起きちゃうし、食べないと始まらないんで、食べるようにしてます。朝ごはんを食べずに、お腹空かないんですかね? 慣れちゃうのかな。」

「乳製品は食べますか?」

「もちろん、大好きです。ヨーグルトは大好きで、毎朝ヨーグルトは欠かせないですね。小さいころから食べてます。牛乳よりもヨーグルト。牛乳は好きなんですけど、ちょっとお腹がゆるくなっちゃうんで。チーズも好き。高校の時は、チーズをよく食べました。」

「ヨーグルトはどんな風に食べていますか?」

「フルーツ、バナナ、りんご、キウイとかフルーツ入れて。いちごヨーグルトとか、低脂肪タイプのものも時々食べます。」

試合の前日にはバナナヨーグルト。朝食には“ネバネバ”食材

「サッカーをプレイするのには相当なスタミナが必要ですが、普段意識して食べているものはありますか?」

「試合に向けて徐々にグリコーゲンローディング(スポーツ時の体内エネルギー源であるグリコーゲンを十分に貯蔵しておくための特殊な食べ方)で炭水化物を増やしていくなど、完璧ではありませんが少し意識してます。あと、毎日何かしらネバネバしたものは食べてます。納豆、めかぶ、オクラ。そういうのは絶対メニューに入ってますね。本当に毎日色々なものをバランス良く出してくれるので、同じものはないかもしれないです。メインがあって、ごはんとお味噌汁。」

「試合のために、意識して食べるものはありますか?」

「妻が持っている管理栄養士向けの本に、脚がつらないようにするためには前日の夜にバナナヨーグルト食べるといい、と書いてあったので、バナナヨーグルトは絶対食べますね。そしてなるべく水分を多く摂(と)るようには心がけてます。」

「大正解です!足がつるのは様々な原因が言われていますが、その一つがミネラルバランスの崩れです。バナナにはカリウムが、ヨーグルトにはカルシウムが多く含まれていますが、それらのミネラルは筋肉の収縮に関係する大事なものです。
また、ヨーグルトは90%近くが水分ですので、おなかのタブタブ感もなく、水分もチャージできます。
さらに余談ですが、就寝前にたんぱく質やカルシウムを多く含む食品を摂ると熟睡中に分泌される成長ホルモンの有効利用にもつながりますよね。」

「いや、本に書いてあったんで(笑)。関節が痛い時はコラーゲンの多い牛すじだったり、筋力アップしたい時にたんぱく質を多くしてもらったりとか、リクエストしています。ほかにも、油をなるべく使わないように、お肉の脂身もなるべく切り取ってくれます。軽食とかも、本当はお菓子とか甘いものが大好きなんですが、なるべくフルーツで摂るようにしています。」

「サッカーを続けるために、我慢(がまん)をしているのですか?」

「我慢できます。引退したらいくらでも食べられるし。でもストレスになるのはイヤなので、オフの日だけ甘いものを少し食べたりしますよ。でも現場では、なるべく我慢します。」

「海外遠征など、現地の食事はいかがですか?」

「今は日本食っぽいものを出してくれたり、ホテルが気を使ってくれて、そう苦労しません。それに、色々なものを食べてみたい好奇心もあるので。」

「現地の料理や食材に、チャレンジする方ですか?」

「します。結構失敗することもあります(笑)。」

もっと「負けず嫌い」な気持ちを持って

「当たりが強くてもタフにプレイされると評判ですが、訓練の賜物(たまもの)なんでしょうね。」

「水戸にいた時、細いから筋肉をつけようとして失敗し、3kgぐらい筋肉が落ちてしまったんです。そうしたら、全然動けなくなって、キレも全然なくなった。その時に失敗したから、今はベストな体重になれたし、自分の一番いい状態を知ることができました。
キレがあると、相手にぶつかられずに先に行けたり、先に仕掛けたりできます。大きければいいってわけじゃなく、それぞれ自分のプレースタイルでいい。体重や筋肉なども関係あると思うので、それは自分で見つけていくといいと思います。」

「一般論ではなく、自分でカスタマイズしながらの練習方法が大事ですね。」

「はい、すごく大事だと思います。以前も体が細かったんで、フィジカルトレーナーに筋トレをもっとやれと言われ、飯もすごい食べさせられた。その結果筋肉はついたけれど、重りを持ってるような感じで、自分のプレーが全くできなくなったんです。それで1回体重を戻して、器具を使った筋トレをやめて、体幹を鍛えたりすることによって体のキレがまた戻って、体重も戻りました。
毎日体重計に乗りますが、ちょっと食べすぎたら戻したり、ちょっと少なかったら食べるように常に心がけてます。そうやっているうちに、体重計に乗らなくても、自分の体重が大体わかってくるようになってきました。」

「体脂肪率も気にしていらっしゃいますか?」

「していますね。でも機械との相性があって、すごい多く出ちゃうこともあるので、判断は気を付けています。数字だけを気にするのではなく、体のキレやコンディションは自分が一番良くわかるので、体に語りかけながらやっています。」

「スランプ時期の乗り越え方はありますか?」

「現状をどうしたらいいか、自分で考えるのが一番大事だと思います。たとえば、ぶつかったら飛ばされるという状態のとき、どうやったらぶつからないようにボールをもらうとかといった逃げる方法ではなく、なるべく相手に接触しないように動くのか、などできることを考える。考えないと試合に出られなくなるほどだったので、落ち込むくらいなら、今やれることは何があるだろうって探しました。性格がすごいポジティブなんで。」

「オンとオフみたいなのはあるんですか? ずっと頑張ってばかりだと大変では?」

「全然、全然。普段はフワッとしてるってよく言われます(笑)。普段は穏やかで、サッカーになると人が変わる。」

「Jリーガーは千数百人※しかいないですものね。サッカー人口の頂点だから、本来の性格は穏やかで、サッカーに対してのみ燃える方が多いのかもしれませんね。」
※2015年7月5日時点で、現役Jリーグ選手数1,372名

「今、若い選手に負けず嫌いな人が少ないな、と感じています。昔の選手とかはもっとすごかった。僕は今6年目ですが、『負けてるのに何でそんなに普通でいられるの?』 って感じる事があります。自分は小さいころからずっと負けず嫌いできましたが、ゆとり世代っていうことが関係あるのかな。若い選手は、もっと『絶対負けない』っていう気持ちを出してほしいと思います。」

毎試合応援してくれた母に、少しずつ親孝行したい

「お母様は食事だけでなく、応援など色々なサポートをしてきたと思いますが、どのような印象をお持ちですか?」

「僕は小さいころからお母さん子で、今でもそうですけど、母は毎試合、絶対観に来るんです。ゴール決めると母がキャーキャー喜んでました。母にピースすると、母もピースを返すという親子関係。でも思春期になるともう恥ずかしくなって、やらなくなる。母が『何でピースしてくれないの』って言うんですが、無理だよって(笑)。でも、やっぱり毎試合来てくれる事には感謝しています。スパイクも高いものを常に買ってくれましたし、僕のチームは遠征が多くて、費用の負担もあったので、本当にたくさん迷惑かけました。今プロになっても毎試合応援に来てもらっていますが、プロ選手としてプレーするのを見てもらい、少しずつ親孝行じゃないですけど、返していけるといいなと思ってます。」

「お母様から、サッカーについてアドバイスなどありましたか?」

「母は本当にうるさくて、すごく言ってきました(笑)。思春期の一時期それがもう嫌で。でも母がガミガミ言うと、父がフォローする、アメとムチのバランスが良かったです。高校ぐらいから、毎試合応援に来ても前ほどキャーキャー言わなくなり、陰からそっと見るようになって、すごく嬉しかったですね。」

「親御さんの方が熱が入る応援というのは、結構多いようですね。」

「多いですね。すごいうるさかったですね、お母さんたち。『行け、行け』って感じで(笑)。子どもたちは確かに大変でしたが、本気になって応援してくれて、ダメな事はダメって言ってくれた方がいいと思いますね。その時は嫌でしたけど、大人になると、それほど応援してくれてたんだなと思いますし。あんまり冷めてるよりも、熱く応援してくれた方がいいかな、僕は。」

「大人なご意見ですね。では、ジュニア世代のスポーツ少年少女に、アドバイスをいただけますか?」

「食事の面では好き嫌いなく食べることが一番だと思いますし、スポーツ、サッカーに限らず、負けず嫌いになってほしいなって思います。自分の好きな事だったら、負けたくないって気持ちがあってほしい。ライバルだけでなく、自分の中にも敵はたくさんいると思うんです。
僕は子どものころ、おやつを食べ過ぎていて、今後悔してるところがかなりある。出来ればしっかり栄養バランスの取れた食事を摂って、必要な時に全力で熱中してほしいなと思います。」

「サッカーの面白さを教えてください。」

「やっぱり一番は、チームプレイだというところ。自分がどれだけ頑張っても、結果が出ない時もありますし、自分がダメな時でもチームメイトが助けてくれる事もある。そういうのはサッカーだけじゃなくて、様々な事につながってくると思う。誰かのために、チームのためにという精神は、サッカー以外のところにも絶対つなががってくる。今まで一緒にやってきた仲間は本当に財産ですし、一生の友達だと思います。」

「最後に、今の夢を教えてください。」

「今の夢は、フロンターレにタイトルを! 僕が入ってから1度も取れてないので。これだけ良いメンバーがいて、温かいサポーターがいて、良いチームなのにタイトルが取れていない。タイトル獲得が、今一番の夢です!」

取材日:2015年11月11日

選手&チームのご紹介

小林 悠

1987年生まれ、東京都町田市出身。ポジションはFW、背番号11。大学在学中の2008年に特別指定選手として水戸ホーリーホックに所属し、Jリーグデビューを果たす。2010年シーズンより川崎フロンターレに入団。2014年10月に日本代表に招集され、キリンチャレンジカップに出場。

 

【川崎フロンターレ】

神奈川県川崎市をホームタウンにするプロサッカークラブ。1999年からJリーグに参加し、2000年にJ1昇格。2001年から2004年にJ2降格するも、2005年にはJ1復帰。「フロンターレ」は、イタリア語で「正面」の意味で、常に正面から正々堂々と戦う姿勢を表現している。2016年のチームスローガンは「CHALLENGE THE FUTURE」。

編集部より

色紙に書いた言葉は「向上心」。常に上を見て、サッカー選手としてより高みを目指している小林選手にふさわしい言葉ですね。これからも応援いたします! 頑張ってください!