スポーツ食育インタビュー
INAC神戸レオネッサ
髙瀬 愛実 選手
水分とエネルギー源をしっかりと蓄えることが大切!
「社会人、サッカー選手になられてからについておたずねします。スタミナが必要な競技ですが、食事などで気をつけている事はありますか?」
「基本的に、食べたならしっかり動く! 朝昼晩しっかり食べる。絶対にごはんとみそ汁は食べます。」
「試合当日はどんな朝ご飯を食べていますか? 必ず食べるメニューがあれば教えてください。」
「あまり変えてないです。ただしっかり量食べること、炭水化物は意識してとります。あと、試合の日の朝に必ずぶどうジュースを飲みます。気分もスッキリするし、身体に良いって聞いたので。本当はオレンジジュースの方が好きですけど(笑)。」
ひさこ先生の栄養アドバイス
最近はアサイーが注目されていますね。アサイーの注目成分は、ポリフェノールや食物繊維(しょくもつせんい)、鉄、カルシウムのようです。これらが他のフルーツに比べて多くふくまれているのが特徴で、サッカー選手には好まれているようです。ただ、試合前に限ってだと、エネルギー源になる果糖(かとう)やエネルギー補給に効果を表すクエン酸が多くふくまれているオレンジジュースでも、全く問題ないかと思います。
「夏は特にバテると思いますがスタミナ源はなんですか?」
「日々しっかり食べてたくわえておくこと、じゃないでしょうか。水分には相当気をつけています、それでなくても代謝(たいしゃ)が良く汗で出ちゃうんで。練習の時だけじゃなくて、朝起きてしっかり水かお茶を飲んでいます。
大きくなってから牛乳をガバガバ飲むことはなくなりました。飲みすぎても良くないと思うんで。ただ、3食のどれかには必ず乳製品をとります。」
ひさこ先生の栄養アドバイス
水分とエネルギー源をしっかりたくわえておくことが、試合はもちろん練習時でも大事なことです。起床時は体の中が水分不足の状態ですので、熱中症予防の面からも、朝起きてすぐに水分をとるのはとても良いことです。また、牛乳は飲んだら飲んだだけ良いわけではありませんが、とりたい量がしっかりとれるように、3食あるいは間食でとることを習慣化するのは大事ですね。
「栄養指導を受けられたのですか?」
「スポーツにたずさわる上で、何をとった方が良いかなど教わってきました。何度か講習を受けたこともあります。バランスよく何が必要で、欠けやすい乳製品はこういうもので補いましょう、と教えてもらったので、それを参考にしたりしています。」
「実際にそれをやって、効果を実感したことはありますか?」
「私は、とにかくしっかり食べるという事を実行しただけでも、効果が出たように思います。夏に食欲がない時でも絶対しっかり食べています。食欲がない時は、すごくゆっくり食べています。」
「自炊はしていますか?」
「はい、しますよ! 得意料理は何かな…… なんでも作りますよ、自己流ですが。オムライスが好きだからよく作ります。手羽先とか手間のかかるのも作ります。みんなにふるまったりはしませんけど(笑)。自分のために作って食べるのが好きなんです。絶対美味しい自信があります。上手なんですよ、料理しなさそうって言われるんですけど。」
「食事を作る時に、気をつけていることはありますか?」
「油は、食材から出るものがあるならなるべく使わないようにして、ゴマ油やなたね油があったらそれを使うようにしています。」
「バイキングスタイルやレストランでの食事で、意識して食べるようにしている物はありますか?」
「サラダなどの野菜は必ずとるようにしています。ふだんはあまりカロリーを気にしませんが、外食時はカロリーを少しだけ気にするようにしています。外食は、比較的高カロリーメニューが多いですから。」
「海外の選手たちの食生活や健康への関心など、何か感じたことはありますか?」
「体力や俊敏(しゅんびん)性などに関して、日本人は全然負けていません。でも体格や筋力は、外国人のほうが上です。
ただ、食事風景をみると、バランスを考えず好きなものだけを食べている人も多いように感じます。」
教えて、ひさこ先生! 疲労(ひろう)を取るメニューとは?
「食事について気になる事、困っている事などありますか?」
「疲労(ひろう)を取るメニューや食品などがあればぜひ教えていただきたいです。」
ひさこ先生の栄養アドバイス
疲労にも種類があり、運動後の疲労は、①肉体的疲労、②精神的疲労に大別します。
①肉体的疲労は、運動でエネルギーを使ってしまっている状態(≒エネルギー不足)のことで、いち早く“エネルギー補給”をすることが大切です。ただ、内臓も疲労していることがあるので、脂質控えめなど内臓に優しいもので、エネルギー補給をしましょう。
具体的には、うどんなどのめん類や手軽なおにぎり、パン、おもちやカステラなどでも良いと思います。
また、筋肉のケアのためにエネルギー源の糖質(炭水化物)の1/3程度のたんぱく質も一緒にとると良いです。
②次に、精神的疲労についてです。試合中は精神的ストレスや暑い寒いという物理的ストレスもあり、それらのストレスから守る働きのある“抗ストレスホルモン”の生成には、ビタミンCが必須です。
①と②から考えると、試合や練習直後のオレンジジュース等はとても効果的ということがわかります。 練習や試合の後はなるべく早く食事をすることが良いのですが、食事までの時間が空く場合は、エネルギーとたんぱく質が一度にとれる軽食も大事です。具体的には卵うどん、煮込みうどん、親子丼、サンドイッチ、おにぎりなどがおススメです。場合によっては、オレンジジュースやトマトジュース、牛乳、ヨーグルトの中から足していただいても良いでしょう。
目標は何でもいい。実現する過程(かてい)で人間として成長していこう!
「チームの主将として意識して行っている事はありますか?」
「先頭を切ってかけ声をかけチームをグイグイ引っ張っていくというより、チームの潤滑油(じゅんかつゆ)的な役割ができるように、選手の中では、ベテランと若手のつなぎ役、チームの中では選手と監督・コーチとのつなぎ役というのを意識しています。」
「髙瀬選手の子どものころの夢は何でしたか?」
「小さいころからワールドカップで優勝したいって言って、卒業文集にも書いてましたよ。」
「それは、もうかなってしまいましたね!」
「う~ん、でもやっぱり試合にはなかなか出れなかったので、それだとまだ自分が思っていたのとちがうんです。だから、まだ夢がかなったとは思っていません。今の夢も変わらず、ワールドカップでピッチに立って、優勝したいって思っています。」
「サッカーはずっと続けたいですか?」
「そうですね、関わっていたいと思います。いずれはコーチだったり、指導の方をやりたいですね。」
「子どもたちにアドバイスをお願いします。」
「こうなりたい、って思うことって大事だと思います。別にサッカーじゃなくてもいい。たとえば『結婚したい!』とかでも。結婚したいと思ったら、相手を探すにはどうするの? どこへ探しに行きますか? 友達を作ってみますか? いろいろな人と話してみますか? そういう過程(かてい)で人として成長できれば、目標はなんでも良いと思います。」
「保護者の方に向けて、家族ができるサポートについてアドバイスをお願いします。」
「好きなことを、自由にさせてあげてほしい。うるさく言わない方がいいと思います。スポーツに対してアレコレ言うより、やりたいことを実現するためにやらなきゃいけないことは何か、教えてあげた方が良い。
そしてコーチや仲間など、たくさん人に支えられているということを、教えてあげて欲しい。そうじゃないと自分だけでやっているとカン違いしてしまう。そこを正してあげることが保護者として必要だと思います。」
写真提供:INAC神戸レオネッサ
取材日:2014年8月7日
選手&チームのご紹介
髙瀬愛実
1990年11月10日生まれ。北海道出身。2010年FIFA U-20女子ワールドカップでなでしこジャパン選出。以来2010年 アジア競技大会、2011年FIFA女子ワールドカップドイツに出場。ワールドカップでは、ほとんどピッチに立てず悔しい思いをしたが、その悔しさをバネに着実に成長をし、2012年 ロンドンオリンピックでは銀メダル、2014 AFC女子アジアカップでは優勝に貢献(こうけん)。2012年には、得点女王、ベストイレブン、リーグMVPを総なめにした。
入団6年目、23歳という若さでINACのキャプテンに就任。少年のような顔立ちとは反対に、実は宝塚歌劇団が好きという女性らしい一面も持つ。
【INAC神戸レオネッサ】
なでしこジャパンの澤選手や川澄選手、女子中高生に人気の髙瀬選手が所属する、神戸の女子サッカーチーム。
2001年に創部、2005年にLリーグ2部に参入、翌2006年1部へ昇格。2010年全日本選手権にて初タイトルを獲得し、2011年に念願のリーグ優勝を果たす。現在リーグ3連覇(れんぱ)、全日本選手権4連覇中。チーム名の「レオネッサ」とはイタリア語で雌(めす)ライオンを意味し、美しく力強い様子を表している。チームマスコットは「らいむちゃん」。
“神戸から世界へ”をコンセプトに女子サッカーの更なる飛躍を目指して活動を行なっている。
公式サイト
http://inac-kobe.com/