スポーツ食育インタビュー
ASエルフェン狭山FC
大野 忍 選手
海外には、しょう油を持参! 日本から食材を持っていくことも。
「海外でのお話を聞かせてください。遠征や合宿で海外に行くときは、どんな食生活ですか?」
「基本的に現地で出されたものですけど、しょう油は必ず持参してました。しょう油のちからは偉大(いだい)です! あと、日本からパスタとインスタントソースを持っていって、ホテルで食べることもありました。」
「なでしこジャパンのみなさんは、よく食べる方が多いですか?」
「そうですね~。バイキングだと、たとえばうどんとか、おわんに少しずつ盛ってあるじゃないですか。あれを、一度に何個も持ってくる選手はいますね。」
「スポーツ選手には、炭水化物は重要ですからね(笑)。」
「『その皿、バイキング何往復目?』ていう選手もいますし。でもみんな、各自でコントロールしていますよ。若い選手の中には、おかずをあまり食べずにすぐにデザートに行こうとする人もいるんですが、そういうのを見かけたら『ちゃんと食事をしてからデザートを食べなさい!』て注意します。見かけると、つい言いたくなるんですよね。」
フランスでは自炊(することも)。得意料理は、ポークカレー!
「『フランスではどんな食事でしたか?』という質問も来ています。」
「フランスは、肉料理はミディアムを注文しても、ほとんどレアなんですよ。だから、あまり食べられる部分がない。必然的に魚がメインになりました。サーモンが特に美味しかったです。」
「特にシーズン中は、生肉は避けて、火の通ったものを口にする!ということは、アスリートとしては必要なことですよね! 」
「あとは、チームメイトの日本人の部屋で自炊(じすい)したりしてました。」
「大野選手の得意料理はなんですか?」
「周りの人には『それは料理じゃないよ!』と言われるのですが・・・カレーです。」
「あら、カレーは立派な料理ですよねえ!」
「ですよね~(笑)。入れる肉は、豚肉かな。」
「それは素晴らしい! 豚肉にはビタミンB1が豊富なので、アスリート用のカレーなら豚肉はおススメです! 」
「そうなんですね。お母さんたち! カレーには豚肉です。」
「オフの日の食生活について教えてください。」
「基本的に、毎日母が作ってくれる食事を美味しく食べているんですが・・・。オフの日は特別に、ふだんは飲まない炭酸飲料を飲んでもいいことにしています。メロンソーダが大好きなので、クリームソーダ!もちろん1杯だけですけど。休みだからといって、ジャンクな食生活をしないように、常に心がけています。」
「スポーツ選手は、あまり炭酸飲料をとらない方が多いんですか?」
「コーラなどの甘い炭酸飲料には酸味料として『リン酸』が入っていることが多いんです。リン自体は体に必要な栄養素なのですが、とりすぎるとカルシウムを排出してしまう。『コーラは骨をとかす』などと言われるのは、このことなんですね。リンはふだんの食事からも十分摂取できるので、カルシウムとのバランスを考えると、スポーツ選手は炭酸飲料をさけている方が多いんでしょうね。」
いたずら大好き! オフはサッカーのことは考えずに過ごします。
「みなさまから寄せられた質問で一番多かったのが、『なでしこジャパンの裏話を教えてください』でした。」
「何が聞きたいですか? なんでも教えちゃいますよ(笑)。」
会場:「大野選手は、よくいたずらをするという話を聞いたのですが・・・。」
「しますねー。ホテルや合宿所だと、選手はみんな部屋の外にスパイクを干すんです。部屋の中だとクサイから(笑)。それを、内股(うちまた)にしてそろえたり、左右のクツのヒモを結び合わせちゃったり・・・。」
「(笑)。他の選手から怒られたりしないんですか?」
「部屋に来て『こらー!』と言われますけれど、気にしない(笑)。なでしこジャパンでいたずらをするのは私くらいなんですよ。」
会場:「一番仲のいい選手は誰ですか?」
「澤選手とは仲良くしてもらってます。尊敬する選手です。」
会場:「男子選手との交流はありますか?」
「ほとんどないんですよ。先日(2013年7月)の東アジア選手権のときは、たまたま会場が一しょだったので、応えんに行きましたが、ふだんはほとんどないです。」
会場:「他の選手と一緒に、遊びにいったりするんですか?」
「それも、ほとんどないですね。澤選手とか、日本でも海外でも見つかると大さわぎになっちゃうので。あ、でもオリンピックの前に、選手3人でディズニーランドに行きました。あそこは夢の国なんで、見つかっても気にせずに楽しんじゃいました。」
「オフの日の過ごし方を教えてください。」
「サッカーのことは考えないで過ごします。部屋でのんびりしたり、母親と買い物に行ったり。」
「『サッカー以外の趣味はなんですか?』」
「映画を観るのが好きです。最近では『モンスターズ・ユニバーシティ』を観ました!」
「サッカーをやっていて、女性だからこそうれしかったことはありますか?」
「むずかしいですね~。女性だから、とあまり意識してこなかったので。ただ以前澤選手が『自分がプレイしている姿を子どもに見せたい』という話をしていて、それはいいなあ、と。実際に子どもを産んだあともプレイを続けている選手もいますし。自分の子どもと一緒にサッカーができたら、すごく楽しいでしょうね。今日は母子で参加していただいて、お母さまたちも大活やくだったので、本当にうれしかったです。」
「反対に、サッカーをやっていて、辛いと思ったことはありますか?」
「うーん、とにかくサッカーが好きで楽しいので、感じないですね。ただ一度だけ、アテネ五輪で代表落ちしたとき、20歳だったのですが、そのときはもうサッカーをやめようと思いました。練習にも行かずに、部屋にとじこもって。そうしたら、両親に怒られました。それで目が覚めて、またサッカーと向き合えるようになったんです。両親には、本当にいろいろな場面で支えてもらいました。」
どんなことでも、楽しんでチャレンジしてみよう!
「最後に、お母さんたちと子どもたちに、メッセージをお願いします。」
「お母さまたちは、子どもと一緒に楽しんで、子どもたちをサポートしてください。
そして子どもたちは、親の言うことを聞く!とにかく、なんでも楽しんでチャレンジすれば、自分のプラスになります。今日は、みなさんと一緒に練習ができて、すごく楽しかったです。また一緒に、サッカーをしましょう!」
取材日:2013年8月7日
選手&チームのご紹介
大野忍選手
1984年1月23日生まれ。2人の兄の影響でサッカーを始め、97年に日テレ・ベレーザの下部組織「メニーナ」に入団。99年に、日テレ・ベレーザに昇格。2011年INAC神戸レオネッサに移籍。同年行われた「ドイツ女子W杯」では、全試合にスタメン出場。メキシコ戦でゴールを決めるなど、チームの勝利に貢献し、日本サッカー史上初「世界一」の称号を手に入れた。個人としても、大会優秀選手21名に選出される。2012年INAC神戸ではキャプテンに就任。開幕戦では、なでしこリーグ通算得点記録を更新し、歴代1位となる。同年開催された「ロンドン五輪」では、1ゴール1アシストをするなど勝利に貢献し、初の銀メダルを獲得した。2013年1月フランス・オリンピック リヨンへ移籍。
同年7月なでしこチャレンジリーグ、ASエルフェン狭山FCへ移籍し、日本に復帰した。
【ASエルフェン狭山FC】
1985年西埼玉の狭山市で地域少女チームとして活動を開始。埼玉県リーグ、関東リーグを経て、2002年から日本女子サッカーリーグに加盟。2010年に1部リーグに昇格。2012年に降格するが、1年での「なでしこリーグ復帰」を目指している。運営母体は、2004年に設立した「NPO法人エルフェンスポーツクラブ」。設立翌年に体育協会のクラブ指定支援事業の指定を受ける。総合型スポーツクラブとして健康スポーツに関わる活動も積極的に行っている。