メンタル要素① 「忍耐力」
「スランプ」は一時的な停滞期、ジャンプ前の縮んだ状態だと考える
- 編集部:
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失敗から学ぶ、スランプなどでダメだった時、壁にぶつかって、次のステップに行くときの、気持ちのコントロール、持って行き方などのトレーニングがあれば教えて下さい。
- 佐藤:
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子どもたちのレベルで「スランプ」と呼ばれるものは、ほとんど「プラトー」(Plateau:一時的な停滞状態)の事だと言われています。
運動(能力)は必ず右肩上がりに伸びていかず、上がったと思ったら停滞がはじまり、その時期上手になりません。そしてまた上がっていく、というのを繰り返します。
大体伸びが止まったら皆「スランプ、スランプ」と騒がれますが、本当のスランプは結構レベルが上がってから、ドカンと落ちる事を言います。だから一般的に言われている「スランプ」とは、ほとんどが“伸びるために停滞している状態”で、 その時期は“力を溜めている状況”だと思った方が良いでしょう。ジャンプするために、寸前で一瞬縮む行為と考えるとわかり易いのでは。
- 編集部:
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“停滞期”もないと成長しないということですね。その時に感情をうまくコントロールしてあげるのは難しいと思いますが、不安で気落ちしていても「大丈夫!」と周りで励ましてあげれば良いでしょうか?
- 佐藤:
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そうですね。“悩むのも練習”だと思いましょう。
悩まない選手は絶対伸びません。
だから、“悩むことは悪いこと“だと考えるのは間違いです。松岡修造君は明るい性格だと思われていますが、実は全然明るくないんですよ(笑)。彼は神経質でもあり、今まで苦しんで悩んだその裏側があって、その上に表面的な明るさがあってそう見えているんだと思います。みんな、伸びたいから悩むんですよね。ただ「悩み方」にも良し悪しがあるので、
悩む時は思いっきりガクッと悩んでポンと切り替える。
ゆっくりズルズル悩んでいるのは時間の無駄です。
- 編集部:
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悩む中で、人と競い合うことやライバル心などもトレーニングになりますか?
- 佐藤:
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競う時、自分でじっくりやる時、練習の場面は2パターン必要です。
テニスの場合、本当に体がリフレッシュしている時なら団体で競い合うのもいい良いけれど、基本ピアノのレッスン等と同じで、団体でバンバンやりながらではなかなか伸びません。自分の打ったボールがどうなっているのか、ラケットの向きがどうなってるかを、冷静に練習する場面も必要で、両方分けてやらないとうまくなりません。
“限界”に挑戦! しぼり出せば、あと少しの力が出る!
- 編集部:
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昭和世代は特に、なんでも“根性”という精神論で力を出せる感じがしますが。
- 佐藤:
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“根性”も大切です。今のバレーボールでは監督がipadを持って戦略を伝えたりしていますが、話によればそこに“根性”と書いて励ましたことがあるとか(笑)要は最後のところ、ワンモアプッシュ(もうひと押し)は自分の精神の「振り絞る力」でしょうね。
- 編集部:
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運動していると、養われていくことですよね。
- 佐藤:
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そうですね。ギュッと絞って、絞って絞って、もう一絞り!
あと少しの“力”ってあるんですよ。
研究会に行った時に、生理的限界、“火事場のばか力”の話をよくするんですが、ミュンヘンオリンピック平泳ぎ金メダリストの田口信教先生は、「自分の限界を越すために、自分の力だけでは絶対に限界は越せない」と言われました。「その証拠に、息をこらえてみてください、苦しくなったら吸ってしまいますよね?だから死ねないでしょ?」って。
自分の限界は自分で越せないんです。
「もし自分の限界を越したければ、ちょっと過激な例ですが、誰かに口をおさえてもらわないと越せないでしょう」と。
- 佐藤:
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私たちは「火事場のばか力」の研究をしていますが、自分が発揮していると思っている力というのは、所詮8割くらいで、実はあと2割は持っているけれど出していないんです。100パーセント出せるような人はなかなかいませんが、
“ダメだと思ったらまだ2割あると思え”という事です。自分で限界だと思ったところは8割だという理論があるので、
まだ頑張れると思って欲しい!それを知ってる人間と、知らない人間では違ってきます。
サイコロジカルリミット(心理的限界:気持ちが感じる限界)とフィジオロジカルリミット(生理的限界:身体の限界)は違うんです。
ゴール地点より先まで走り抜いてこそ、本当のゴールがある
- 佐藤:
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幼稚園の運動会を見てると、大体ゴール前になると、スピードが落ちる。上手い子はゴールを突っ切るんですが、大体はゴール前になると失速してしまう。
それは、ブレーキとアクセルがあったとしたら、脳の中で多分ブレーキがかかるため、ゴールを越えた先まで走りぬくつもりでないと、上手くいきません。それが大事な事なんです。例えばテニスでも、ボールを打つ時に最後まで振り切るのが大事。打った時点でラケットを止めると、大抵スイングスピードは落ちます。外国人選手はビクビクおびえた状態(=チョーキング)になると、ラケットを最大限に振り切るイメージで思いっきりビュンビュン振るんです。“運動の学習”なんですが、そういうパターンがあります。
スポーツ心理学 + 栄養学
運動だけじゃなく、「寝る」「食べる」ことにもガッツを!
- 編集部:
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トップアスリート選手に取材すると、幼い頃の正しい食習慣が身についていなかったり、偏食の方はほぼいません。ただ現在の小・中学校の生活習慣の実態調査では、朝食の欠食や主食だけの偏った食生活、夜更かし傾向や朝寝坊など、生活習慣を整えることの難しい現状があります。
- 佐藤:
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テニス合宿などの際に、選手は栄養士やトレーナーから「良質のものを沢山食べなさい」と言われます。でも食べられない子が多い。食がすごく細くなっている現状は感じますね。「余ってるけど誰か食べない?」と聞くと、昔は殺到したものですが、今は「もうフルーツ食べたい」なんて言う (笑)。食べている時の活力があんまり感じられない時があります。
競り合いの際、目の前にある食べ物は自分が食べる!といった争い、奪い合う姿勢、チャンスが少し足りなくなっているので、「あと1個しかないよ。誰が食べる?」と言ったら、譲り合わず俺が食べる!と競い合わせるゲームをさせたりしています - 久保田:
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同感です。中学生年代の子どもたちの練習後や合宿中の食事時に、余ったおかずを「食べ終わった人に配るから、お替わり希望の人は、食べ終わったら手をあげて」と言うと、ガッツのある子どもはまだお皿に残っているのに「はい!はい!」と手をあげます。「まだ残ってるよ」と言うと、「お替わりが、なくなったらいやだから」って(笑)。一方、「僕はいい」と張り合わない子もいて、すごく極端です。まだお皿に残ってるのに手をあげる子は、
“心のスタミナ”があるなと感じました。
- 編集部:
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まさに“ハングリー精神”ですね(笑)
- 佐藤:
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逆にコーチ達は年代的?にガッツがあるので、もうそんなに食べなくていい年齢なのに、昔の習慣で止まらないのが面白い(笑)。食べ方は、心理的に見えますね。一番最初の根っこの部分、兄弟がいて、食べ物を奪い合うような精神、実は心理テストなんてしなくてもわかるんですよ。
「エモーション(emotion:感情)、”e”を外せばモーション(motion:動作、身ぶり)ですよね。
体の姿勢、しぐさ、目つきだとかそういうものを見ると、メンタルが分かるんです。改めてチェックしなくても、その人の食生活とか、そういったものもわかります。「食べる」、「寝る」の片方だけでなく、両方出来ていると、この選手はすごいなと思います。それがきちっと出来ていれば、きっといい練習も出来ると思うので。