ごはんだもん!げんきだもん!特別企画 スポーツ心理学×スポーツ栄養学 スポーツ心理学:佐藤 雅幸先生 スポーツ栄養学:久保田 尚子先生ごはんだもん!げんきだもん!特別企画 スポーツ心理学×スポーツ栄養学 スポーツ心理学:佐藤 雅幸先生 スポーツ栄養学:久保田 尚子先生

第5回 スポーツ心理学 “メンタル・トレーニング”入門編 「効果があることを実感する = 続けられる!」

メンタル要素⑨ 「自信」

メニューを見て10秒で注文を決められるか?

佐藤:

松岡修造君の話ですが、昔アルバロというコーチとレストランに行ったとき、決断力のトレーニングとして「メニューを見て10秒後に注文を決めろ」と言われたそうです。彼は今、これと同じことをジュニア選手達にやっています。決断力と、何にフォーカスをあてるかが大事なトレーニングなんです。

編集部:

そのような訓練をどんどんしていくと、決断が早くなるんですね。

佐藤:

そうですね。人によって許容量が違うので、情報を頭の中でいくつも処理できず、限界がきてオーバーしてしまうタイプもいます。

編集部:

選択肢(せんたくし)が多すぎると、選ぶのが大変になりますね。

佐藤:

フォーカスを違う方向に持っていくとエラーミスが起こります。本当はボールを見て打たなきゃいけないのに、周りで音がして気が散るなどです。行動を起こさなければいけないのに、その瞬間、「あ、失敗するかなっ」と思考が働いた場合なども、ミスを起こします。

だから、常に「1,2,3…」と“ルーティーン”(くり返し)の順番でやっていく事で、ミスをしないようになるんです。

*ルーティーンを行う時のPOINT* 行動はオートマティック(自動的)で、思考は介在させないこと。フォーカスする対象、集中する対象を決めて行う。

「動かす側」と「動かされる側」

編集部:

指導する側としては、選手を最高の状態にすることは、とても重要になりますね。

佐藤:

心理学で、指し手的感覚コマ的感覚という言葉があります。

指し手:将棋を「指す側」=コマを「動かす側」
コマ  :指し手によって「動かされる側」

コマ的感覚になると、新しい発想や主体性がなくなってしまいます。立派なコーチやトレーナーが、彼らを主体的に上手く使っていく側(=指し手)になる事です。そうすると、選手が生き生きしてきますよ。

編集部:

一から十まで教える指導ではなく、選手に「次はどうする?」と考えさせる指導の方が成長すると言いますね。その場その場でどうすべきか自分で判断力をつけさせて、正解が一つではない事も学ばせる。結局命令に従うだけだと指示待ちになり、自己判断が出来なくなるからですよね。

久保田:

理想的にはそういうイメージですが、勝利欲が増してくると、プロの選手ですら現実に上手くやるのは難しいとは思います。

メンタル要素⑩ 「予測力」 ・ ⑪「判断力」

的をしぼり過ぎず、全体を見て動きを予測する

編集部:

「予測力」や「判断力」を養うために、周りでサポートできますか?

佐藤:

たとえばサッカーで相手選手がシュートを打ってくるとき、キーパーに対して「○○を見ているとコースが読めるよ」という指導ができます。シュートをする時はボールだけを見て蹴ってくるだけではないことから、「選手は蹴る方向を必ず1回見るよ」などのアドバイスはできます。

以前「集中力」について研究するため、テニス選手のレシーバー側にアイカメラを使って調査したところ、予測の下手な選手は、ボールを見ていればコースが分かると思うのか、ボールをずっと目で追って見ていることがわかりました。ところが予測が上手な選手達は、ボールも時々見ますが、相手選手の目を見たり、ラケットの入り方を見たりと、全体を見ながらその動きに予測を立てて判断していました。すなわち「的は中間にある」ということなんです。