編集部:「『サッカーをはじめたのは、いつ、どんなキッカケですか?』という質問もいただきました。」
大野選手:「小学1年生ごろからです。兄が二人いて、兄と一しょにボールをけっていました。でも地元のチームには、女子は入れなくて。4年生のときに女子チームができて、そこからは本格的にスタートしたんです。
子どものころは、毎日暗くなって親がよびに来るまで、ずーっとサッカー。その他にどんな遊びをしていたのか覚えてないくらい、サッカーに熱中していました。」
会場:「うちの娘は、地元のチームに唯一(ゆいいつ)の女子として入っているのですが、大野選手は子ども時代に苦労されましたか?」
大野選手:「そうですね。小学生のころは、男女の別なく一しょにプレイできるのですが、中学生になるとおたがい意識してしまって、なかなかうまくいかなくなるんですよね。高校生になると女子チームの大会もあるんですが、中学生だと、女子がプレイする環境があまりない。その段階でサッカーからはなれてしまう女の子が多いんです。この現状(げんじょう)をなんとか変えていきたいと、個人的には思っています。」
編集部:「白いご飯が大好きな大野選手ですが、プロになってからの食生活は変わりましたか?」
大野選手:「食生活には気を配るようになりました。日本人は小柄なので、体の大きな海外選手と対戦した時、“当たり負けしない体”を作らなくちゃいけない。そのためにまずなにができるのかというと、やはり一番は食事ですから。」
編集部:「特に気をつけているポイントとしては?」
大野選手:「一つは、時間ですね。夜はおそくとも8時までには、朝は7時までには食べ終わりたい。ただ、夜に練習があるときはすぐに食事ができないので、練習後におにぎりを食べるようにしています。」
ひさこ先生:「それはすごく大切ですね。夜の食事がおそいと、寝ている間の成長ホルモンの分泌(ぶんぴつ)が悪くなってしまうんです。でも今は小学生でも、夜おそくまで練習している子がたくさんいて、何を食べさせていいのか、悩んでいるお母さん方が多いんですよね。」
会場:うなづく
ひさこ先生:「そういう時は、 “分食”と言って、練習の前にエネルギー源になる《主食》を食べておくようにします。具体的な例としては、練習に行く前におにぎりを食べて、練習後にはごはん少な目で、おかずは脂質ひかえめの夕食をするというものです。この方法は、練習時にもエネルギーはチャージ出来て、寝ている時の内臓への負担もひかえめになります。 」
会場:「うちの子は、食べたいときはたくさん食べてくれるのですが、そうじゃないときはあまり食べてくれないんです。何かアドバイスはありますか?」
大野選手:「つかれていると、食欲がわかないですよね。私の場合は両親が『食べなさい!』と注意してくれたので、食べるようになったかな。」
ひさこ先生:「サッカー選手から聞いた話では、食事の前に糖分(とうぶん)の入っていない炭酸水を一口飲んで、胃を刺激(しげき)してから食事をする、というのがありましたよ。」
大野選手:「『食べることも、強くなるためのトレーニングのうちだよ!』と伝えてあげてください。練習を重ねるだけでなく、きちんと食事をとることも、立派なトレーニングです。」
編集部:「『あまり好きでなくても、意識して食べるようにしているものはありますか?』」という質問です。」
大野選手:「そうですね~、ひじきとか。栄養士の先生にアドバイスされて、貧血予防のためにもひじきはよく食べています『五大栄養素※をバランスよく取りなさい』と言われて、牛乳が苦手だったのですが、乳製品も積極的にとるようになりました。乳製品はすごく大切ですね。牛乳やヨーグルトなどを欠かさずとるようになってから、ケガが少なくなった実感があります。フランスにいるときは、ドリンクタイプのヨーグルトをよく飲んでいました。」
※ 五大栄養素:炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラル
編集部:「やはり女子選手が集まると、おかしや甘いものをめしあがるのかな? と思っていたのですが・・・。」
大野選手:「いや、そんなことはないですよ。子どものころは、おかしが大好きでしたが、今はほとんど食べないですね。コンビニに行ったとき、たまに誘惑(ゆうわく)に負けそうになるときもありますけど(笑)。バイキングの朝食でも、デザートはフルーツしか食べません。なでしこジャパンの選手はみんな意識が高くて、食生活にもストイックな人が多いですね。」
1984年1月23日生まれ。2人の兄の影響でサッカーを始め、97年に日テレ・ベレーザの下部組織「メニーナ」に入団。99年に、日テレ・ベレーザに昇格。2011年INAC神戸レオネッサに移籍。同年行われた「ドイツ女子W杯」では、全試合にスタメン出場。メキシコ戦でゴールを決めるなど、チームの勝利に貢献し、日本サッカー史上初「世界一」の称号を手に入れた。個人としても、大会優秀選手21名に選出される。2012年INAC神戸ではキャプテンに就任。開幕戦では、なでしこリーグ通算得点記録を更新し、歴代1位となる。同年開催された「ロンドン五輪」では、1ゴール1アシストをするなど勝利に貢献し、初の銀メダルを獲得した。
2013年1月フランス・オリンピック リヨンへ移籍。
同年7月なでしこチャレンジリーグ、ASエルフェン狭山FCへ移籍し、日本に復帰した。
1985年西埼玉の狭山市で地域少女チームとして活動を開始。埼玉県リーグ、関東リーグを経て、2002年から日本女子サッカーリーグに加盟。2010年に1部リーグに昇格。2012年に降格するが、1年での「なでしこリーグ復帰」を目指している。運営母体は、2004年に設立した「NPO法人エルフェンスポーツクラブ」。設立翌年に体育協会のクラブ指定支援事業の指定を受ける。総合型スポーツクラブとして健康スポーツに関わる活動も積極的に行っている。
「エルフェン狭山」公式サイト
http://www.as-elfen.or.jp/