スポーツをしている小中学生の保護者の方とお話していると『体を大きくしてあげたいけど、何を食べさせればよいかしら?』という質問を必ず受けます。質問の裏に本人と親御さんの“本気”が伝わってきます。
ただ、思いが強ければ強いほど、“食事の仕方”に誤解があるのでは?と感じることもあります。
例えば、①大きくなる=肉・牛乳をしっかり摂る!⇒よく言われていることですが、これは誤解です!
たんぱく質はからだ作りの材料として利用されるのが本来の役割ですが、“おかず”だけに偏った食べ方ではたんぱく質が効率の悪いエネルギー源として利用され、からだ作りの材料として有効利用されることになりません。
運動するためのエネルギー源=『主食』をしっかり食べていないと、実は体は大きくなりません。
②大きくなるためには牛乳を“水代わり”に!⇒もちろん牛乳は成長期に大事な食品ですが、これも誤解です!
確かに牛乳には良質なたんぱく質やカルシウムが豊富に含まれていますが、濃厚牛乳や普通牛乳では、脂質も多く含まれていますので、“水代わり”は脂質の摂り過ぎにもつながります。
(牛乳1Lパックには38gのバターが含まれています。※38gのバターとは、ポーションバター約5個分)
また、食事の大事さを知るには、運動でどれだけのエネルギーを使ったかを知っておくことも実は大事なことです。
同じ運動でも、年齢(体格)や種目、強度によって消費するエネルギーは違ってきますので、参考程度でも運動で使うエネルギー量(例:体重35㎏10歳男子が1時間サッカーをした場合≒370kcal)を知っておくことは、食事の大事さを理解することにつながります。「疲れているから夕食はいらない」や「朝食を食べるよりも寝ていたい」など ⇒ 絶対避けたい!
消費するエネルギーの大きさを知れば、からだを大きくしたい時期に“欠食”はあり得ないことですよね?!
とはいえ大事なことは、エネルギー量の数字合わせではなく、”バランス”を考えることです!
カフェイン
少し前に日本で初めてカフェインによる中毒死が報道されました。
”カフェイン”=コーヒーの連想で、「子どもにコーヒーは飲まさない!」となりがちですが、
”カフェイン”はコーヒーに限らず、紅茶・緑茶・コーラ・ココア・チョコレート等、色々な食品に含まれています。
”カフェイン”…WADA(世界アンチドーピング機構)では“監視プログラム” (競技別に毎年更新されますが)という扱いで、ドーピングの禁止物質ではありません。
”カフェイン”には集中力アップ、脂肪燃焼、胃酸分泌促進などの効果も言われていますが、利尿作用もあることから運動前の摂取では脱水にならないよう“飲むタイミング”に注意が必要です。さらに、カフェインの分解量には限度がある上、耐性が出来やすいことから、摂取量が多くならないよう注意することも大事。
日本では量規制はありませんが、諸外国の中には子どもだけでなく一般成人にも許容量が定められているところもあります。
とは言え、『食事(飲食)』には、栄養補給だけでなく“楽しみ”としての大きな役割もあるので、どんなときにも極端な制限につなげるのではなく、『意識はするけれど楽しむ』とすることが大事ではないでしょうか。
少年サッカーチームを対象に行われる、ひさこ先生の食育講座。
毎回、サッカー少年のお子様を持つお母さま方から、たくさんの質問が飛び交います。
その中から、いくつか抜粋してご紹介します。
起床してから何分以内とか、寝る何時間前など、食事をとるのに良い時間帯はありますか? | |
起床後の時間は、特に規則はないかと思います。むしろ、起床後直ぐでも朝食を食べられるくらいだと良いと思いますが、起床後だと食欲がない場合は30分位身支度などでからだを動かしてみましょう。 就寝前については、せめて2時間前は避ける、ということが言われています。食べるものにもよりますが、消化しきれずに胃の中に食べ物が残っている状態で就寝するのは、熟睡できないので避けましょう。 夕食から就寝までの時間があまりとれない場合は、“分食※”の方法や、脂質控えめの食事など試してみて下さい。 |
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※“分食”とは? |
久保田尚子先生 プロフィール
順天堂大学等の非常勤講師などを歴任しつつ、スポーツ栄養を中心とした栄養関連業務に従事。
<主な栄養サポート歴> | <主な雑誌連載> |
女子ソフトボール日本代表 | 月刊誌『サッカークリニック』 |
(2004年アテネオリンピック支援帯同) | 《勝つための栄養セミナー》等多数 |
JリーグFC東京(トップから育成年代) |