スポーツ食育インタビュー

Vol.26 後編 京都サンガF.C. 山瀬 功治選手

料理のプロの奥様が、山瀬選手をサポート
インタビューを受ける山瀬選手

編集部:「奥様が料理のプロとして活躍(かつやく)しているから、奥様のサポートは、とても身になりますね。」

山瀬選手:「僕の場合はそうですね。食事の変化のキッカケは若い時に大ケガをしたことから始まって、妻にも色々勉強してもらった。そういうサポートがあったから、今の自分があると思ってます。もしサポートがなかったら、もしかしたら今現役ではないかもしれない。」

編集部:「食事面は、奥様に全信頼を置いてまかせているんですね。」

山瀬選手:「本当は僕自身も学ばなくちゃいけないんでしょうけど、聞き流しちゃってるんですよ(笑)。『分かった、お前が覚えておいてくれるからいいや』みたいな感じで。」

ひさこ先生:「子どものころは野菜が苦手だったとおっしゃっていましたが、奥様のウェブサイト(クックパッド http://cookpad.com/kitchen/8418816)を拝見(はいけん)していて印象的だったのは、セロリを細かく切って混ぜたものを山瀬選手が食べて『これはセロリ入ってても、おいしいね』とコメントをされたという内容の記事です。」

山瀬選手:「そういう風に、色々工夫してくれてますね。以前マリノスにいた時、横浜市に依頼されて児童向けの食育冊子を作り、野菜がきらいな子でも食べられるレシピを考えていましたね。きらいなものでも、どうしたら気にならずに食べられるか考えてくれて、それで食べられるようになったものもあります。
あとは、何回も何回もしつこく出されて、食べてるうちに慣れた、っていうものもありますね(笑)。その時は別に美味しいとは思わないんですけど、食べるうちに、まぁまぁ食べられるようになってきた。強制的に慣れさせられる時もあります。」

ひさこ先生:「それぞれの食材のもっている意味とか、サッカー選手に適(てき)したものだとか、ちゃんと理解して、それを山瀬選手に説明して作っているイメージを受けました。だから、ただしつこいだけではなく、想いが伝わっていくのではないでしょうか。」

山瀬選手:「妻のレシピの作り方はそうなんです。どの食材を使うかではなく、どの栄養素を使うのか、から入っていく。『今はこのような状況だから、これを摂らなきゃいけない。この栄養素が入っている食材は何か?』から始まって、『じゃあこの食材は。どういう風にしたら美味しく食べられるか』というアプローチの方法。
だから、逆に突拍子(とっぴょうし)もないレシピが出たりとかもするんです。味から入ってないんで(笑)。」

試合での山瀬選手

ひさこ先生:「だから『アス飯(山瀬選手の奥様が連載している京都新聞のコラム:http://www.kyoto-np.co.jp/info/sports/athmeshi/)』は、まず第一は『美味しいごはん』じゃなく、『アスリートのためのごはん』なんですね。でも拝見してると、そういう形で入っても、すごく美味しそうで、体に良さそうなメニューでした。そこが愛情ですね(笑)。」

山瀬選手:「そこは色々、試行錯誤(しこうさくご)はしてますよ。これは何と組み合わせるか、何をつなぎに入れたら美味しくなるか、というのを考えてやってます。そういうやり方だから、読者の方に、『見た事もない組み合わせだ』と評価していただいているのだと思います。」

ひさこ先生:「奥様のブログで、小学校教諭時代のエピソードとして、『きらいなところやイヤなところはみんな持ってるから、それを見ないで良いところだけを見て、大好きなお友達を増やしていこう』というお話がのっていました。食べ物に対しても、もしかしたらそう考えていらっしゃるのではないかしら。
たとえば、この香りがイヤ、この苦味がイヤでも、サッカー選手にとってこんなに良いところがある食べ物なんだと伝えるやり方。お友達付き合いに似た接し方で、食事にも取り組んでらっしゃるのかと。」

山瀬選手:「そこまで難しく考えていないと思いますが……。コレが体にとって良いからこれを使おう、それをどういう風にしたら出来るか、食べる人のことを必死に考えていますね。
ほかには、作る人が、いかに面倒くさくなくシンプルに作れるか、とか。他人のことを考えて出してる料理なのだと思います。
とはいえ家でカロリー計算とか、そういったことはあんまりしてないんですよ。基本的に、必要とするものをしっかり摂る。油をあまり使わず、使ってもココナッツオイルやオリーブオイルにするとか。そんなにカロリーの高い食事はないんです。ある程度お腹いっぱい摂ってもカロリーオーバーにはならないというのをベースに、そういうスタンスでやってますね。」

編集部:「乳製品は摂りますか?」

山瀬選手:「牛乳は摂らない方ですが、ヨーグルトは食べます。毎回直接食べるのではなく、料理に入る時もあります。かわりにチーズを入れたりすることもあります。もう、妻任せです。」

編集部:「食事に牛乳は出ませんか?」

山瀬選手:「うちは水か、もしくはビタミンCを摂れるようなもの。水とちょっと薄めて飲むものとかがあるんですけど、フルーツを濃縮したエキスとか。昔は青汁を飲んだりもしていました。」

編集部:「練習後に補給するものはなんですか?」

山瀬選手:「控室にはバナナなどが置いてありますので、練習直後は30分以内に、バナナや栄養ゼリーを摂ったりしています。それで少しシャワーを浴びたり、ケアして一段落してからごはんを食べる感じですね。」

目標に向かって自分から考え、動くことがなにより大切!

編集部:「サッカー選手にあこがれている子どもたちに、アドバイスをお願いします。」

山瀬選手:「自分が何か成しとげたいものがあるなら、それを達成できるかどうかは自分次第です。それに向かって、自分がどういう風に取り組んでいけるか。それがすべてだと思います。
普段の練習もそうだし、栄養の事もそうです。すべてをパーフェクトにストイックにやれ、とは言いません。子どもなんだから、友達と遊ぶ時間も大切なものだと思う。ただ何をするにも、自分でしっかりとやりたいこと、達成したい目標、目的に向かって、自ら進んでやっていく姿勢が一番重要だと思います。『コーチや先生が言ったから』では、本当にいいものでも身にならない。
サッカーは楽しいだけじゃない。走る練習もあれば、自分のやりたくないポジションをやることもあるし、試合に出られない時もある。すべての事において、自らどういう風にやっていくか。自分でやっていく意識があれば、当然そのためにはどうすればいいか、ちょっと考えると思うし、考えるうちに工夫も生まれてくると思う。工夫すれば、今度はそれをどういう風に応用するか、生かしていくか、色々な事を考えられるようになります。
これはサッカーに限った話ではなく、どんな職業でもそうだと思うんです。自分からアクションを起こせるようになっていかないと、どの職業についても大変だと思います。
失敗もあると思うんですよ、絶対に。でも失敗って、単純にそれが上手くいかなかった方法を学ぶ、というだけの事なんです。こういう風にやってみたけれどうまくいかなかった、じゃあ次こうしてみよう、と前向きに考えられる。ただ言われてやっているだけだと、失敗したりうまくいかない事を、誰かのせいにしてしまうかもしれない。とりあえず何でも自分から主体的に取り組むことがいいのではないでしょうか。」

編集部:「保護者は、どのようにサポートしていけばよいでしょうか?」

山瀬選手:「自分が子どものころは、親にすごくサポートしてもらいました。練習や試合の送りむかえをしてもらったり、ご飯作ってもらったり。
親が『あれしなさい、これしなさい』ってやらせていると、自分から行動できなくなってしまう。自分がもし親だったら、口を出したくなるかもしれないんですけど、まずは子どもにどうすればいいのか、自分で考えさせます。何でもかんでも、ああしろこうしろって言うと、結局やらされてやるだけの流れにしかならない。あまりにもずっと言われてたら、子どもはイヤだけど言われてるからやろう、になると思う。言い過ぎもよくないし、言わな過ぎもよくない。」

ひさこ先生:「子どもによっても違うから、難しいですね。」

山瀬選手:「子どもによって全然違いますよ。極端な言い方をすれば、子どもに任せて、もし痛い目にあったら、それは多分印象にも残るし、学んで反省もすると思うんですよ。
ただ自分に合うものでも、他の選手には合わないものもある。結局自分で見つけていくのが一番かな、とは思います。」

ひさこ先生:「知ってるのと、実践(じっせん)するのとはギャップがあったりもしますね。」

山瀬選手:「それはもう、自分次第ですね。やらない人は、単純に終わっていくだけ。本当にそうですよ。練習を一生懸命やればうまくなれるし、やらなかったら何年かして首を切られて、自己責任の世界で、誰も助けてくれないですから。サポート、アドバイスとか助言はしてくれるけど、最終的にそれを身に出来るかどうかって自分次第です。」

取材日:2015年5月22日

色紙に書いた言葉は「自分に限界をつくらない」。常に自分と向き合い努力を続けたからこそ、山瀬選手は今もピッチにたち、前を向いて戦っているのですね。
素敵なお話を、どうもありがとうございました! これからも山瀬選手を応援(おうえん)していきます!

選手&チームのご紹介
山瀬功治(やませこうじ)選手

北海道出身。2000年コンサドーレ札幌のデビュー戦でゴールを決める。2001年U-20ワールドユースに出場。2001年にはJリーグ新人王タイトルを獲得。その後浦和レッズを経て2005年に横浜F・マリノス、2011年に川崎フロンターレへ移籍。2013年より京都サンガF.C.へ移籍し、2014年には主将を務めた。力強いドリブルと高いテクニックを武器とし、各世代の日本代表を経験してきた実力者。

京都サンガF.C.

京都府京都市、宇治市、城陽市、向日市、長岡京市、京田辺市、木津川市、亀岡市をホームタウンとするプロサッカークラブ。1996年に京都パープルサンガとしてJリーグに加盟。2007年に「京都サンガF.C.(KYOTO SANGA F.C.)」へと名称を変更。
2015年のシーズンスローガンは、「真摯(しんし)な姿勢で、改め、新しくする。」そして、「素直に、実直に、成長の道を歩み続けたい……」という姿勢と思いを宣言した「SANGA INNOVATION(サンガ・イノベーション)」 。

■公式サイト
http://www.sanga-fc.jp/
■公式ツイッター
http://twitter.com/sangafc
■公式フェイスブック
http://www.facebook.com/official.KyotoSanga

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