スポーツ食育インタビュー

Vol.25 後編 コマツ女子柔道部 片桐 夏海選手

コマツ女子柔道部で活躍中の片桐夏海選手。体重で階級(*)が分かれている柔道は、食生活のコントロールが重要となるそうです。試合前の減量方法など、柔道選手ならではの食事についておうかがいしました!

*21歳以上(女子)だと、48kg級、52kg級、57kg級、63kg級、70kg級、78kg級、78kg超級の階級があります。

試合にむけた体重管理は、栄養学の知識と経験が役立っている
インタビューを受ける片桐夏海選手

編集部:「試合の前日や当日には、何を食べていますか?」

片桐選手:「“コレ”というものは決めていません。柔道は前日の夜に計量があって、次の日の朝は5パーセント以内の体重の増加しか認められていません。試合当日に抽選(ちゅうせん)で当たったらまた計量しますが、5%以上増えていたら試合に出られません。」

ひさこ先生:「選手全員じゃなくて、抽選で計量があるんですか? じゃあ前日計量が終わっても、気を許して食べちゃうわけにいかないですね。」

片桐選手:「そうです。次の日は水分と食べ物をどれだけ食べたら、基準内におさまるかを計算しています。」

ひさこ先生:「それは、経験によって身についた感覚ですか? 」

片桐選手:「そうですね。私は栄養にはとても気をつかっています。中学生のころ、地元でスポーツ選手を集めた栄養学の講習会に参加して以来、栄養に興味を持つようになりました。それからは、本を読んだり、人から聞いたりして勉強しています。大学でも講義を受けました。これらの知識とこれまでの経験を元に減量をやっています。」

編集部:「今は、栄養の指導や基準があるんでしょうか?」

片桐選手:「柔道部では寮(りょう)で食事が出るので、ふだんの栄養はコントロールしていただいています。栄養については、自分で勉強して、積極的に栄養士さんに疑問を聞くなどしています。でも最終的には、自分の経験を参考にしています。」

ひさこ先生:「それが一番大事だし、一番良いことだと思います。私たち管理栄養士がお話できるのは一般論(いっぱんろん)でしかなく、全員に当てはまるわけではない。ですから、ご自分の経験から自分のパターンみたいなものを作られるのはすごく良いことだと思います。」

食事をとる“タイミング”を意識しています
練習に励む片桐夏海選手

編集部:「子供の頃苦手だった野菜は、成長と共に食べられるようになりましたか?」

片桐選手:「好きになりました。むしろ、大好きです。」

ひさこ先生:「やっぱりアスリートにとって、欠かせないものだという意識が出ると、食べられるようになりますよね。」

片桐選手:「子どものころは、何で野菜を食べなきゃいけないかわかりませんでした(笑)。そんなに美味しいと思わないのに、食べる意味があるのかなって。
でも何で食べないといけないか分かって食べるようになったら、好きになりました。」

編集部:「食べるときに、意識していることはありますか?」

片桐選手:「食事をとるタイミングを大事にします。柔道の練習をすると、普通の人よりも体に負担がかかります。だからこそ、体の材料になるたんぱく質や糖質など、そのタイミングで絶対必要な栄養はバランスよく考えてとるようにしています。」

編集部:「試合の日の朝食を教えて下さい。」

片桐選手:「やっぱりお米を食べますね。ほかには、すぐエネルギーになるものとして、フルーツを食べます。」

編集部:「フルーツはお好きなんですか?」

片桐選手:「大好きです。あとは、はちみつが好きですね。はちみつはすぐにエネルギーになるので。加熱せずに生で食べたほうがいいと聞きましたが、どうなんでしょうか?」

ひさこ先生:「大人の場合はね。でも免疫力(めんえきりょく)が下がっていると、加熱処理してないから体調をくずす可能性もあります。ふつうなら大丈夫ですが、はちみつのパッケージには『1歳未満には食べさせないで』と書いてあるのは、その意味です。でも、はちみつそのものは、すぐエネルギーになる種類の糖が多いので、便利に使えるものです。
ただ、果糖はタイミングや量を考えないと体脂肪に変わりやすい糖です。どうやって召し上がるんですか?」

片桐選手:「ヨーグルトに入れて食べるのが好きです。試合の時もタッパーにはちみつを入れて移動先に持ち込み、ヨーグルトにちょっと入れて食べたりしています。」

ひさこ先生:「レモンの輪切りをはちみつに漬(つ)ける料理がありますが、あれはまさに理にかなっていて、はちみつのエネルギーとそれをうまく回すためのクエン酸がレモンからとれます。試合当日のはちみつっていうのは、体調さえよければおすすめだと思います。」

練習に励む片桐夏海選手

編集部:「乳製品はお好きですか?」

片桐選手:「大好きです。夜は、ホット牛乳にちょっとはちみつを入れて飲んでいます。こうすることで、たんぱく質をちょっとずつ補(おぎな)っています。」

ひさこ先生:「眠る前のホットミルクは、精神安定や誘眠(ゆうみん)作用があります。すごくいいとり方をされていますね。
“焼肉食べ放題”のように、一度にたくさんたんぱく質をとっても、利用できる量に限界があるから、こまめにとるのはとても良いですね。摂取(せっしゅ)したたんぱく質のうち、筋肉にならなかった残りは体脂肪になってしまいますから。」

編集部:「水分補給にも気をつけていますか?」

片桐選手:「汗をかいた分、スポーツドリンクをこまめに飲んでいます。1度に150~200mlほど飲みますが、飲みすぎに注意しています。練習の時は、汗で体重が1kg程度落ちるので、合計1リットルくらい飲みますね。夏はもっと体重が落ちるので更に飲みます。」

ひさこ先生:「練習量や練習強度、部屋の温度を含めた環境によって発汗量がちがうので、それによって変えているんですね。大事なのは、練習前後の体重変化を考える事だと思います。今は、練習前後に体重を測っているんですか?」

片桐選手:「はい、練習前と後に測らないといけません。誰でも見られるところに体重計が置いてあり、しょっちゅう測っています。柔道は階級制の競技なので、普段の体重の変動は常にチェックしています。」

つづき
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