編集部:「小学生からサッカーを始められたそうですが、キッカケは何だったのですか?」
髙瀬選手:「兄姉が5人いて、一番上の姉以外はみんなサッカーをしていたんです。だから幼稚園児くらいの時から、自然とサッカーを始めていました。本格的にサッカーを始めたのは小学校1年生からだったと思います。ずーっと物心ついた頃から兄姉がやるのを見てきたので、自分も早くやりたかったから、正式に少年団に入れた時はうれしかったし、楽しかったです。」
編集部:「成長期のからだの変化で、問題はありませんでしたか?」
髙瀬選手:「いえ、あまりケガもしなかったし、基本的に骨がしっかりしていたので、骨折などの故障もありませんでした。牛乳を飲んでいたおかげかな?」
“骨がしっかりしている”ことはケガ予防の点からもとても大きなポイントです。骨の強さとも言える“骨密度”は20代がピークと言われていますので、一生の財産とも言えるじょうぶな骨を獲得するためにも、バランスのとれた食事や牛乳・乳製品などをしっかりとる食習慣はとても大事です。
髙瀬選手:「ただ、身体つきが女性らしくなってきた中学3年から高校くらいまでの時は、体重の変動がはげしかったので、大変でしたね。やっぱり身体が重くなると動きがにぶくなったり、逆に軽くなりすぎると走れなくなったり。 でも高校になったころには、自分のベスト体重がどれくらいなのかを量りながら調整する事ができました。」
自分の体と向き合うことはとても大事です。きちんとしたデータを見ていれば、間違った無理なダイエットなどもなくなると思います。
編集部:「いつまで男女混合でサッカーをしていたのですか?」
髙瀬選手:「小学校から中学校までは男子のチームでさせてもらっていました。ただ週末になったら車で3時間位のところに女子のサッカーチームがあったので、そこでもやっていました。」
編集部:「男女の差を感じましたか?」
髙瀬選手:「小学校くらいまでは女子の方が身体も大きいので強いし、スピードもあって当たりも強かったりしたんですけど、やはり中学2年生くらいになったら男子が急にグーッと成長して、男女差を感じるようになりました。
中1くらいまでは男子にかけっこも負けなかったんですけど、中2くらいからはもう全然かなわなくなってきました。サッカー自体、戦術や技術などは補(おぎな)えるのですが、フィジカル面の男女差はうめられないところがあるので。」
編集部:「女子サッカーの良さ、利点はありますか?」
髙瀬選手:「女子の方が痛みにもメンタル面も強いかもしれませんね。自分自身、メンタルが弱い部分は相当ありましたけど、コンディションがあまり良くない時の持って行き方というか、今日はダルいなと思っている時のスイッチの入れ方とか。そういうのは小さいときから持っていたものかもしれません。しんどい時こそ今日はがんばろう! みたいなスイッチはありました。」
編集部:「サッカーをやめたいと思ったことはありますか?」
髙瀬選手:「一番イヤだなって思ったのは、小学5年生になる時にチームを移った時でした。他のチームに呼ばれ女性コーチのもとでやる事になったんですけど、まだ小学生だったんで自分に決める権利がない。自分がやりたいようにできず、つらかったです。
男子のメンバーの中に、女子一人で急にポンっと入れられて……思春期というのもあって、周りの男子がどう接していいのかわからない感じが伝わってきた。今までのチームでは『メグ』と呼ばれていたのに、『髙瀬さん』とよそよそしい感じがイヤだなって思って……結構、練習をサボってました。
プレイでは負ける気がしなかったし、サッカー自体は順調だったんですけれど。」
編集部:「その状況(じょうきょう)を乗り越えられたのはなぜですか?」
髙瀬選手:「5年生の間はずっとその状態だったんですが、6年生になって3人しかいない女子メンバー同士が仲良くなれて、そのおかげです。同じ年の子が仲良く接してくれて、助けられました。」
編集部:「友達の力で救われたんですね。チームプレイの競技には大事ですね。」
髙瀬選手:「個の力も大事ですが、協調性は本当に大事です。最近は特に思います。」
編集部:「ご両親は、髙瀬選手をどのように応援(おうえん)してこられましたか?」
髙瀬選手:「よく両親で試合の応援に来てくれました。口うるさくなく、試合についてもああしたら良かったのにとか評価することはなく、とにかく『頑張れ、頑張れ!』って。ほめてもらう事が多かった。好きなことを好きなようにさせてくれていたのは、大きな支えになったと思います。」
編集部:「食事の面でご両親が厳しかったということですが、食事以外でも厳しかったのですか?」
髙瀬選手:「本当に厳しかった……。小さい時に言葉づかいが悪いってよく叱られて、口を食器用洗剤で洗われた事がありました。口が汚いなら口洗ってあげるって。一度だけでしたが、苦かった(笑)。
でも中学生になって自分で物事を判断できるようになってからは、やりたい事をやりなさい、と自由にさせてくれました。ただ、最低限の礼儀(れいぎ)や人を敬(うやま)う事などは厳しく言われました。」
サッカーをやめたいと思った時は仲間に支えられ、食生活や日常の礼儀についてはご両親に厳しくしつけられた髙瀬選手。
大変な子ども時代があったからこそ、今のご活躍(かつやく)があるのですね!
後編は、サッカー選手になってからのお話をおうかがいします。
どうぞお楽しみに!
1990年11月10日生まれ。北海道出身。
2010年FIFA U-20女子ワールドカップでなでしこジャパン選出。以来2010年 アジア競技大会、2011年FIFA女子ワールドカップドイツに出場。ワールドカップでは、ほとんどピッチに立てず悔しい思いをしたが、その悔しさをバネに着実に成長をし、2012年 ロンドンオリンピックでは銀メダル、2014 AFC女子アジアカップでは優勝に貢献(こうけん)。2012年には、得点女王、ベストイレブン、リーグMVPを総なめにした。
入団6年目、23歳という若さでINACのキャプテンに就任。少年のような顔立ちとは反対に、実は宝塚歌劇団が好きという女性らしい一面も持つ。
なでしこジャパンの澤選手や川澄選手、女子中高生に人気の髙瀬選手が所属する、神戸の女子サッカーチーム。
2001年に創部、2005年にLリーグ2部に参入、翌2006年1部へ昇格。2010年全日本選手権にて初タイトルを獲得し、2011年に念願のリーグ優勝を果たす。現在リーグ3連覇(れんぱ)、全日本選手権4連覇中。チーム名の「レオネッサ」とはイタリア語で雌(めす)ライオンを意味し、美しく力強い様子を表している。チームマスコットは「らいむちゃん」。
“神戸から世界へ”をコンセプトに女子サッカーの更なる飛躍を目指して活動を行なっている。
公式サイト
http://inac-kobe.com/