編集部:「体重が増えないと、選手としては大変ですよね。食事について意識し始めたのは、いつごろですか?」
山本さん:「社会人になって、プロ契約してからですね。それまでは『食べなきゃ』と思って3食しっかり食べていたのに、体重が増えない。体重が増えないと筋肉がつかず、苦しい思いをしてトレーニングしてるのに、効果が出ない。どうしてだろうと考え始めて、栄養士に食事内容を見てもらったんです。3日間の食生活を見てもらったら、『完全に自分が好きなものしか食べていない』と指摘(してき)されました。炭水化物が多くて、タンパク質が少なすぎると。そこから食事内容を見直して、20Kgくらい体重が増やすことができたんです。」
編集部:「食べたいものをガマンするのは、ツラくなかったですか?」
山本さん:「自分自身の“変えたい”という思いがあったから、栄養士のアドバイスを素直に受け入れることができましたね。肩を痛めていたので、筋肉をつけて温存療法(おんぞんりょうほう)をする必要があったんです。食事を変えたところ、3週間程度でトレーニングの効果が出て筋肥大(きんひだい)してきた。その結果、体脂肪は変わらずに筋肉をつけて体重を増やすことができたんですよ。」
ひさこ先生:「やはり、プロになる方は食事について真剣に考える方が多いですね。プロにとっては、体が資本ですから。」
山本さん:「そうなんです。単年契約(けいやく)なので、ケガをしたらその場でクビということもある。すごくシビアな世界です。」
ひさこ先生:「チームにすら残念ながら栄養士がついていない状況もあるなか、個人で栄養士をつけられた山本さんはとても意識が高いと思います。トレーニングと食事は“車の両輪”と言われるように、どちらかがおろそかになっても効果が出ない。でもわかっていても、食事は後回しになってしまうことが多いんですよね。栄養士の立場としては、こちらがいくら情報提供をしても、選手本人が納得してやる気になってくれないと、効果は出ないんですよ。」
山本さん:「代表クラスの選手でも、栄養の知識があってもやっていない人も多いですね。やはりみんな、その後のことを考えずに、食べたいものを食べちゃう。僕も、最初はガマンだという思いがあったけれど、やっていくうちにそれがふつうになってきましたね。ただ、週に1回は自分の好きなものを食べる日を作ることで、ストレスなくやってきました。」
ひさこ先生:「山本さん自身の意識が高かったから、続けられたと思います。すばらしい!」
山本さん:「選手の中には、サプリメントでどうにかすればいい、と考えている人もいる。プロテインを飲めば筋肉がつくだろう、とか。でもサプリメントはあくまでも食事の補助ですよね。」
ひさこ先生:「その通り! 私はいつも選手たちに、サプリメントについては“信者”にならず“毛嫌い”もせず、という風に伝えているんです。あくまでも主体は自分。自分の食事をしっかりととりながら、サプリメントを摂取(せっしゅ)して欲しいですね。」