スポーツ食育インタビュー

Vol.24 後編 「INAC神戸レオネッサ 海堀 あゆみ選手

INAC神戸レオネッサで、ゴールキーパーとして活躍中の海堀あゆみ選手。食に関する意識が高く、豊富な知識を持っている海堀選手の試合前の食生活や、食に対する思いとは?など、たっぷりうかがいました。

練習内容によって食事内容を変えて、自分に合う食生活を
インタビューを受ける海堀 あゆみ選手

ひさこ先生:「ご自宅では自炊されているのですか?」

海堀選手:「はい、でも寮(りょう)にいたころから自炊です。もともと料理が好きだったんで、作る事が苦手ではないんです。」

編集部:「試合の当日はどんな食事ですか?」

海堀選手:「今は炭水化物と果物と。油っぽいものとかは、朝からは食べないですね。家では基本、朝は卵かけごはん。あと山盛りフルーツとヨーグルトや乳製品が多いです。」

ひさこ先生:「うどんやパスタも食べますか?」

海堀選手:「ホームの時は前日はパスタとかが良いと聞いたので、とりあえずやってみています。パスタにすると決めたら、スーパーに行っておいしそうと思った具材を買って作ってみる。以前のキーパーコーチが栄養士の資格を持っていて、旬のものがいいと言われ、出来るだけ取り入れたいと思ってます。」

編集部:「今まで、栄養指導は受けていましたか?」

海堀選手:「いえ、そんなに。そのコーチには、結構お世話になりました。卵は絶対食べたほうがいい、食べるのだったら温泉卵が一番消化にいい、果物はビタミンも多い、乳製品はとったほうがいい、とか。色々やってみました。それまでは、キーパーは飛んだりするから食べると戻ってくるというか……気持ち悪くて動けない事があったんです。食生活を変えてスムーズになりました。適度な量で、終わった後にもちゃんと補給(ほきゅう)してます。」

ひさこ先生:「キーパーの方は練習内容がちがうからか、そういうところはシビアに考えている人が多いですね。」

海堀選手:「エネルギーの使い方もちがうし、食べたら食べたで有酸素運動じゃないから消費しない。走るときは食べないといけないし。ちょっとしたことなんですけど、練習メニューによって食事を変えてるかな。無意識にだと思うんですけど。」

ひさこ先生:「それって、ちょっとしたことじゃなくて、基本中の基本で、すごい事だと思います。」

海堀選手:「ありがとうございます。すごくほめてもらえるんですね(笑)。」

試合中の海堀 あゆみ選手

編集部:「キーパーには、どういう食事が必要になるんですか?瞬発力(しゅんぱつりょく)をつけるための食事とかあるのですか?」

ひさこ先生:「キーパーのポジション的には“瞬発力”は大事なことだと思います。ただ、これを食べれば瞬発力がつくというのではなく、あくまでもトレーニングを助ける食事と考えることが大事だと思います。また、試合前日は瞬発力を高める食事というよりは、試合をタフに戦うための食事が大事だと思います。とはいえ、フィールドプレーヤーのような移動距離があるわけではないので、それほどの主食が必要な訳ではありません。でも、サッカー選手はふだんの練習時でも“主食”は大事だと思います。」

海堀選手:「自分は朝にあんまり食べたくないから、前夜にごはんをちょっと多めに食べて、試合当日の朝はあんまり食べません。試合前は、どちらかというとお腹に入っているのがイヤなので、ゼリーとか。」

ひさこ先生:「ナイターの試合のときは?」

海堀選手:「試合の4~5時間前とかには結構色々食べます。ごはんとめん類と。試合前にお腹の調子を見て、もちそうになかったらおにぎりとかカステラとか。その時の感じで、ごはんやパンの方がいいか、ちょっと甘いものを入れたほうがいいかと、変えています。最近はココナッツオイルがいいって言いますよね?」

ひさこ先生:「海外選手の中には、ポケットにナッツとか入れて食べたりしていると聞いたことがあります。」

海堀選手:「ナッツの油がいいと聞いて、積極的にとってます。ココナッツオイルやヨーグルト、豆乳など色々合うか合わないか判断しています。スムージーもやってみたけど、あんまり冷たいものは飲みたくないのでホットスムージーにしたり。とりあえず、どんなことでもやってみないとわからないし、合う・合わないは人によるので。良いって言われたことはやってみてます。何かいいこと教えてください(笑)。」

すべてにこだわらず、その時の条件の中でベストをつくす
集合写真

ひさこ先生:「たとえばスムージーは、お湯を入れるタイミングとか、お湯の温度とかによって、ビタミンCや酵素のことを考えると少しもったいないかなと。」

海堀選手:「60℃以下にしないと死んじゃうんですよね。生野菜はあんまり得意じゃないから、そうしてやってます。」

ひさこ先生:「生野菜はカサがいっぱいあって、実際の量はそんなにとれないからそういう意味では、生野菜的なものはスムージーにしても良いですね。」

海堀選手:「食事では、お野菜のスープ、ポトフやミネストローネ、豚汁とかが一番手っ取り早いので作るようにしています。」

ひさこ先生:「すごくいいと思います!食事は基本的に“エネルギー補給”と考えられますが、実は水分補給の役割もすごくしているので、汁物をとるのはすごく良いです。」

海堀選手:「果物の水分は良いから、朝は山盛りフルーツを食べたほうがいいんですよね。旬のものとか、何種類か食べられたらいいかなって。夜は果物はダメだと言われました。」

ひさこ先生:「組み合わせると、ビタミンCがとれるのもあるし、ベータカロテンがとれるのもあるし、ポリフェノールもあるし。すごい勉強家ですね。夕食後に食べた果物は、エネルギー源の果糖を使い切らないで寝てしまうことが多いため、体脂肪(=身体のおもり)が増えるとも言われています。色々知ってて素晴らしいです。一つ気になったのは、牛乳と豆乳は見た目や食感はかなり似ています。ただ、カルシウムに関しては豆乳には牛乳の約1/7程度しか含まれていません。牛乳をすべて豆乳に置きかえてしまった場合、カルシウム不足になる可能性が高いです。豆乳にももちろんイソフラボンなど良いところもあるので、カルシウム源としてヨーグルトやチーズを併用(へいよう)するなどの工夫もして下さい。」

海堀選手:「最近はずっと豆乳にしてますが、カルシウムは乳製品でちゃんととらないと、ですよね。カルシウム多めの固形チーズをちょっと足したり、ヨーグルトのドリンクを買ったり。」

ひさこ先生:「よく考えてらっしゃる。人からのアドバイスを受け入れて、それを100%鵜呑み(うのみ)にするのではなく、自分にとってどうかをジャッジしながら、取り入れるものとそうでないものをうまく分けてやってらっしゃるのが、本当に素晴らしいです。」

海堀選手:「海外で現地の食事を食べるとき、1から10まで全部こだわっていると、出来なかった時にどうしようって困るので食べたいものを食べるスタイルに変わりました。その条件に対応して最低限自分の中での“ベース”を決めて、あとは出来る範囲(はんい)でベストの事をしようっていう風に変わりました。『ない!でも仕方ないな。』って。それが一番いいかなと思って。」

ひさこ先生:「私は、それが選手寿命(じゅみょう)を長くする事だと思います。大成したり選手寿命が長い選手って、勝手な自分流でやるのではなく、様々な情報を得た中で、自分のものを作っていく、“食の自立”が出来る人。海堀選手は、まさにそういった選手ですね。」

海堀選手:「ありがとうございます。だから、色々な事を聞きたい。これもやろう、あれもやろうって。自分の知らない事を聞けるのは楽しいです。」

つづき
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