スポーツ食育インタビュー

Vol.23 アイスホッケーチーム 王子イーグルス 久慈 修平選手

東京暮らしでも、食生活をくずさないように心がけました。
インタビューを受ける久慈 修平選手

編集部:「大学では、地元をはなれて自炊(じすい)されたのですか?」

久慈選手:「はい。東京の大学で1年目は寮(りょう)に入れず、部屋を借りて4人でシェア暮らしし、1年だけ自炊でした。今まで母親にかなり甘えてたので、料理はしましたけど、かなり大変でした。でも野菜はどうしてもとりたかったんで、毎日食べてました。昔から必ず、メインとごはんと、野菜を食べるっていうのがあったので。
自分ではごはんを炊いて、メインのお肉と野菜を炒めて、あとはおそうざいをスーパーで買ってきて食べるという形ですね。母親に、食事にはお金をかけなさいと常々言われていたので、仕送りでいつもおそうざいや野菜を買って、毎日食べていました。」

ひさこ先生:「『食べたものでからだは作られる!』素晴らしい教えですね。そういう考え方や食習慣って、育成年代(=ジュニア選手時代)が大事だとすごく思いますね。部活のパフォーマンスのためにも、食事をしっかり食べなきゃと意識されていたのですね。
新しい環境だと、せっかくの良い習慣もくずれてしまいがち。でも、そういう中でもちゃんと意識を高く持って、ずっとそれを続けてらしたのは、すごいと思います。」

久慈選手:「高校の先生から、大学に行くと色々な道があって、人に流されたり、ホッケー自体がダメになっていく選手が多いという話を聞かされていました。あいつは大学に行ってダメになった、と言われるのがどうしてもイヤだったので、これも勉強なんだという思いでやってました。アジアリーグに入るのも目標の一つだったので、からだを壊したらどうにもならないし。体を大きくするためには、栄養をとらないと大きくならないって理解していたので。食事に関しては、シビアに考えていました。」

編集部:「2年目からは寮に入られて、食事面はいかがでしたか?」

久慈選手:「寮では朝昼晩と食事が出ました。好きなメニューの時もあれば、あんまり好きじゃないメニューの時もある。1か月ごとにメニュー表が出るので、好きじゃないメニューの日は自分で何か買ったり。家からたらこや明太子を送ってもらって、寮で出るおかず以外に、それでごはんを食べたりしてました。」

ひさこ先生:「献立表を見ながら、『この日は嫌いなメニューだから外食にしちゃお!』という対応の選手が多いと思うのですが、自分の苦手なメニューの日に“追加のおかず”を考えている選手はそう多くはないと思います。しかも、“ご飯がススムおかず”を用意されたのはすごいことで感心しました。」

乳製品で体調を管理しています。
試合風景

編集部:「アイスホッケーははげしいスポーツですが、どういう所を特にきたえていたのですか?」

久慈選手:「プロのレベルだと、全身バランスよく筋肉がないとダメですし、どこかだけ強くても、バランスが悪くなる。上半身、下半身、どちらも使う競技だから、両方きたえないといけない。体当たりや時にはケンカをしなきゃいけないスポーツなので、メンタルもかなり強くないといけないスポーツだと思います。」

編集部:「メンタルは、自然と強くなるものですか?」

久慈選手:「気持ちの弱い選手はいますし、プロの方がモチベーションの維持(いじ)が難しいですね。結果がすべての世界で、ファンの見る目やチームからの目、色々な目があるんで、自分のメンタルの持ちようは、なかなか難しいものがあると感じています。」

編集部:「プロになって、気をつけていることはありますか?」

久慈選手:「常に体が万全じゃないといけないんで、一番気をつけている事は、カゼをひかないことです。そのために毎日、ビタミンのあるものと、ヨーグルト、乳製品は欠かさずとっています。小さいころから冷蔵庫にヨーグルトなどの乳製品がよく入っていて、すごく好きでした。僕の中では乳製品で体の管理をするという考えがあって、腸も整ってくるので。」

編集部:「乳製品の効果は出ていますか?」

久慈選手:「そうですね、かなり出ていると思います。カゼもほとんどないです。乳製品をやめた事がないので、やめた時にどうなるのかが分からないんですが(笑)。」

編集部:「海外の遠征(えんせい)で、ヨーグルトがなくて体調をくずすこともありましたか?」

久慈選手:「ありましたね。海外でもスーパーに行けばあるんですけど、最初は海外のヨーグルトがどんなのか分からなかったので。ヨーグルトのない生活をすると、どうしても食べたくなりますし、何かこう、リズムがつかない。便もいつもこの時間に出てたのに、何で出ないんだろうとか。ヨーグルトは自分のリズムを作るのにもいい感じですね。」

ケガをしたときには、ビタミンCをこまめにとりましょう!
試合風景

編集部:「アイスホッケーは短時間で交代していますが、やはりそれだけハードで体力がもたないものですか?」

久慈選手:もたないですね。常に全力疾走(しっそう)で息もすぐ上がってしまいますし、1分もてばいい方。全力で走れば、もう30秒でつかれてしまいます。状況によっては2分以上出なきゃいけない時もあるので、その状況によってそれに合わせた動きをします。」

編集部:「試合や練習後、すぐに何かを食べるのですか?」

久慈選手:「今はチームで栄養補給のゼリーが置いてあるので、試合が終わった後はすぐに補給してます。あとはサンドイッチとおにぎりが、常に試合前から置いてある。試合前に食べる人もいますし、終わってからすぐ食べる人もいて、殆どの人がそういった補給はすぐにします。どうしても疲れが残るので、いかに軽減させるかって考えると、そういった栄養補給がかなり大事なんだと思ってます。」

編集部:「これまで大きなケガをされた事は?」

久慈選手:「アジアリーグに入ってからの大きなケガは、ヒザの靭帯断裂(じんたいだんれつ)が初めてで、今回の経験で色々な事を学びました。リハビリ中何を食べたらいいかチームの食事担当の人に聞き、青魚がいいと勧められ食べたりしています。大きなケガをした時に、ただ休んで治すだけじゃなく、体の中から痛みを取っていくっていうのが大事なことなんだと学びました。」

修平選手とひさこ先生

ひさこ先生:「私は靭帯(じんたい)のケガの選手には、ビタミンCもしっかりとるように勧めます。骨や靭帯、軟骨(なんこつ)の成分にはコラーゲンが多く含まれているのですが、コラーゲンの生成にはビタミンCが欠かせないのです。またケガの時はいつも以上に心身ともにストレスが多くなるものですが、ストレスから自分の体を守る抗ストレスホルモンもビタミンCがないと出来ないのです。」

久慈選手:「ビタミンCはどのくらいとれば良いですか?」

ひさこ先生:「ビタミンCはとりすぎの心配はほとんどないので、選手の場合 普通の方の2倍以上は摂りたいですね。ただ、ビタミンCは水溶性(すいようせい)で一度にたくさんとっても尿(にょう)として出てしまいますから、なるべくこまめに。
また、コラーゲンは、関節部位やじん帯などのケガの回復に関わるだけでなく、“真皮”の成分でもあるので、すり傷などの外傷の回復にも関係します。ということで、スポーツ選手、特にケガをしているときにはビタミンCが大事ということになります。
もちろんバランスが一番ですが、ケガからの回復という観点からすると、たんぱく質やカルシウム同様にビタミンCは大事だと思います。」

編集部:「ビタミンCが一番手っ取り早くとれる食べ物は何ですか?」

ひさこ先生:「一般的にはフルーツですが、色の濃い野菜(緑黄色野菜)にもビタミンCは多くふくまれています。その他においも、じゃがいもとかサツマイモにも含まれています。ビタミンCは熱に弱いとよく言われますよね。でもじゃがいもとかサツマイモのビタミンCは、ビタミンCをでんぷんがコーティングしているので、熱を加えても他の野菜に比べると、比較的こわれにくいと言われてます。」

アイスホッケーは、子どもの心身を強くきたえてくれるスポーツです!
修平選手

編集部:「アイスホッケーを続けてきて、良かったと思う事を教えてください。」

久慈選手:「この競技は、スピード感があり、展開が早い。頭も体も使いますし、そういう面白さが魅力(みりょく)です。
アイスホッケーがとてもマイナーなスポーツであることを実感していますので、メジャーにしたいという思いが強いです。色んな方にアイスホッケーを見てもらいたい。個人としての目標もありますが、今はメディアや取材を通して色々な方にアイスホッケーとはどういうスポーツか、伝えていきたいと思っています。」

編集部:「これからホッケーをやるお子さんに、伝えたいことはありますか? また、うまくなれるコツなどあれば教えてください。」

久慈選手:「アイスホッケーはテレビで放送されていないし、なかなか見る機会も少ないけれど、まずは観て、どういうスポーツかを感じてもらいたいです。それで始めたいっていう思いがあれば、スケートを滑る面白さ、パックを打つ、シュートする楽しさっていうのも感じてもらえたらと思います。
どのスポーツにも共通すると思うんですが、一番は大好きでないと続ける事が難しい。いくら向上心があっても、その競技が好きじゃないとうまくなっていかないと感じます。」

編集部:「保護者の方には、どういうことを支えてほしいと思いますか?」

久慈選手:「食事面もそうですがど、一番はやっぱり応えんしてもらえることですね。過保護すぎると、この競技はあまりうまくいかない。ケガは当たり前ですし。だから痛みに強くなるし、メンタルもきたえられます。転んだ時にも、これぐらいの痛みだったらと、強い気持ちになれます。それがいいのかは分からないですけど……アイスホッケーをやれば、強い子供になれると思います!」

久慈選手の好きな言葉は「全力」。体も心も、常に全力の状態でプレイにのぞむ久慈選手を、私たちはこれからも応えんしたいと思います!

取材日:2014/11/14
選手&チームのご紹介
久慈 修平(くじ しゅうへい)選手

背番号21。1987年生まれ。170cm・78kg。ポジションはフォワード。4歳からアイスホッケーをはじめ、駒沢大学附属苫小牧高等学校から早稲田大学へと進み、卒業後に王子イーグルスに入団。大学時代から世界選手権のU18に2回、U20に2回選出。その後も代表として活やくを続けている。

府中アスレティックフットボールクラブ

王子イーグルス
本拠地は、北海道苫小牧。1926年に「王子スケート同好会」としてはじまり、1931年に「王子製紙アイスホッケー部」となった。翌1932年の第3回全日本選手権大会に初優勝し、以来、全日本選手権35回、日本アイスホッケーリーグ13回の優勝経験を誇る。歴史、戦績ともに、日本アイスホッケー界のリーダー的存在。2007-2008シーズンでアジアリーグ初制覇。2008-2009シーズンより、チーム名を「王子イーグルス」と改め、チームロゴも新しくなった。2011-2012シーズンは4季ぶり2度目のアジアリーグを制した。

公式サイト:http://www.ojiholdings.co.jp/hockey/

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