食育スペシャルインタビューVol.8「元オリンピック競泳(バタフライ)日本代表・柴田隆一氏(後編)」

Vol.8 前編 東京健康科学専門学校 専任講師 柴田隆一

柴田隆一(しばたりゅういち)さんは、2008年北京オリンピックに、200mバタフライの日本代表選手として出場した、日本を代表する水泳選手でした。引退後は「カラダも食も指導できる水泳の指導者」を目指し、水泳指導と平行して、管理栄養士になるために勉強中。
そんな柴田さんの、現在、そしてこれからの活動についてうかがいました!

コーチの一言で、背泳ぎからバタフライに転向!
インタビューを受ける柴田隆一さん

編集部:「柴田さんは、なぜ水泳競技の中でもバタフライを選ばれたんですか?」

柴田さん:「沖縄にいたころは小さなクラブだったので、メンバーが足りなかったんです。実は、僕は最初は背泳ぎをやっていたのですが、ある日コーチに『人数が足りないからバタフライにも出場しろ』と言われて。その後コーチが、『お前は、もう背泳ぎじゃなくてバタフライをやれ!』って(笑)。急に言われてビックリしたんですけど、そのときは『ハイ』って素直に言っちゃったんですよね、子どもだから。そこから、バタフライを本格的にはじめたんです。」

ひさこ先生:「まぁ!じゃあ、そのときのコーチの一言がなかったら、今の柴田さんはなかったのね。」

柴田さん:「あのまま背泳ぎを続けていたら、もしかしたら入江陵介選手よりも早かったかも・・・いやいや、冗談ですよ(笑)。」

編集部:「泳いでいるときは、何を考えて泳いでいるんですか?プールの底しか見えてないですよね。すごい勢いで泳いでターンをされるのを見ていると、頭をぶつけないか心配になります。」

柴田さん:「そうですね。泳いでいるときは、ただ泳いでいるだけではなく、『どうやったら速く泳げるか?』『どうすれば水の抵抗(ていこう)をおさえられるか?』など、常に自分に課題をあたえているんです。だから、ずっとプールの底を見ていても、あきませんよ。 また、50mを何ストロークで泳ぐ、という距離(きょり)感覚を、選手は正確に把握(はあく)して泳いでいるので、ターンで壁に頭をぶつける心配はありません(笑)。」

水泳界のために僕ができることは、栄養の大切さを伝えること
柴田隆一さん

編集部:「引退後はスポーツ栄養について専門的に学んでいるということですが、栄養の重要性を意識しはじめたのは、いつごろですか?」

柴田さん:「高校の水泳部はちょっと特殊な環境で、定期的に血液検査や尿(にょう)検査をして、栄養状態をデータでチェックするんです。また栄養に関する講座もあり、体を作るのに必要な栄養素はなにか、などをしっかりと指導してもらえた。そのおかげもあり、記録をのばすことができたんです。」

ひさこ先生:「高校生は、成長期の終盤にあたるすごく大切な時期だから、そこでしっかりとした栄養をとれたのは大きかったと思います。
自分自身が、食べることとパフォーマンスの関係を体感したから、今の柴田さんがあるのね。」

柴田さん:「現役引退後に日本の水泳界を見回したとき、コーチも選手も優秀な選手がたくさんいる。じゃあ僕ができることは、水泳が強くなるために栄養のことを伝えることなんじゃないかな、と思ったんです。自分が選手時代に経験したこと、失敗や成功は食事と大きな関わりがあったので、それをちゃんと広めていこうと。
一般の方の水泳指導でも『試合の前は何を食べればいいですか?』と質問されることもあるんです。」

ひさこ先生

ひさこ先生:「最近は、スポーツのパフォーマンスと食事の関係が広く意識され始めていますね。“ただ食べればいい”というのとは、違って何を食べるか、いつ食べるのかが大事なわけです。」

柴田さん:「お母さんたちに、子どもに何を食べさせればいいのかと聞かれることもよくありますね。」

ひさこ先生:「私は、保護者の方にお話しさせていただくときには『家族は最強のサポーター』と言うのですけれど、家族が子どものためにできることの、“最低限で最高”のことが食事だと思うの。子どもたちに正しい食習慣が身についてれば、それは一生の宝物になるはず。
身についた習慣を変えることはとてもたいへんだからゆえに、『もっと早く知っていればよかった』という声もよく聞きますね。」

柴田さん:「 『こういう食事がいいんだよ』と提示したときに、『これがいいんだ!』とナットクして食べるのと、『これを食べなきゃいけないのか』マイナスに考えるのは、ぜんぜん違う。良い物を食べているのに、逆にストレスになってしまったら、元も子もない。やはり、子どもの頃からの正しい食習慣がモノを言うんですよね。」

つづき
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