前回に引き続き、2017年3月に開催された、元プロテニスプレーヤー 浅越(あさごえ)しのぶさんによる『テニスクリニック&公開食育インタビュー』にてお話いただいた内容をお伝えします。

現役時代、浅越さんはどのような努力をしてきたのか、どのような食事を大切にしているのかなど、浅越さんの強さの原点に迫ります。また会場から寄せられた質問にも丁寧(ていねい)にお答えいただきました。

>>テニスクリニックはこちら http://gohagen.jp/special/003/

アスリートはカレーライスが好き?!

「浅越さんはとても恵まれた体格で、身長も高いのですが、小さいころから大きい方でしたか?」

「そうなんですよ。私、小学校6年生で164cmあって、なのにランドセル背負ってなんかおかしいやろって感じでした。昔から大きかったんですよ。背の順も、ほとんど一番後ろでした。」

「じゃあ食事も、朝、昼、晩だけじゃ足りなかったのでは?」

「当時は、164cmで42kgのスーパーモデルみたいな体型で、とても細かったんですよ。食べても動くので、結局消化して。だから細ーい感じの子どもでした。」

「子どものころの好きな食べ物は何ですか?」

「もう、絶対カレーライスですね。カレーライスとかコロッケとかトンカツとか、子どもが好きな食べ物が大好きでした。リクエストしたら夕食に出ていました。」

「ひさこ先生、カレーライスはアスリートにとってどうでしょうか?」

「イチロー選手も朝からカレーを召し上がっていらっしゃるとか、カレーはアスリートに限らず誰にも好まれるメニューですよね。ごはんをしっかり食べるためには、すごく好ましいと思うし、お野菜もお肉も何でもしっかり摂れるおススメメニューです。ただ、栄養士の立場から言わせていただくと、実は、カレーライスは思っている以上に脂質や油が多く含まれています。肉などには素材そのものにも脂質がありますし、食材を炒(いた)める油、実はルーにもラードなど動物性脂質が入っています。その辺りをちょっと工夫して、炒めないと味に影響が出る玉ねぎや肉以外の、じゃがいもやにんじんなどの材料は、炒めないでそのまま煮るとか、少し工夫するとよいかもしれません。
材料を炒める、軟らかくなるまで煮る、ルウを入れる、煮込む、という普通の作り方で作ったカレーだと、思っている以上に脂質の量やエネルギー量(カロリー)が多くなっていることもあります。

自分を高めたい!という思いが集中力につながります

「浅越さんがテニスが上手になったのは、相当な努力があってこそだと思います。一言では難しいとは思いますが、これからプロテニスプレーヤーを目指す少年少女に、こういうことを頑張ればテニスが上手になれるよ、といったアドバイスをお願いします。」

「先ほども言いましたが、私は当時専属のコーチがいたわけでもなく、学校の中でみんなと同じ練習で育ってきました。その中で、どうして私が学校で1番になって、日本で1番になれたかっていうと、やっぱり1球1球の集中力の違いだと思います。たとえば、ある先輩は、実力がない人とやる時は手を抜(ぬ)いて、実力のある人とやる時は一生懸命やって、と相手によって加減しながらやっていたんです。でも私は、どんな相手であっても自分の力を100%を出して常に1球に集中して試合や練習をするようにしていました。今思えば、その集中力が他の選手とは全然違ったんじゃないかなって思います。」

「ちなみに、負けずぎらいでいらっしゃいますか?」

「それが、そうでもないんですよね。すごく優しい心の持ち主なんですよ(笑)。そんなめちゃめちゃ負けずぎらいでもないんですけど、なんていうか、上手になりたい! とか、勝ちたい! っていう気持ちが強かったんだと思いますね。
人をけ落としてまで上に行ってやる!とかそういう気持ちはあんまりないんです。もっと上手になりたい! もっと相手にうまく返したい! もっとエースをとりたい! と思った時の、一生懸命になる集中力の度合いが違ったのかなって思いますね。」

「人に負けたくない! ではなく、自分を高めたい、上手になりたい、という気持ちが人一倍強かったのですね。」

「そうですね。どちらかというと、そっちの方ですね。」

「やはり自分の武器というか、得意なものを何か1つもってると強いと感じますか。」

「そうですね。ひさこ先生におうかがいしたいんですが、テニスもそうなんですが、苦手なものを克服するよりは、得意なものを伸ばしていく方が、スムーズだと思います。それは食とも通じるところがあるのではと、最近すごく感じるんです。
娘はシイタケが苦手で、イヤイヤなのに無理やり食べさせるのもどうだろうと思いながら食べさせたら、前に食べたもの全部もどしちゃったんです。悪いことしたなと思って。それだったら好きなものをバランスよく、たくさんとったほうがいいなと思ったんです。」

「絶対にそう思います。先程のニンジンぎらいの選手の話ですが、彼は彼なりにニンジンを食べられるようになりたいと考え、月に1度はニンジンを出してくれるようにお母様に頼んだそうです。でも、食べる努力はしたものの、月1日のニンジン・デーはずっと空振り。協力してくれる母に感謝しつつ、食べられない間はあきらめて同じような栄養素が含まれているかぼちゃで代用ていました。お母様も『お願いされたから作ったのに、今月も結局食べられなかったじゃない・・・』というような文句は決して言わず、彼の思いを応えんし続けたそうです。どちらも本当に立派だと思います。(浅越プロの)お嬢様のしいたけの話やテニスの練習と同様、イヤイヤ食べたものは身に付かないので、長い目で見て努力し続けることが大事というところは、共通していますね。」

「そうですよね。」

「ただ、『野菜の仲間は全部苦手』とか『牛乳もヨーグルトもきらい』というのは避けたいですね。」

「ちょっとは改善しないといけないところが、あるかもしれないですね。」

好ききらいを直すのは、親の根気が必要!

「現在浅越さんは子育て中ということですが、実体験でどのようなサポートが効果的などアドバイスをお願いします。」

「逆に、みなさんどうやってされているのかを聞いてみたいです(笑)。私は、基本的にはアスリートとしてやってきたので、現在は必ずごはんとお魚とお肉を1日に出すようにしているのですが、主人からは『結構出しすぎやで』って言われる事もあります。先程の話のように、好きなものを伸ばしてあげたいと頭では考えていますが、やはり苦手な物も食べてほしい気持ちもあるので、食べにくいお魚を出したり、ビタミンをとるため小松菜などを出す。それで子どもが食べなかったら、すごく怒ってしまうんですよ。みなさんはどうやって食べさせているのか、知りたいですね。」
(会場に)食べなかったら怒ります? 怒らない? 怒る人います?食べなさいって。あ、怒る?
『食べられなかったら食べないでいいわ、残しなさい』っていう方います? そっち系ですか? みなさん優しいなぁ。
では、残したものをくだいてスープにして食べさせるとか、工夫して食べさせている感じですか? 色々考えられているんですね。
私なんか素材のまま食べさせようとするから、子どもが余計にイヤがって。本当はそうやって、ごぼうでもスープなどおいしく料理したほうがいいとは思うんだけれど、きんぴらごぼうでそのまま出して、『もろごぼうやん!』っていう。私も柔軟(じゅうなん)にしていかないといけないですね。食に関しては、ちょっとでも食べてほしいって思うので。『せっかく時間をかけてこんなに作ったのに、残すの?』となってしまって。どういうふうに食べさせたらいいのか、日々勉強ですね。」

「すごく努力してらっしゃるんですね。」

「努力がなかなか実らないですが。」

「でもあきらめないで続けることは大事だと思います。私は全部小さくしたり、全部スープにしちゃったりじゃなく、ある程度素材がわかることもやはり大事だと思っています。根(こん)くらべになるかもしれないし、怒って食べさせて気持ち悪くなってもどしたら逆効果にもなるんですが、ある程度の年齢になれば、『これを食べればこうなれる』というような話もしながら、理解してもらえるのではと思うんですけど。」

「親も根気ですね。」

「食事に限らずね。(笑)」

会場のみなさまからの質問コーナー

「会場のみなさんの中から直接ご質問です。」

「話を聞いていて感じたんですけど、お料理は上手なのですか?」

「グサッ(笑)。味はまぁまぁだと思います。盛り付けがあんまり上手じゃなくって、いろどりももう一つなんだけど、味はいけると思う。1つの量が体育会系ですごい多い。主人に『こんなに食べられるか』ってよく言われます(笑)。」

「すごく少食の子どもで、バランスよくは食べるんですけど、本当に少食なんです。そういう場合は、最低どの栄養素をとれば良いというのはありますか?」

「少食でもバランス良くは召し上がってるんですね? 何年生でしょう? まだ小さいうちは、一度に食べられる量に個人差があります。大事なことはやっぱり、バランスよく食べる。もしどうしてもたくさん食べられない場合には3食のほかに、甘いおやつではなく、タイミングを考えた“間食”を出してあげましょう。私たちの中では、おやつ・間食・補食(ほしょく)っていうように言葉もレベルアップしていくんですね。
大人のアスリートの場合でも、3食じゃ足りないからおやつに当たる補食をとったり、ジュニアアスリートも場合によっては練習時間が夜おそくにまたがってしまって、夕食の位置づけが難しかったりするので、そういう時には夕食を分けて食べるというように、数を増やすことでカバーできることがあると思うんです。
たとえば離乳食(りにゅうしょく)でも、3回食・4回食とありましたよね。もちろん離乳食の年代ではないですが、それぞれ成長の過程で、一度にたくさん無理してとっても消化しきれなかったり、使いきれなかったりということがあるので、そのお子さんに合った量を、それぞれのご家庭で調整してあげることも大事かなと思います。
ただ、学校やクラブチームなどで集団生活が始まると、極端に少食だったり、食べるのに時間がかかったりだと、かわいそうな思いをすることも出てくるかもしれないので、そこはちょっと難しいところですね。なるべく量も時間も歩調が取れることが一番ですが、それでも基本的には『一日の総量で、摂りたい量が摂れていることが大事』と考えられたらと思います。食事の時間が嫌いにならないように、食事時間が楽しみであるように、たいへんかと思いますがご家庭で環境づくりをして差し上げて下さい。」

「先ほど、好ききらいがあってもいい、いっぱいじゃなければいいって言われてましたが、将来を考えると何かの会食とかで食べられないものやきらいなものが出されて残しちゃったら、上司にきらわれて使ってもらえなかったりするかもしれないから、やっぱり好ききらいはないほうがいいんじゃないでしょうか?」

「今の質問に補足(ほそく)で、海外生活や海外遠征(えんせい)をしたとき、日本食じゃないものあ出てきて食べられない、という場面に遭遇(そうぐう)する事もあると思います。やはりそういう時も困らないように、好ききらいについて回答をお願いします。」

「私なら、最初にはっきり言いますね。たとえば『レバーは食べられないんですよ、すいません!本当に無理なんです』と。『でもその分、カルビを食べます!』とか『ハラミとかならなんぼでも食べます』とか、楽しい感じで言った方が上司にはきらわれないと思います(笑)。海外では、選手は試合前にバナナとかをよく食べるんですが、試合中にもバナナを食べるんです。私はバナナはきらいじゃないけどあんまり好きではなくて、テニスの試合は3時間くらいあるので、試合中にバナナを食べるなら、試合前にはバナナはいらないってなります。海外遠征には、炊飯ジャーと固形のおみそ汁持って行って、ホテルの部屋でおにぎりをにぎって、試合前は食べたりしていました。海外では大体パンとかサンドイッチとかはありますが、ごはん系はほとんどありません。夜は、もちろん中華料理があったりするのでごはんはありました。田舎の方の試合に行ったら、中華かピザハットかシズラー。サラダバーがあってステーキ、みたいな。この3つしか選択肢がなくて4週間続いたこともありました。そういうツラいこともあったんですけど、また次の1年も同じところを回るんで、あらかじめ美味しいものを自分でリサーチしていました。おいしい現地のお店とか、日本食があるお店とか。そういう風にして、ツアーを楽しんでいましたね。
私は好ききらいはめちゃくちゃ多い方ではないので、出来るだけバランスよく、今日は中華に行ったら明日は日本食に行って、その次はイタリアンと偏らないように、いろんなものをバランスよく食べるようにはしていました。」

「事前の質問票からです。ボールの距離感(きょりかん)がわかりません。教えてください。」

「ボールの距離感は、ほとんど感覚です。テニスを始めたばかりのときは難しいかもしれないけれど、何回かやってると、相手が打ったボールがどこら辺に落ちてバウンドして、どこら辺に上がってくるなっていうのが大体わかってくるんですよね。初心者にはなかなか難しいんだけども、何度もテニスをしていると、自然とそういうのがわかってきます。
テニスってね、1日でうまくなるスポーツではなくって、結構時間がかかるスポーツなんですね。2020年のオリンピックに出たいって思っても、なかなかそこまでにうまくなるっていうのは難しいです。だから練習をどんどんどんどんやって、テニスする機会をどんどん増やして、ボールとラケットの扱いに慣れるっていうことがまず一番大事です。それに慣れてくると、相手の打ったボールを、すぐに目で判断して、どこにボールが落ちるか頭で判断する。そうやって徐々に上手になるスポーツです。
ボールも、どんなボールがどんな速さで飛んでくるかっていうのを、今ここで説明してもなかなか難しいので、やりながらね、コーチにどういう風にしてボール飛ぶ距離を測ったらいいか聞きながら、やっぱり慣れるっていうことが大事です。ボールが来たら、右足を動かして左足を動かしてっていう説明はなかなか難しいので、やっぱりコートに入って、テニスをどんどんやって慣れて、ボールとの距離感を測るっていうことが、これからみんながやらないといけないことかなと思います。」

「最後の質問になります。サーブは何キロ出せますか?」

「サーブね、全然スピードが出ないの私。最高でも170km/時ぐらいですかね。」

「すごい~!」

「170km/時は普通です。今の女子は200km/時くらい出す人もいるので。だから私の肩も見たまま貧弱でしょう(笑)? 私は結構恵まれた体型だと言われますが、外国に行ったら普通体型で、私の頭のてっぺんが肩の位置だという人とかもいましたから。190cmぐらいの選手もいるし、体格ががっちりした選手がほとんどだったので、私はもう普通体型で、外国に行ったら特に恵まれた体型でもない、華奢(きゃしゃ)な感じの選手だったんです。
外国には色々な選手がいます。色々なクセを持ってる選手もいるし、いろんな言葉しゃべって、すごく厚かましい選手もいるし、優しい選手もいる。そういう選手と一緒に試合をしてね、どうやったら勝てるかなっていう時に、自分に自信がないと絶対に勝てません。それはプロになって5年目ぐらいで気付いたんだけど、やっぱりみんな自信を持っています。ロッカールームでは、本当は実力がない選手でも胸張って堂々としています。そして1年ツアーを回ったら、すごいランキングも上がって、すごく上手な選手になってくるんですよね。そうやって自信を持つことはすごく重要なことで、『私絶対できない、ああいう選手に勝てない』とか言ってたら、一生勝てません。『私は絶対勝てる、私は絶対やれる』とか『私はあそこの学校に行く』とか何でもいい。『私は食べられる』とか、思ったら絶対なんでもできる。出来ないと思ったら絶対できない。それは強く言います。みんなも自信をもって頑張ってください。」

(拍手)

取材日:2017年3月29日

浅越(あさごえ)しのぶさん

1976年6月28日生まれ(40歳)兵庫県出身。身長170センチ、利き手は右。
1997年デビュー、2006年引退。キャリア自己最高ランキングシングルス21位、日本女子No.1、ダブルス13位。全米オープンテニスシングルスベスト8、全豪オープンテニスダブルスベスト4。

編集部より

色紙に書かれた言葉は、「闘魂!!」。まるで太陽にように朗らかでエネルギッシュな浅越さんらしい、力強い言葉です。テニスクリニック、そしてインタビューと、長い間おつきあいいただき、ありがとうございました。このイベントを機に、本格的にテニスと向き合う子どもたちが一人でも増えたら幸いです。

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