スポーツ食育インタビュー

2016年12月の世界ジュニア選手権(18歳以下)で大会史上最年少の13歳(中学1年生)でシングルス優勝、さらに2017年5月開催予定の世界選手権個人戦代表として史上最年少で選出された男子卓球界期待のホープである張本智和(はりもとともかず)選手に、世界で戦う心身の強さについてお話しいただきました。

物心ついたころから卓球は生活の一部に

「ご両親が中国代表などを務めた元卓球選手で、その影響(えいきょう)から2歳くらいから卓球をしていたとお聞きしましたが、覚えていらっしゃいますか?」

「そのころの事はあまり覚えていないのですが…5歳くらいからの記憶だと、いすに乗って卓球をやっていました。」

「大人用の卓球台は小さくて届(とど)かないからですね。」

「物心がつく前から卓球とふれ合っていたのですね。練習はどのくらいしていましたか?」

「はい。午後から始めて夜7時くらいまで練習していたと思います。」

「近くの卓球場に通っていたとか。自宅にも卓球台がありましたか?」

「ありませんでした。最近、仙台の自宅に卓球場が作られました。」

「卓球をしていて楽しいと感じたのはいつごろからですか?」

「7歳(小学1年)の時に全国大会(世代別全日本選手権)で初めて優勝して、それまでで一番楽しいと感じました。」

「生まれた時からご家族全員が卓球をする環境だと、卓球は日常の一部で、特に意識しないままだったのでしょうか。」

「はい、そうです。」

「では、食べ物で好き嫌いはありますか?」

「小学生くらいまではアスパラガスが苦くて嫌いでした。最近はニンジンがなぜ嫌いかわからないけれど、あまり食べられなくなりました…昔は何も考えず食べていたんですが。でも、食べたらいけるかもしれません。」

「『食べたらいけるかも』という前向きな気持ちがあるのであれば、絶対に好き嫌いはなくなると思いますよ。現在拠点(きょてん)としている味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)の食堂(SAKURA Dining)でもバイキング形式でニンジンは出されていますよね。ちょっとだけ試してみたら案外すぐに食べられるようになるかもしれませんよ。」

「はい、そうしてみます。」

ひさこ先生の栄養アドバイス

“好き嫌い”は、無ければ無いに越したことはありません。
将来“合宿”などに参加することがあった時に、何でも食べられる、どこでも寝られるというのは、とても強みだと言われています。『これは絶対苦手!』となるよりも、張本選手のように『食べたらいけるかも…』と、好き嫌いに対しても柔軟な気持ちを持って、チャレンジすることは大事です!

小さい頃から負けず嫌い。試合で負けたら悔しくて泣き続けていました。

「では、好きな食べものは何ですか?」

「肉です!牛、豚、鶏…肉ならなんでも好きです。最近はあまり食べていませんが、お寿司も好きでした。試合に勝ったり、大会で優勝したりした時は、ごほうびで寿司店に連れて行ってもらいました。」

「NTCの食堂で生魚はあまり出ないかもしれませんね。ご実家は仙台市なので、新鮮な魚がおいしいですよね。」

「はい、おいしいです。」

「中学生になってからは、仙台のご実家をはなれてNTCを拠点にしていますね。小学生までいたご実家での朝ごはんは、何を食べてましたか?」

「パンにジャムをつけて、ウィンナーとか。朝ごはんはしっかり食べていました。」

「小学生のころはどんなスポーツが得意でしたか?」

「マット運動以外のスポーツは、なんでも得意でした。特に走るのは好きですね。休み時間にサッカーをやったり。学校の体力測定も良い成績でした。」

「ご家族から、小さいころはどんなお子さんだったと言われていましたか?性格の特長など教えてください。」

「小さいころから負けず嫌いでした。小1くらいの頃からずっと。試合で負けたりしたら、くやしくてずっと泣いていました。」

「負けてくやしいからやめる!とはならなかったんですか?」

「それはならなかったです。次は絶対に勝ってやる!と思ってまた練習をがんばって続けていました。」

「練習がきびしいとかキツいと思った事は?」

「そんなにキツいと思った事はありません。あまりきびしい練習はなかったので、いつも楽しいと感じながら練習していました。」

ひさこ先生の栄養アドバイス

トップアスリートは、大事な試合の前や疲れがたまるキャンプ中には、“生魚”は食べない人が多いです。理由は、食品に問題があるわけではなくても、試合前のように緊張感(きんちょうかん)が高くなる時期や疲労(ひろう)がたまっているときなどは、おなかをこわすこともあるためです。
たとえば、大事な試験前などにも同様のことが起こる可能性もありますので、生ものは、場合によっては食べるタイミングに注意が必要です。

同年代でトップになっても、オリンピックをめざすにはそこで満足できない

「卓球に夢中になった魅力(みりょく)を教えてください。」

「ボールを打って自分にポイントが入るところです。相手のラケットにボールが触れずに点を取った時は、最高の気分になります。」

「小学校時代に、卓球と勉強を両立する事の苦労はありましたか?」

「塾にも通っていたので、勉強も普通に出来ていました。母親から『勉強に集中できれば、卓球でも集中できるよ』」と言われていたので、勉強がそんなに嫌ではなかったです。母からもきびしく言われていましたが、自分でもやるのが当たり前だと思っています。」

「得意な教科と苦手な教科を教えてください。」

「算数が結構得意でした。中学では、社会や理科も得意になりました。勉強をするのも楽しいです。苦手な教科は音楽と美術です。 こればっかりは集中して頑張ってもあんまり出来ない(笑)」

「語学が堪能だと聞きましたが?」

「英語は普通です。中国語は普通に話せるので、試合で中国に行っても困りません。家では家族と主に中国語で話しています。」

「張本選手が他のインタビューで『卓球も勉強も頑張る』と決意表明していたのを目にしたのですが、中学生になった今も同じ気持ち?」

「はい、そうです。ゲームとかもたまにはしますが、30分とか制限をつけていて、夜は寮母(りょうぼ)さんに預けています。」

「ご両親から卓球を教わられて来られましたが、その特訓はきびしかったですか?」

「いえ、普段はそんなにきびしくないです。たまにふざけてやったりするとすごく怒られましたが。」

「小さなころから年代別で優勝し続けていますが、自分で卓球の才能があると感じていますか?」

「同年代の選手の中で勝っても、年上の選手に勝っていかなければオリンピックには行けませんから、もっともっと強くならないとダメなんで、そこで満足していなかったです。」

栄養指導で教わった『6つのお皿』を意識した食事を心がけています

「食生活について、ご両親から教わったことはありますか?」

「野菜は必ず食べるように言われていました。家では野菜も肉もたくさん出てきました。」

「乳製品はとっていますか?」

「毎日朝と夜に牛乳を飲んでいます。牛乳が好きなのと、身長も伸ばしたいので。」

「体格は平均より大きい方ですよね?」

「はい、クラスでは一番高いです。今は169cmで体重56~7kgです。この1年で5~6cm伸びました。」

「中学生になって、食事の量は変わりましたか?」

「結構食べてます。NTCの食堂がバイキング形式で取り放題なので、量も増えてきました。肉をよく食べますが、ごはんも好きなのでしっかり食べています。これまで日本卓球協会の合宿や、NTCで栄養指導を受けた際に『6つのお皿※』が大事だと教わりましたので、食事をとる時はその点を意識しています。」

「昼食は中学校で給食ですが、量は足りている?」

「あまり足りていないですね。ほとんど毎日おかわりしています。肉はじゃんけんで勝たないといけませんが。」

「三食の他に補食(おやつ)は食べますか?」

「放課後の練習前や休憩(きゅうけい)時に、売店で栄養補助クッキーなど買って食べています。支給されるエネルギーゼリーもよく活用しています。今は食べる時間があまり無いので、お菓子はほとんど食べていません。」

※6つのお皿
①  主食: ごはん、パン、麺類など
②  主菜: 肉、魚、卵、豆類など
③④ 副菜2品:野菜、海藻など
⑤  くだもの
⑥  牛乳、乳製品(ヨーグルトなど)

ひさこ先生の栄養アドバイス

野菜の大事さ:主食と肉など主菜は、しっかり食べる人が多いですが、“野菜”をしっかり食べることはなかなか出来ない人も多いです。
「野菜をしっかり食べる」習慣は、小さいときの食習慣の影響が大きいですので、ぜひご家庭でも野菜料理を食卓にのせて欲しいと思います。(“野菜サラダ”と“野菜炒め”以外の野菜料理がすぐに言えるようになっていることが理想です)

選手&チームのご紹介

張本智和(はりもとともかず)選手

2003年6月27日、仙台市生まれ、13才。 169センチ、56キロ(2016年12月時点)。
家族は元選手でコーチの父・宇さん(45)、1995年天津・世界選手権の中国代表の母・凌さん(42)と小学生部門で優勝している妹・美和ちゃん(小2) 。
JOCエリートアカデミ-所属。スポンサーはラケットメーカーのバタフライ。世代別全日本選手権6連覇。2015年10月ワールドツアー(WT)本戦に史上最年少出場を果たした卓球界期待のジュニア選手。平成28年度全国中学校大会男子シングルス 優勝。 2016年12月世界ジュニアケープタウン大会男子団体 優勝。男子シングルス史上最年少で 優勝。男子ダブルス 準優勝。勝利のポーズ“ハリバウアー”で話題に。

編集部より

後編では、張本選手が試合に臨(のぞ)む姿勢や将来や2020年オリンピックに向けての意気込みなどについてうかがいました。数々の快進撃を見せる成長期まっただ中の張本選手のインタビュー後編をどうぞお楽しみに! 今回は、食とスポーツをつなぐ情報誌『スポーティーライフ』とのコラボ・インタビュー記事となっております。 当サイトと同様に主にスポーツ栄養を中心に情報発信されている『スポーティライフ』冬号(1月31日発売)でも張本選手のインタビューを紹介しています。ご興味のある方は、『スポーティライフ』HP(http://sportylife.jp/)でご確認下さい。 アスリート・指導者・保護者のための「食とスポーツをつなぐ情報誌」 『スポーティーライフ』では、トップアスリートに対して行われている、スポーツ栄養学に則った「栄養摂取(食事・サプリメント)」の情報をわかりやすく紹介しています。 巻頭インタビューでは、トップアスリート等の食に対する意識、考え方などについて紹介しています。

【お知らせ】 スポーツ栄養情報誌「スポーティーライフ(SportyLife)」 2017年冬号(1月31日発刊)は特集2本立て! ★競技別栄養シリーズ① 野球 野球で活躍するための食・栄養 BaseBall Nutrition ★広島東洋カープの25年ぶりリーグ制覇で盛り上がる広島県をクローズアップ スポーティーライフ全県めぐり 第2回 広島県

川崎市スポーツ協会×スポーティーライフ 第3回スポーツ食育教室 日時:2月18日(土) 10時~16時 場所:川崎市商工会議所 川崎市が進める「パラムーブメント」に合わせて、ご当地アスリート・成田真由美さんの講演、ご当地企業・味の素のスポーツ栄養分野の取り組むを紹介いたします。午後は、スポティーライフ2017年冬号特集と連動し、野球栄養とケガ予防に関してスペシャリストが講演します。 プログラム詳細はこちら